真庭忍軍最古vs相生忍軍最後
「待たせたか?」
橋。
つい三十分も前でない時間に虚刀流と出会い、
情報交換を行い、さっさと去った場所。
そこに居たのは――
「いいや」
真庭忍軍十二頭領が一人、
真庭狂犬。
真庭の里設立にも関わったとされるほどに長生きの人物、ではなく、
その特殊な忍法で女の体を乗り移り乗り移り生きて来た。
しかも乗り移った女の記憶を自分の物に出来ると言う、
戦闘、技術、知識などの全てに置いて万能を狙える忍法。
名は、忍法・狂犬発動
しかし、欠点がある。
一つはいくら自分の物にしても体が実践できる物でないと意味を持たない。
一つはこの忍法を使用する本人の性格である。
その問題ある本人の性格は、
仲間に対する極端なまでの情、そして激情的な性格。
この二つが災いして、
四季崎記紀が作りし完成形変態刀十二本。
これを集める為に鳳凰が行った策を無駄にしかけた上、
結果的に自分と仲間一人が死ぬ事になった事を知らない。
「不判」
「一つ判らない事がある」
戦闘前、既にお互い向けてに殺気を出しながらも、
あくまでも冷静沈着な
左右田右衛門左衛門。
「あ?」
「なぜ邪魔をした?」
もしも、さっき二人を殺そうとした時に真庭狂犬が手裏剣を投げなければ、
あのまま悲鳴の一つ出させずに二人を瞬殺する自信があった、
そして、あの場面で、二人と交渉する前ならいざ知らず、
殺そうとする時に邪魔が入るとは思っていなかった、
それだけに左右田右衛門左衛門にとっては謎であった。
「なぜあの二人を殺す邪魔をした?」
殺さないのなら殺す、
殺すのならその後殺す、
あの状況下で、
まさに二人とも殺そうとしたあの状況下で、
仲間ならいざ知らず、
仲間でもないただの見ず知らずの人間を二人、
見逃す、いや逃がす要因は、
忍者である自分達にはないはず。
ましてや状況が状況の中で、
二人も見逃す要因は無いに等しい。
にも関わらず、
なぜ真庭狂犬はあの二人を逃す様な真似をしたのか?
「最初に――」
「ん?」
静かに、
「最初に殺そうとしたのが男の方だったら良かったんだけど」
静かに、
「女の方だったのが頂けないねえ」
静かに語る。
「見た所プロのあんたと戦って無傷で済む保証がないからねえ」
「ふむ」
無傷で済ませるつもりも生かすつもりも無いが、
続けさせる。
「近くに予備の肉体を残して置きたかっただけさ!
さっさと終わらせてあの女の肉体を乗っ取って、
虚刀流と一緒に居るオレンジ色の奴の肉体を乗っ取ってやるんだから!」
「ほう?…………では、どうやって虚刀流を追うつもりだ?」
「血の跡を追うだけだ」
詰まる所、
左右田右衛門左衛門との戦い無傷で済む保証が無い、
だから近くに一つ予備とでも言うべき肉体を残したかった。
忍者らしい発想と言えば忍者らしい発想であり、
忍者らしからぬ発想と言えば忍者らしからぬ発想である。
それよりも重要なのは……
「鳳凰さまを殺すってのは本気か?」
「ああ、本気だ」
一瞬の間も開かぬ返答。
一瞬顔が引き攣り掛けるがそれを抑え、
全身を屈める。
近くに替えの肉体がある内に、
つまり、
だから、
「だったら死ねええええええええええ!」
捨て身特攻が出来る。
そう己に向かって突っ込んでくる真庭狂犬を見ながらも冷静に、
「さて、真庭狂犬よ…………」
一人呟くように言い、
「お前は何と言って死ぬのかな?」
背弄拳が発動した。
「お、おぉお?こ、これって確か……」
真後ろからの殺気、この技に覚えがあるだろう。
長年、と言っても既に随分前だが、
鎬を削り戦って来た忍びの技なのだから、
覚えがあるのは間違えないだろうが、
「で、でも確か相生忍軍は…………!」
既に壊滅させたはずの相生忍軍の技。
それを目の前で披露されて驚きでの混乱模様。
「残念ながら生き残りが居たと言う訳だ」
そう冷静に言いながらボウガンの先を向け、
「言い残す事は?」
聞く。
絶体絶命に近い現状。しかし、
「…………」
「ん?」
真庭狂犬は笑っていた。
ニヤニヤと声に出さず、笑っていた。
「確か……相生拳法の……背弄拳……だったけこれ?」
返答を期待していない様な声ではあるが、
自信満々の声で続ける。
「後ろの有利は誰にでも判るけどさあ?」
