ダブルクロス3rd

ダブルクロス The 3rd Edition

 人気を博したダブルクロスシリーズの第三版。現代を舞台にした異能アクションジュブナイルです。
 遊び方をごくごく狭く絞る事で、幅広い支持と多彩なスタイルを生み出した、FEARの傑作RPGの一つと言っていいでしょう。

ルールの配分

 楽しいキャラ作成:★★★★★
 深いワールド:★★★
 物語性の高いセッション:★★★★
 疑似体験性の高いセッション:★★
 ゲーム性の高いセッション:★★★
 パーティゲーム性:★★★
 楽しい成長:★★★★★

 キャラ作成と成長はいつものFEAR系TRPGゲです。その傾向はいまいち大味な感があった前作からより一層洗練されて、いくら頭を悩ませても飽きません。
 が、メーカー色に洗練されたという事は、持ち味も薄れたという事です。他のFEARゲ同様、キャラクターというより機能を作っている気分になれます。

 ワールドはあらゆる意味で「ラノベとかでありがちな現代異能物の世界」です。セカイ系と言ってもいいかもしれません。
 取り立てて挙げるほど変わったところがない代わりに、ついていけない部分も少なく、そして何より、遊び方とシンクロした見事な設定になっています。

 このゲームの柱は「ジュブナイル」ですので、基本的には「精神的に未熟なキャラクター達が戦いを通じて愛憎を育み、絆を作って障害を乗り越える」というような遊び方ばかりになります。
 システム通りにキャラクターとシナリオを回していくだけで割とそのままになるというのはすごい事でしょう。
 が、セッション自体の疑似体験性はいまひとつです。やりきるよりも、「この物語をこうもっていって、このキャラクターにはこんな役回りを演じさせたい」という一歩引いた遊び方がメインでしょう。

 ゲーム性は普通です。「キャラを作って戦闘する」というFEAR系TRPGの基本に則った作りで、個性的と言えそうなのは「侵蝕率とにらめっこしながらボスを倒す」という部分です。
 つまるところこれが柱であり、その柱がよく出来すぎていて、GMの一工夫は他の「よく出来ていない」ルールよりハードルは高くなります。
 柱によりかかったゲームは楽しいですが、それ以上を作り出すのは難しい部類だと思われます。

 成長はFEAR系TRPGの例に漏れず楽しいです。
 エフェクトと言われる超能力を組み合わせて自分なりに技を構築していく「コンボ」システムは少々取っつきにくいところがありますが、色んな使い方が出来て遊べます。

所要時間(★1-5で評価)

 ルール把握:★★★★
 シナリオ作成:★★
 キャラ作成:★★★
 実プレイ:★★
※これは当然、「慣れ」や「参加者の背景」で変わるものです。目安程度に捉え、自分の基準と異なるからといって、あまりめくじらを立てないで下さると嬉しいです。

 ルールはFEAR系によくある2d6ではなく、「ダイスをたくさん振ってその中で最大の出目を見る」タイプの物です。
 使うダイスの種類は10面で、振り方も違うので最初取っつきにくく感じるかも知れません。

 シナリオ作成は凝った事をしなければ簡単です。作品として想定している遊び方を非常に狭めてあるので、大体のユーザもそれを望んでいるし、その通りにシナリオを組むのも簡単なはずです。
 ぶっちゃけて言ってしまえば、ラスボスとヒロインをパターン通りに組んで、パターン通りに回していけばシナリオになります。
 ラスボスは大体、「レネゲイド絡みで悪巧みをしている悪人」か「心の傷で悪事に走った善人」、ヒロインは「無垢なる日常の象徴」か「特別な背景のせいで狙われる人物」です。

 キャラ作成は「コンボ」の組合せと、シンドロームの相性の都合、慣れるまではそこそこ時間がかかるでしょう。
 が、逆を言えばそこだけ覚えてしまえばキャラクターの作成はかなり高速化出来ます。

 実プレイ部分はルールで長引くのを抑制してあるのですが、結局の所はシナリオ次第になってしまいます。
 社会構造が複雑な現代を舞台にしており、ジャームという絶対悪はあるものの、絶対善は存在しません。
 物語的にも葛藤してみせるようなプレイが(ある程度)想定されるので、ちゃんと演じると落としどころを気をつけても多少時間を食うでしょう。
 とはいえ、公式で用意されたシナリオをプレイする分には、キャラを作ってロイスを取りつつ最後に戦闘するだけですから、さほど迷う事もないはずです。

