天下繚乱ショートセッション用SPT「番宿にて」

■概要


 「番宿」というのは、渡し場の人足が待機する場所ですが、渡し場とかでよくある待合室みたいな施設を手っ取り早く言い表す単語がなかったので、あえて誤用する事にしました。

 このSPTには、目指すべき場所も目的もありません。
 ただ、川や湖沼の渡し場に居合わせた人達が、渡しが再開するまでの間にささやかな人間関係を構築し、その時が来たら別れていくというものです。

 目指す雰囲気としては、「暇を持て余すキャラクター達の会話や行動を面白おかしく演じる」というものです。
 参加者は普段以上に、エンターテイナー魂を発揮して、ネタを考えたり、掛け合いを楽しんだりして下さい。
 出したネタを誰かに被せられたりしても、いいネタを提供したぐらいに割り切って、同時にまた被せる側もほどほどにして、出来るだけみんなで楽しめるようにしましょう。

 とはいえFEARゲですので、大体ラストは戦闘になります。

◆留意点

 本SPTは《一気呵成》でごり押しされると終了するので、「経験値減るよ?」と脅して使用を控えてもらいましょう。
 本SPTのプライズは「ラスボスにしたくないキャラとして一票」というものです。
 プライズ1つにつき1票にカウントし、適当にシーン数こなしたら次に進みます。プライズポイントは使用しません。


◆ストーリー

 舞台となるのは、とある大河の渡し場になります。
 旅人であるPC達が渡し場に着くと、渡しを止められてしまっています。

 PCの他、その場に居合わせたのは[ヒロイン]、[ライバル]、[協力者]。
 (他にも居ていいが、必要になったら描写すればいい)

 渡しが止められているのは、降り続いた大雨のせいとの事ですが、どうも他にも事情がありそうです。

 袖触れ合うも多生の縁、一時の暇つぶしにもいいでしょう、折角ですから、世間話でもしながらのんびり待つとしましょう。


■登場地名・人物


◆舞台設定

▼場所

 どこかの大河のほとりにある渡し場。
 そこは宿場から遠くなく、かといって近すぎる訳でもなく、半刻ほどの距離。
 地域には特に指定なし。有名な渡しというと大井川をはじめいくつか挙がると思うが、決めても良いし、「どこか」でも良い。

▼番宿

 渡し場には渡し番が待機する「番宿」という施設があるが、ここではその一つを慣例的に開放している。
 もちろん宿場まで戻れば快適な寝床があるのだが、わざわざ番宿を借りるのは、急ぎの用があるか、ただものぐさか貧乏か、あるいは何か事情がある者だ。

 番宿は民家と大差ない作りで、土間があり、そこそこの広さの板の間の中央には囲炉裏があって、旅人はそこで勝手に煮炊きをする事が出来る。
 畳はなく、布団も煎餅布団が二組ほどあるきりだが、茣蓙は十分あり、下に敷いて座ったり昼寝をしたりする事が出来る。


◆プレサージ

▼[ヒロイン]

 PCが居合わせた女性。
 誰かを探しており、基本的には善良で可憐な女性だが、場合によっては「可哀想な」ラスボスになる。
 大体においてか弱い女の身であるため、特に指定がなければ積極的に交流したがり、周囲と良好な関係を保とうとする。
1d6 ヒロイン像 説明
1 場に不似合いな姫 武家や貴族に限らず、豪商の娘などでも良い。一人ではないかもしれないが、ともかく何故か少人数で旅をしている。
2 美しい母娘連れ 大体は夫あるいはその仇を探しているパターン。後家や人妻がヒロインとして微妙なら、「年老いた母と旅する娘」にすると良い。
3 哀しい目をした年増盛 芸者だか花魁だか。あるいはそういうのとは無縁でも、とにかく「一人で頑張ってきた」女性。多分親か男絡み。
4 野良猫のような田舎娘 如何にも「自力で生きてござい」って小娘。一匹狼を気取って馴れ合いを嫌うが、依存心や人恋しさの裏返しだったりする。チョロい。
5 男装の麗人 若武者の格好をした女性。皆はなんか気づいておらず、バレたくないないので距離を置きたがるが、PLにはバレバレである。意外と乙女。
6 浮世離れした巫女

▼[ライバル]

