大まかな権力構造
諸侯
帝国内の世俗権力の多くは、未だに貴族である諸侯が握っている。
諸侯は大まかに選帝侯の何れかの勢力に属しているが、表立って対立してはおらず、各々自分の領地経営に邁進している状況である。
教会
名目上は世俗権力を有さない事になっているものの、反面で帝国内に荘園や壮麗な寺院、各種財宝、教義上の限定的な影響力を超えて政治的発言力を有しており、それらを守る為に「冒険者」という歪な制度を採用している。
帝国軍
帝国内の軍事力の大半は、諸侯が擁する騎士や兵士からなる。
それとは別に、帝国直轄の軍事力があり、狭義の「帝国軍」と呼ばれている。
優れた資質を持つ戦士から選抜され、強力な武装と高い練度を有する精鋭集団ではあり、帝国が瓦解した今も規模を縮小しながら維持されている。
これは諸侯が帝国軍を手なずけて味方にしたいという思惑もあるが、精強な戦士集団が軍閥化したり、食い詰めて賊軍に堕するのを嫌ったというものが大きい。
帝国軍は規模を縮小しつつあるが、こぼれたこれらの精兵は諸侯が掬い上げる構図になっている。
経済規模に変化が無いのに新たな兵力を雇い入れれば、財政が圧迫されるか、従来戦力の一部が解雇されるかである。
溢れた兵士が皆、剣を鋤に持ち替えられる訳ではないため、この地における冒険者が増える一因になっている。
商人
帝国内における商人は決して地位が高いとは言えないが、大きな商会を有する商人の中には貴族にも並ぶ影響力を持つ大商人もいる。
帝国の大商人は大まかに二つの勢力に分ける事が出来る。
一つは西方との貿易で勢力を伸ばした商家で、もう一つは東方との貿易で大きくなった商家である。
前者の代表はゲシェフト(帝都の北200kmほどにある大都市である)を中心に栄えるタルカス家、後者の代表はヘンドラー(トアールの東300kmほどにある大都市である)のブラフォード家である。
この二家の影響力は上級の爵位を有する貴族にも並ぶほどで、実態も貴族化しつつある。
例としてブラフォード家は実際に爵位を有し、“幸運と勇気の剣”として知られる名剣「プラック」をレガリアとして代々受け継いでいる。
ネヴァーフ
帝国領内のネヴァーフは、ヒューリンの次に多い種族である。
彼らはヒューリンと共に暮らすいくつかの部族を除けば、その多くが帝国の東西に位置するオステン・グロース両山脈の地下に巨大な地下王国を築き、そこで栄えている。
エルダナーン
帝国領内のエルダナーンには、ネヴァーフが有するような巨大なコロニーは存在しない。
元々数が少なかった事もあるが、帝都の南にあるケニヒューゲル丘陵にある王国が最も大きく、それも規模で言えば決して大きなものではない(少なくともヒューリン達はそう考えている)。
この王国は建国帝ログレスと盟約を結び、各氏族を纏めて妖魔との戦いを支えたという経緯から、帝国から大きな便宜を受けて強力な自治権を有する。
とはいえエルダナーン全体は、帝国をヒューリンの国と位置づけ、干渉する事もされる事も嫌っている。
そのような訳で、帝国領内におけるエルダナーンは、非常に影が薄い。
冒険者
「冒険者」というのは比較的新しい言葉で、始めに使い始めたのは流れ者を相手に商売をする連中であると言われている。
ここで言う流れ者には旅商人や巡礼、旅芸人なども含むのだが、相手の素性をいちいち調べて商売をしている余裕はないので、やくざ者や盗賊の類も近場で悪さをしていなければ商売相手に含める形になる。
そうした様々な人々を人くくりにして、耳障りのいい言葉で呼ぶことにした。その名前が「冒険者」というわけである。
冒険者にはそうした「ならず者」も少なからず含まれ、一般の印象はむしろそのような連中の方が強烈である。
その為、教会や特定パトロンに属する冒険者は「そいつらとは違うのだ」とアピールする為、殊更品行方正に振舞おうとする傾向にある。
冒険者と法律
冒険者というのは、本質的にはアウトロウである。
ここでいうアウトロウというのは、「法に従わない代わりに、法の保護を受けられない人々」の事である。
冒険者自体はいかなる社会にも属さないので、その社会で定められた納税やその他の様々な法的義務を負わない代わりに、いかなる社会でも法が保障する権利や保護を得られない。
例えばそのような冒険者が犯罪を犯せば、裁判を受ける事も出来ずに罰せられる事になる。
※法に縛られずとも、犯罪と見做される行為はある。例えば法廷での偽証、契約不履行、傷害・殺人、妖魔や敵性勢力に協力して人類の益を損なう行為、あるいは権力者への侮辱等である。
これは非常に厳しい立場である為、多くの冒険者はいずれかの社会に属することで、自ら法に縛られ、代わりに法の保護を受けようとする。
教会に承認された冒険者等はその典型である。特に希望がない限り、PC達は「教会の承認を得て、法で縛られた冒険者」である。
また、冒険者として承認されていないとしても、都市に家を所有したりすれば、市民としてその都市の法律に縛られ、その都市の中では法律の保護を得る事が出来る。
このように、冒険者と法律の関係は様々である。
冒険者にとっては法律と言うのは「その地域に留まりたいなら守らねばならないもの」程度の意味合いしか持たず、(全ての冒険者がそう考えてはないが)いざとなれば逃げてしまえば良い。
ある法の及ぶ範囲から出てしまえばその法はもはや効力を持たず、賞金等をかけて手配するにも確実性やコストの点で割に合わない事が多いため、「逃げる」というのは短視野的には非常に有効な手段なのである。
そうした冒険者が一定数いる事で、冒険者への信用は(教会のおかげで他地域よりは幾分マシであるものの)なかなか向上せず、「真っ当な」冒険者の悩みの種となっている。
妖魔
この地における妖魔は多いが、まとまりを欠き、大きな勢力になっているとは言い難い。
それでもチバラギの丘陵にはまだまだ多くの氏族が点在しており、これを纏める指導者が現れればいつでも脅威になりうるだろう。
この地で最も数が多い妖魔は、何と言ってもゴブリンである。
俗説の類だが、この地にフィルボルが非常に少ないのは、多くが邪悪化してゴブリンと化したからだという伝説すらある。
他の種族はゴブリンのすぐ下にフォモールが続き、それに大きく差をつけられてフォモール、バグベア、オウガの順で数が多い。
トロウルやバンパイアは数が少ないが、強力な個体が多いと言われ、これらの種は特に恐れられている。
邪悪化
妖魔は人類種族をさらって妖魔にしてしまうと言われている。また、邪悪な心を持つ者が魔神や邪神の力により妖魔と化してしまうという話もある。
これらはいずれも俗説であり、少なくとも実際に邪悪化が起こった実例は記録にない。
が、妖魔の分布や繁殖を説明するには「邪悪化」を迷信で片付けては難しい部分があり、更なる調査が必要である。
最終更新:2015年08月11日 02:57