ルールの概要

 ルールの表記フォーマット等はよくあるFEAR系TRPGで、明確かつ明瞭で、他のルールでの定石やタームがほぼそのまま使えます。

 ダイスの振り方が幾分風変わりですので、そこだけはセオリーが幾分変わってきます。
 特に、判定の期待値が読みにくい部分がある為、難易度の設定は悩みの種でしょう。
 この部分公式シナリオなどではある程度の指針が示されています。戦闘に関しては「命中はバカ高い」「回避は低め」であり、それ以外の局面では「達成値が低くても最低限の成果、達成値が上がれば余分な特典」という作りです。

 キャラクターはクラスにあたる「シンドローム」と「ワークス」、能力値、技能、特技にあたる「エフェクト」で大まかに構成されています。
 言ってしまえばキャラを作って戦闘をするゲームですので、プレイヤーは戦闘において特定の役割を請け負うキャラクターを作る事になります。
 その役割を把握すれば、必要な技能の傾向が分かり、それが分かれば適性の高いクラス(シンドローム)が分かります。エフェクトの傾向はシンドロームにより異なるからです。

 このゲームを特徴付ける大きなファクターに、侵蝕率とロイスがあります。
 侵蝕率はキャラクターが特技を使うコストになるMPのようなものであり、また増えすぎればキャラクターがロストしてしまう危険性のある数値です(侵蝕率は特技を使うと増えます)。
 ロイスというのは「コネクション」みたいなものです。とはいえ、ロイスがあるから渡りをつけられるというような物ではなく、単に「相手をどう思っているか」を表すデータです。
 普通ならその辺りは、キャラクターシートの余白にでも書き込む物ですが、ダブルクロスにおいてはそれがヒーローポイントであると同時に、侵蝕率を使いすぎてキャラクターがロストするのを防ぐファクターともなります。

 侵蝕率はゲーム中の場面に居合わせるだけで上がっていきますので、自ずとゲームの長さは決まってきます。
 具体的な数字を出すと、ゲーム開始時に30-40ほどの侵蝕率を、110-160ぐらいまでに押さえる必要があります。シーン1つで大体5上がり、特技を使っても増えます。
 そんなわけですから、キャラクターのデータが事前に分かっていれば大体どのぐらいの長さにするのが適当かは分かりやすいのですが、あまりタイトなシーン構成を作ると窮屈なセッションになってしまうでしょう。

 ゲームのキモ、というかほぼ大半を占める戦闘は、侵蝕率とロイスの残高を見ながら手札を切っていく、いつものFEARゲです。
 プレイヤーをハラハラさせつつ、PCの勝利で終わるようにするのはなかなか骨の折れる仕事で、当レビュー執筆者自身もまだよく分かりません。

推奨するプレイヤー

 現代日本を舞台にごく平凡な高校生の少年が超能力に目覚めて怪物をやっつけたりとか、女の子にモテたりとかする話が好きな人。
 そのくせ不幸を一身に受けた気になって苦悩したりする話が好きな人。

関連書籍

ルール
ルール1
ルール2
上級ルール
パブリックエネミー
インフィニットコード

シナリオ集
ディープフロント
ムーンレスナイト

リプレイ集
色々

設定資料集

参考資料
ライトノベル各種

導入ガイド

 ルール1は必須です。ただ、1だけでは「遊べないわけじゃない」レベルで、むしろよほど慣れてキャラクターメイクに「スレ」た人以外は、ある程度データを揃えて選択肢を広げた方がいいでしょう。
 が、手軽に遊べる「シナリオクラフト」のルールが掲載されているのはパブリックエネミーで、ひとまずルール1の次にお勧めです。
 ルール2は全編に渡って追加エフェクトの本ですが、既存の敵データがそこそこ掲載されています。
 上級ルールにはDロイスと呼ばれる追加ルールが掲載されています。大判だけあって、それ以外にも既存敵データや特殊アイテム等、様々なデータが付属しています。
 インフィニットコードは追加シンドロームや追加エフェクトが多数掲載されていますが、逆を言えばそれだけです。あれば嬉しいかもしれませんが、重要度はサプリ・追加ルールの中では低い方です。

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最終更新:2010年10月06日 16:54