 PCが居合わせた男性。
 別に敵対するとは限らないが、基本的に拒絶的な雰囲気を帯びた「強そうな相手」「只者ではない人物」であり、とばっちりもいいところだがラスボスになりやすい。
 その企み故か、単純に人付き合いが苦手なのかは人それぞれだが、あまり周囲と関りを持とうとせず、一定の距離を保とうとする。
1d6 ライバル像 説明
1 物静かな浪人
2 厭世的な雰囲気の僧
3 目つきの鋭いやくざ者
4 遠くを見る異国の侍
5 汚れた姿の浪人崩れ
6 鉄砲担いだ狩人

▼[協力者]

 番宿の待合部屋に最初にいた人物。
 別に協力するわけではなく、裏読みしなければ「無害そうな人物」、ラスボスになると「得体の知れぬ人物」になる。
 基本的に人懐こく、居合わせた者同士仲良くなるよう立ち振る舞う。
1d6 協力者像 説明
1 にこやかな薬売り
2 陽気な伊勢参り
3 話の分かる旅の老僧
4 優しそうな中年夫婦
5 落ち着いた老隠居
6 詮索好きな旅芸人


■ハンドアウト


◆トレーラー

 時は文政、所は(任意)。続いた大雨で増水し、渡しが止められた川辺。
 英傑たちはしばしの間、番宿で肩を寄せ合い、妖異ではなく退屈と戦う。
 天下繚乱RPG『番宿にて』。箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ(任意)川。


◆PC用ハンドアウト

▼PC1

 概要:旅人の途中、困っているヒロインを助ける
 クラス:任意  コネクション:[ヒロイン]  カバー:任意
 君は旅の英傑だ。
 旅の途中、君は困っている[ヒロイン]を助け、少しの間一緒に行動する事にした。
 君達は連れ立って、(任意)川の渡しへと向かった。
 ※履物の鼻緒が切れたとか、ごろつきに絡まれているとか、そういう導入がいいでしょう。

▼PC2

 概要:旅人の途中、ライバルと出会う
 クラス:任意  コネクション:[ライバル]  カバー:任意
 君は旅の英傑だ。
 君は旅の途中、ふとした事から[ライバル]と知り合った。
 その場はすぐに別れたが、その後、渡し場で立ち寄った番宿で彼/女と再会した。
 ※[ライバル]が野盗や狼の群れをなで斬りにするところに居合わせるとか、そういう導入がいいでしょう。

▼PC3

 概要:番宿に最初に到着し、協力者と出会う
 クラス:任意  コネクション:[協力者]  カバー:任意
 君は旅の英傑だ。
 道中、(任意)川を渡ろうとしたが、渡しは止められていた。
 致し方なく番宿で待つ事にした君を、先客だった[協力者]が迎えた。

▼PC4以降

 概要:PC1~3に同行している
 クラス:任意  コネクション:様々  カバー:任意
 適当に他のPC枠と同行してた事にする。詳しくは相談してね。

◆レギュレーション

▼ルール適用範囲

  必須:基本ルール
  可能:既出サプリ全て。雑誌掲載や同人、自作の類は個別に応談とします。

▼キャラクター作成

  経験点:未定
  特記事項:特になし


■オープニング


 適当にPC用ハンドアウトの内容を消化して導入する。


■ミドルフェイズ


◆進行フロー

  1. 合流イベント
  2. 退屈しのぎイベント
    1. 演出/判定
    2. 投票
  3. シーン数チェック
  4. 最終イベント


▼①合流イベント

 協力者が互いに自己紹介しようと促す。
 続く「退屈しのぎイベント」が何シーンあるか、ここで公開する(先に決めといてもいいけど)。
 シーン数は任意だが、ここでは7を提案しておく。

 ここで決めたシーン数が経過すると渡しが再開する。
 「渡しの再開」がいつになるかなんてキャラクターには分からないけど、プレイヤーには分かっていた方が良い。
 シーンを○○ぐらい使えるから、こんなストーリーを…みたいな使い方が出来るし、それを推奨したいからね。

▼②退屈しのぎイベント

 退屈しのぎイベントチャートを振り、イベントをこなしていく。
 ここでは概ね「PC側が持ちかける」を想定している。
 (勿論NPCが起点になっても良いのだが、楽すぎて多用されるとGMの負担が増すので、あくまで基本は「PCが起点」としておく。

 イベント内容は結末に無関係で、用意された判定に勝利するといずれかのプレサージを「ラスボスにしたくない枠」に投票できる。
 この判定は誰が振っても良く、一人成功すれば良いが、投票権を持つのはあくまでシーンプレイヤーであるとする。

