喫茶店と女店主
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女 「いらっしゃい。……なんだ、君か」
男 「客に対してそれはないだろう」
女 「家でインスタントコーヒーでも飲んでれば良いのに……」
男 「そう言いつつ注文聞く前にいつものコーヒー淹れてくれる所、嫌いじゃないぜ」
女 「塩、袋ごと投げつけるよ」
男 「ごめんなさいもう言いません」
女 「はい、いつもの」
男 「ありがとう。……ところで毎回聞くようだけど」
女 「砂糖とミルクは置いてないよ」
男 「……苦いなぁ」
女 「そう思いながら何で毎日来るんだろうね、君は」
男 「君の」
女 「えーと、塩の袋どこだったかな」
男 「ごめん嘘もう言わない」
男 「客に対してそれはないだろう」
女 「家でインスタントコーヒーでも飲んでれば良いのに……」
男 「そう言いつつ注文聞く前にいつものコーヒー淹れてくれる所、嫌いじゃないぜ」
女 「塩、袋ごと投げつけるよ」
男 「ごめんなさいもう言いません」
女 「はい、いつもの」
男 「ありがとう。……ところで毎回聞くようだけど」
女 「砂糖とミルクは置いてないよ」
男 「……苦いなぁ」
女 「そう思いながら何で毎日来るんだろうね、君は」
男 「君の」
女 「えーと、塩の袋どこだったかな」
男 「ごめん嘘もう言わない」
男 「最近前ほど苦く感じなくなってきたよ」
女 「君の舌もやっと小学校卒業か」
男 「それはないでしょう。でもまだ砂糖とミルク入れたのより美味しいとは感じないな」
女 「なるほど。私が淹れたコーヒーが不味いと」
男 「ちが、そうじゃないって! あ、それまだ飲みかけ……」
女 「どれどれ。……。こんなに美味しいのに、君は不味いと言う……」
男 「分かった、分かったから怖い顔で迫らないで」
女 「半分は私が飲んじゃったから、御代は半額で良いよ」
男 「(間接キス……)」
女 「君の舌もやっと小学校卒業か」
男 「それはないでしょう。でもまだ砂糖とミルク入れたのより美味しいとは感じないな」
女 「なるほど。私が淹れたコーヒーが不味いと」
男 「ちが、そうじゃないって! あ、それまだ飲みかけ……」
女 「どれどれ。……。こんなに美味しいのに、君は不味いと言う……」
男 「分かった、分かったから怖い顔で迫らないで」
女 「半分は私が飲んじゃったから、御代は半額で良いよ」
男 「(間接キス……)」
『え? あれより苦味の少ないのですか? そうなるとグァテマラとかどうですか?』
女 「そうですね……。それブレンドして焙煎でちょっと工夫してみます」
『量はいつもの通りで納めますんで。まいど~』
女 「……次来るまでには色々試してみないとね」
女 「そうですね……。それブレンドして焙煎でちょっと工夫してみます」
『量はいつもの通りで納めますんで。まいど~』
女 「……次来るまでには色々試してみないとね」
男 「何でブラックだけ? メニュー増やせばお客さんも増えるのに」
女 「砂糖やミルクを入れたらコーヒー本来の味がごまかされてしまうからね」
男 「『あんなもの、豚が舐めるもんだ』って?」
女 「そこまでは言わないけどね。でもわざわざコーヒーに入れなくても……とは思う」
男 「砂糖いっぱい入って甘すぎるのはあるけど、ちょっと位なら味を引き立たせると思うけどなぁ」
女 「コーヒーだけで十分美味しいというのがうちのコンセプトだから」
男 「でもさ、お茶請けというか、甘いものはあっても良いんじゃない?」
女 「そんなことしたら他の店と変わらなくなっちゃうじゃない」
女 「砂糖やミルクを入れたらコーヒー本来の味がごまかされてしまうからね」
男 「『あんなもの、豚が舐めるもんだ』って?」
女 「そこまでは言わないけどね。でもわざわざコーヒーに入れなくても……とは思う」
男 「砂糖いっぱい入って甘すぎるのはあるけど、ちょっと位なら味を引き立たせると思うけどなぁ」
女 「コーヒーだけで十分美味しいというのがうちのコンセプトだから」
男 「でもさ、お茶請けというか、甘いものはあっても良いんじゃない?」
女 「そんなことしたら他の店と変わらなくなっちゃうじゃない」
男 「また来たよ」
女 「懲りない奴だね君も。はい」
男 「……あれ、お茶請けが付いてる。メニュー増やさないんじゃなかった?」
女 「お隣さんからもらったお土産のお菓子なんだけど、どうにも不味くてね。君が食べて」
男 「どう見ても手作りなんだけどなぁ」
女 「要 ら な い の ?」
男 「食べます! 食べますから! ……美味しいじゃないですか」
女 「……ふん(///)」
男 「あ、ちょっと! 話し相手になって下さいよ! 何で裏方に引っ込んじゃうんですか!」
女 「懲りない奴だね君も。はい」
男 「……あれ、お茶請けが付いてる。メニュー増やさないんじゃなかった?」
女 「お隣さんからもらったお土産のお菓子なんだけど、どうにも不味くてね。君が食べて」
男 「どう見ても手作りなんだけどなぁ」
女 「要 ら な い の ?」
男 「食べます! 食べますから! ……美味しいじゃないですか」