一気に走り出す。
何を狙っているか判った左右田右衛門左衛門だが、
既に遅く、
「後ろに川なんかあったら、回り込み様が無いよなあ?」
川を後ろにニヤニヤと笑う真庭狂犬、
それを苦々しげに見ながらも回り込み様が無い左右田右衛門左衛門、
よって真庭と相生、それぞれの忍が向かい合う図となった。
「………………」
「………………」
言葉に出さずともどちらも殺る気満々、
殺す気満々であるが難しい状況である。
真庭狂犬は下手に動けば後ろを取られる状況で、
左右田右衛門左衛門はボウガンがあるものの、
下手に使えば避けられる事は判り切っている。
つまり両方が両方打つ手が無く、
「………………」
「………………」
お互いほぼ同時に自分の支給品から使えそうな物を探す事になった。
「………………ち」
「………………ふ」
結果、良い物を見付けられなかった狂犬と、
良い物を見付けた右衛門左衛門と言う状況である。
真庭狂犬の方は持たないよりもと言った感じで、
右手に二個、左手に一個手裏剣を持った状態である。
「それでは…………今度こそ」
片手を支給品の入っている袋に突っ込みながら、
真庭狂犬…………
「お前は何と言って死ぬのかな?」
戦闘は再開した。
その言葉と共に投げた物体。
それは、真庭忍軍十二頭領の一人、
左右田右衛門左衛門の背弄拳が効かなかった忍、
巻戻しの鴛鴦の武器、
永劫鞭。
「え……ちょぉあああああ!?」
一つに付き10本の鞭が付いている永劫鞭、
それを前から投げられている現状、
前は向かって来ていて不可能、後ろは川で論外、
左右に避ける時間もなし。
詰まる所防御しか不可能な現状で、
長い長い間戦いを経験した真庭狂犬がそれを間違えるはずも無く、
両手に持っていた手裏剣から手を離し、
腕を顔の前に交差させ防御に移り…………
「甘い」
シュッ、と言う音と共にボウガンの矢が発射され、
「ぐはぁが?!」
見事に腹に突き刺さった。
無論、投げ付けられた永劫鞭も止まらず、
真庭狂犬に追い討ちを掛ける様に10本余さず全身に巻き付き、
その先に付いている刃物で全身を切り刻まれた。
「ぬぅぅぅうぅぅうぅうぅ!」
全身の10の切り傷から血を流し、
全身に鞭を巻き付けられた現状。
腹に刺さった矢を右手で抜きながらも、
それでも殺気が止まる事を知らぬ様に狂犬から溢れていたが。
「無駄だ」
その殺気に対する返事は無常。
「その状況下で、勝てるなどと言う甘い事は考えれまい」
いくら近くに替えの肉体があろうともそこまで生かさず終わらす。
次の矢を番えつつも油断無く、
しっかりと狂犬を見据えるつつそう言う右衛門左衛門。
「それではさらばだ――――真庭狂犬!」
シュッと言う音と共に発射された矢、
真庭狂犬の頭を狙ったボウガンの矢は、
外れた。
「なっ!?」
後ろを見せない様に前を向いたまま川に飛び降りた狂犬。
狂犬のその行動に気が付き、
すぐに川に近付き身を乗り出すように下を覗き込み、
顔に向けて先ほど狂犬が抜いていたボウガンの矢が飛んで来た。
「ぬぉおおおおお!?」
この時、
もしも真庭狂犬の体に10本の鞭の内の一本が腕に絡まっていなかったら、
もしも真庭狂犬が傷を負っていなかったら、
もしも真庭狂犬の狙いが首でなかったら、
もしも真庭狂犬の手に血が付いていてボウガンの矢が滑らなかったら、
もしももしももしも一つでも偶然が噛み合わなかったら、
問答無用に矢は当たっていただろう。
咄嗟、文字通り咄嗟に全身を反らせての回避、
仮面に一筋の傷を付けて行く矢を見ながら、
ギリギリの所で致命的な一撃を避け切った。
「くっ!真庭狂犬ッ!」
しかし避けてからでも遅すぎた。
既に川には真庭狂犬の姿も見えず、
取り残された様に浮かぶディパックが一つ、
それ以外は見える範囲では何も無かった。
「ちっ…………」
辺りを確認するとあるのは川辺に一つの小さな穴、
下水管の一つだがそんな事は関係がない。
関係が有るのは、
その下水管に足を掛けて左右田右衛門左衛門に反撃、
そして左右田右衛門左衛門が避けるのを確認してから川に潜った。
万が一当たらなくても問題が無い逃走の手段としての攻撃、
たとえ当たっても問題が無い必殺の手段としての攻撃、