▼③シーン数チェック

 (①で宣言した)規定のシーンをこなしたかどうか確認し、まだなら[②退屈しのぎイベント]に戻る。

▼④最終イベント

 いよいよ渡しが再開するが、その前後に最終イベントが起こる。
 最終イベントチャートを振る。

◆退屈しのぎイベント

1d(RoC) イベント内容 発生イベント
1 ヒロインとの交流
2 ライバルとの交流
3 協力者との交流
4 暇つぶしの雑談
5 暇つぶしのイベント
6 ささやかな事件
7 レギュラー交代
 イベント1~3はプレサージを指定するもので、詳細はシーンプレイヤーがプロデュースすると良い。
 イベント4~6はイベント内容を指定するもので、登場キャラ等は自由に決める。


▼ヒロインとの交流

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 協力者と揉めるヒロイン 【体力】
2 ライバルを見つめるヒロイン 【反射】
3 【知覚】
4 ヒロインと身の上話 【理知】
5 詮索してくるヒロイン 【意志】
6 ヒロインとおすそ分け 【幸運】

▼ライバルとの交流

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 酒とライバル 【体力】
2 ライバルとの立ち合い 【反射】
3 発作に苦しむライバル 【知覚】
4 ライバルと昔話 【理知】
5 ヒロインを気にするライバル 【意志】
6 【幸運】

▼協力者との交流

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 【体力】
2 ライバルを気にする協力者 【反射】
3 宿の人を肴に雑談したい協力者 【知覚】
4 渡河が許可されない理由 【理知】
5 英傑を詮索したい協力者 【意志】
6 ヒロインを気にする協力者 【幸運】

▼暇つぶしの雑談

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 食い物の話 任意の能力値
2 身の上話 任意の能力値
3 お国の話 任意の能力値
4 趣味の話 任意の能力値
5 天下の話 任意の能力値
6 任意の能力値


▼暇つぶしのイベント

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 勝負事 任意の能力値 丁半、花札あるいはより原始的な賭けなど、何やら勝負事で暇つぶしをする。
2 任意の能力値 誰かが持ち込んだ酒を、欠けた茶碗で回し飲みなぞする。
3 食い物 任意の能力値 餅や豆、みかんなど。誰かが軽食として携えていたものを皆で分け合って食べる。
4 釣り 任意の能力値 近くの淵や川で釣り。うまく行けば昼飯(晩飯?)の菜っ葉雑炊に彩を加えられるかもしれない。
5 語り 任意の能力値 怪談や武勇伝、デカメロンのような物語を皆で語っていく。
6 余興 任意の能力値 講談とか手妻とかお座敷芸をやらされる。PCが誰かにやらせても良い。


▼ささやかな事件

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1 喧嘩 ※戦闘
2 急病人 体力or理知
5 天候急落 反射or幸運
3 泣き出す子供 知覚or意志
4 天候好転 知覚or幸運
6 急な物要り 体力or反射


▼レギュラー交代

1d(RoC) イベント内容 判定値 説明
1
2
3
4
5
6


◆最終イベント


 まず各プレサージの「投票数」を比較して、以下の通りに分類する。
 ・票数が一番少ない:ボス候補①
 ・票数が二番目に少ない:ボス候補②
 ・票数が三番目に少ない:ボス候補③

 得票同数の場合は同じ分類のプレサージが複数になってよい。
 クライマックスイベントを決めた後で、必要ならダイスでも振って適当に決める事。

▼最終イベント

d66(RoC) 最終イベント
11-16 ①ボス候補は妖異の化身だった!
21-26 ②近くの村で堤が決壊した! 皆で力を合わせて乗り越えたが…
31-36 ③ボス候補は(別プレサージorPCの)刺客だった
41-46 ④凶賊団が襲ってきた!
51-53 ⑤凶賊団が襲ってきた! 皆で力を合わせて乗り越えたが…
54-56 ⑥ボス候補は全員がPCの刺客だった!
61-63 ⑦ボス候補を狙って魔物がやってきた!
64-65 ⑧凶賊団が襲ってきた! ボス候補③はその手引きだった
66 ⑨何事もなく平和に終了

▼ボス候補

1d(RoC) 結果
1-4 ボス候補①がラスボス
5-6 ボス候補②がラスボス

▼補足説明

  • ①ボス候補は妖異の化身だった!
    • 渡しが再開した事の報せと前後して、御役人や武士、ドスケベ衣装に身を包んだ退魔忍などの一団がなだれ込んできて、[ボス候補]を取り囲む。
    • 渡しが止められていたのは、この強大な妖異を探し出すためだったのだ。
    • 追い詰められた[ボス候補]。だが彼/女は残忍に笑うと、瞬く間に追っ手を惨殺する。そして一連の騒動を見ていた英傑たちも口封じのため襲い掛かって来た!
    • ※構図として一番単純なケースです。極めて強大な個体か、眷属を召喚する感じのボスがいいでしょう。


  • ②近くの村で堤が決壊した! 皆で力を合わせて乗り越えたが…
    • ※事前イベントをプレサージ・英傑みなで乗り越え、連帯感を抱いた状態で「やりたくない」戦闘をやるという流れです。
    • 番宿の近くの集落で堤が決壊し、村が洪水の危機に見舞われそうだという。
    • という流れで、番宿にいる全員で村を助けに向かう。これが最終の事前イベントになる。
    • このイベントはいくつかの判定セットで構成すると良い。あるいは暇なら、土石流や瓦礫をエネミーデータで作って戦闘の形で表現しても良いだろう。
    • そして村を首尾よく救う事が出来たら、なんかやり遂げた感を少し演出した後で、蛇足感を出しつつ最終戦闘が始まる。
    • ボスのスタンス類型
      • 1.やりたくなくてぐずぐずして、機を決定的に逸してしまったが使命を捨てる事もできずに嫌々襲ってくる。
      • 2.英傑の隙を伺っていたが、英傑たちが消耗したため計画が変わって襲ってくる。
      • 3.英傑が油断するのを待っていた。
    • 助命エンドの可能性もあるし、何より処理的に重たくなるので、あまり強敵にする必要はないだろう。
    • あるいは事前イベントが重かったなら、以後の流れはエンディングでさらりと演出で済ませてしまってもいいかもしれない。


  • ③ボス候補は(別プレサージorPCの)刺客だった
    • [ボス候補]は刺客だが、何らかの理由で事を起こす事をためらっていた。
    • しかし渡しが再開されたタイミングで正体を明かし、襲い掛かって来る。
    • ボスのスタンス類型
      • 1.確証が持てずにしばらく観察していたが、本人だと分かったので戦いを挑む。仇討ちパターン。
      • 2.戦力が整うまで監視していたが、増援が到着し態勢が整ったので襲ってくる。忍者パターン。
      • 3.暗殺の使命を帯びていたがやりたくなくて、先に進むのを諦め戻る事を期待していたが、川を渡って進もうとしたためやむを得ず襲ってくる。


  • ④凶賊団が襲ってきた!
    • 警備が手薄というだけの理由で、凶賊が番宿を襲ってくる。
    • あるいはプレサージのいずれかが大金を持っているとか人質の価値があるとかでもいいかもしれない。
    • この割と脈絡のない凶賊団を倒して、シナリオは大団円を迎える。

  • ⑤凶賊団が襲ってきた! 皆で力を合わせて乗り越えたが…
    • ※②のバリエーション。事前イベントが戦闘になるが、それ以外は②と同じでよさげ。


  • ⑥ボス候補は全員がPCの刺客だった!
    • プレサージ全員(エキストラも含め番宿の全員でもいい)が"ぐる"で、全員で英傑たちに襲い掛かって来る。
    • 構成は自由にして良い。一人がリーダーで他が部下でも良いし、悪党コンビと嫌々従っている一人でも良いし、三位一体のトリオ打ちでも良い。


  • ⑦ボス候補を狙って魔物がやってきた!
    • ボス候補がラスボスになるのではなく、何らかの理由でラスボスに狙われている。ラスボスは「魔物」と書いたが、土地神とか悪代官とか忍者軍団とかでも良い。
    • 自身が何か禁忌を冒したり、プラーナとかレネゲイドとかが他人より濃くて狙われてたりする。
    • どちらにせよ番宿ごと皆殺しにしようとしてくるので対抗する。


  • ⑧凶賊団が襲ってきた! ボス候補③はその手引きだった
    • ボス候補③が実は敵だった、というケース。凶賊団と書いているがここは魔物でも妖異でも構わない。
    • ボス候補③は人質を取られていたり、一族の使命に縛られていたり、術で操られていたりして、ラスボス一味の襲撃を手引きする。
    • プレサージ全員それなりに気に入ったので倒したくないけどクライマックス戦闘はしたい、みたいな時にお勧め。


  • ⑨何事もなく平和に終了
    • たまにはそういう事もある。


■エンディングフェイズ


 皆そろって渡しを越え、連れ立って旅をする~でも良いし、別れてそれぞれの旅路についても良い。
 仇討ちやら何やらで特別な因縁がある場合は個別エンディングを作っても良いが、それでも状況的に全員が立ち合う中で行われるだろう。

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最終更新:2019年10月30日 00:53