仲間に対する情に厚かろうと、激情家であろうと、
歴戦の忍者である事には変わり様がなかった。
「どうする…………」
逃がしたのが正直痛いが、
今から上流か下流のどちらかに居ると思われる追いかければ、
真庭狂犬に追いつけるかも知れないが…………
「――――罠か?」
あの状況からの反撃は無いと思っていただけに、
警戒心が強くなっている、そう自覚していても、
動くに動けない。
結局の所決められずに時間が過ぎ、
その分だけ真庭狂犬の逃げる距離を稼ぐ事になり、
もう追いつけないだろうと自己完結で諦める事になった。
そして地面に落ちている三枚の手裏剣を拾いつつ本日早くも二度目の、
「次に会った時は殺す」
居るかも知れない相手に伝える様に、
負け惜しみの様にそう言って橋を渡って行った。
「不殺」
「上手く行かないものだ…………」
どうも殺し運が悪い左右田右衛門左衛門。
結局、罠を警戒するあまり、
川を流れる真庭狂犬のデイパックを取らず仕舞である。
【1日目 黎明 E-5から移動中】
【左右田右衛門左衛門@刀語シリーズ】
[状態] 健康
[装備]ボウガン(矢付き)@戯言シリーズ 永劫鞭×1@刀語シリーズ
手裏剣×3@刀語シリーズ
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考]
基本 姫を探しつつ、見つけた姫以外の人間は殺す。
1 姫を見つけたら、以後は姫の指示に従う。
2 姫を
闇口濡衣が何らかの方法でも守っていたら闇口濡衣と手を組む。
3 姫が参加していなかった場合は、闇口濡衣と手を組む。
※肉体の制限がどの程度の物か判ったかも知れません
「……はっ……はっ……はっ……はっ……はっ……」
Gー4のコンクリートの海岸。
結局、真庭狂犬は最後の投擲以外に手はなく、
左右田右衛門左衛門が罠を警戒せずに、
そのまま追い掛けられていたら死ぬしかない展開であった。
しかし結果は追い掛けられず逃げ切りに成功、
勝利とは言えないまでも敗北とも言えない、
そんな半端な結果に終わってしまった。
「……はっ……はっ……はっ……はっ……ガハっ!……はっ……」
しかしその結果にしても問題である。
全身は傷だらけの上に荷物は落とし、
恐らく内臓まで傷付けているボウガンの矢の一撃。
それを利用しての必殺も避けられ、
唯一の戦利品と言える物は全身に巻き付いて離れない永劫鞭一つ。
向こう岸には病院があり泳いで渡れれば治療は出来るかも知れないが、
虚刀流とその虚刀流と互角に近い戦いを繰り広げた少女が居る。
そんな場所に敵である自分が治療しに行くなど死にに行く意味しかない。
まさに絵に描いた様な絶望的状況である。
あくまで、普通ならば。
「お……女……の体……だ」
女の体、それさえあれば今は乗り越えられる。
乗り移って、生き残れ、戦える。
「……近くに…………」
体を引きずる様に動き出す感染。
近くに感染相手を探し動く。
蠢く。
揺らめく。
動き出す。
感染する狂気。狂気の感染。
感染の狂犬。狂犬の感染。
殺す為でなく。
殺される為でなく。
感染する為に。
「……女……」
【1日目 黎明 G-4から移動中】
【真庭狂犬@真庭語】
[状態] 脇腹にボウガンの矢による刺傷(重傷)、全身に切り傷×10(軽傷)
[装備]永劫鞭×1@刀語シリーズ
[道具] なし
[思考]
基本
真庭鳳凰と
真庭人鳥を勝ち残らせる。
1 隙を見てあの小娘の体を乗っ取ってやる
2 真庭の里にもう一度繁栄を
3 急いで適当な体を乗っ取る
※参戦時期は七花に殺された後です。
※体は戦乱時代の物です。
※体に永劫鞭を巻き付けたままです。
※体は結構ヤバ目です。
※真庭狂犬のデイパックは川を流れたままです
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左右田右衛門左衛門 |
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真庭狂犬 |
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最終更新:2009年12月17日 21:49