女 「……ふん(///)」
男 「あ、ちょっと! 話し相手になって下さいよ! 何で裏方に引っ込んじゃうんですか!」
女 「いらっしゃい。 たまには違うの頼めば?」
男 「まだ何も言ってないのに……。まぁいつものなんですけどね」
女 「こっちも毎日同じのばかりじゃ飽きてしまうよ」
男 「じゃあ今日は作り方見学しようかな」
女 「何? 自分で淹れる気?」
男 「淹れ方覚えれば家で砂糖とか入れて飲めますし」
女 「……」
男 「後ろ向かないで下さいよ。それじゃ見えないじゃないですか」
女 「ここに来れば美味しいコーヒーが飲めるんだから覚えなくてもいいでしょ」
男 「つまり、『私のコーヒーを飲みに毎日来て欲しい』と?」
女 「さて、お客さんも居ないし今日は店じまいかな」
男 「あ、嘘嘘! 本当に淹れるの止めないでよ!」
男 「まだ何も言ってないのに……。まぁいつものなんですけどね」
女 「こっちも毎日同じのばかりじゃ飽きてしまうよ」
男 「じゃあ今日は作り方見学しようかな」
女 「何? 自分で淹れる気?」
男 「淹れ方覚えれば家で砂糖とか入れて飲めますし」
女 「……」
男 「後ろ向かないで下さいよ。それじゃ見えないじゃないですか」
女 「ここに来れば美味しいコーヒーが飲めるんだから覚えなくてもいいでしょ」
男 「つまり、『私のコーヒーを飲みに毎日来て欲しい』と?」
女 「さて、お客さんも居ないし今日は店じまいかな」
男 「あ、嘘嘘! 本当に淹れるの止めないでよ!」
女 「さて、そろそろ来る時間か。用意しておくか」
女 「……」
女 「……来ない。風邪でもひいたかな」
女 「……今日は来ないのかな」
女 「……自分用に、淹れよ」
女 「……」
女 「……来ない。風邪でもひいたかな」
女 「……今日は来ないのかな」
女 「……自分用に、淹れよ」
男 「いやぁ、今日は遅くなっちゃって。店閉まってるかと思いました」
女 「君が来ないからゆっくりコーヒー飲んでくつろいでいたのに……」
男 「いや、仕事して下さいよ。いつものお願いします」
女 「はいはい」
男 「……なんだか嬉しそうですね。邪魔された腹いせに苦く淹れようとしてないですか?」
女 「察しが良いね。せっかく正解したんだからその通りに淹れてあげよう」
男 「今日は本当に嬉しそうですね。せめて注し湯は付けて下さいよ」
女 「君が来ないからゆっくりコーヒー飲んでくつろいでいたのに……」
男 「いや、仕事して下さいよ。いつものお願いします」
女 「はいはい」
男 「……なんだか嬉しそうですね。邪魔された腹いせに苦く淹れようとしてないですか?」
女 「察しが良いね。せっかく正解したんだからその通りに淹れてあげよう」
男 「今日は本当に嬉しそうですね。せめて注し湯は付けて下さいよ」
男 「ところで、何でコーヒー何ですか? この店」
女 「私にケンカ売ってる?」
男 「ち、違いますよ。紅茶とか中国茶とか、色々あるじゃないですか」
女 「コーヒーは手軽に焙煎も淹れ方も楽しめるからね」
男 「ってことは生豆から焙煎してるんですか?」
女 「君用のはキロ単位で安売りしてた焙煎済みのだけどね」
男 「酷い……。ちょっと豆置いてる所見せてくださいよ」
女 「まぁいいけど、見てもしょうがないと思うよ」
女 「私にケンカ売ってる?」
男 「ち、違いますよ。紅茶とか中国茶とか、色々あるじゃないですか」
女 「コーヒーは手軽に焙煎も淹れ方も楽しめるからね」
男 「ってことは生豆から焙煎してるんですか?」
女 「君用のはキロ単位で安売りしてた焙煎済みのだけどね」
男 「酷い……。ちょっと豆置いてる所見せてくださいよ」
女 「まぁいいけど、見てもしょうがないと思うよ」
男 「へぇ……結構種類ありますね」
女 「色々ブレンドしたりしてるからね。こっちの棚は特別な人にだけ出すブレンド。
と言っても主に私とか友達が飲む用だけど」
男 「そんな良いものがあるのに俺には安売りの豆だなんて……。ん? これ俺の名前が」
女 「色々ブレンドしたりしてるからね。こっちの棚は特別な人にだけ出すブレンド。
と言っても主に私とか友達が飲む用だけど」
男 「そんな良いものがあるのに俺には安売りの豆だなんて……。ん? これ俺の名前が」
『男君用ブレンド』 『男君用ブレンド2』 ……
女 「!!! そ、それは古くなって余った豆がもったいないから作ったんだよ!」
男 「でもちゃんと密閉容器に入って気合入ったラベルまで」
女 「さ、さぁ! もういいじゃない! ほらほら、またコーヒー淹れてあげるから」
男 「なんかいきなりハイテンションですよ、女さん。ちょ、そんなに押さなくても歩きますから!」
男 「でもちゃんと密閉容器に入って気合入ったラベルまで」
女 「さ、さぁ! もういいじゃない! ほらほら、またコーヒー淹れてあげるから」
男 「なんかいきなりハイテンションですよ、女さん。ちょ、そんなに押さなくても歩きますから!」
女 「(しまった……。これがあるのすっかり忘れてた。ごまかしきれたかな?///)」
男 「(特別な人にだけ出す用の棚にあったよな、あの俺用のブレンド。特別……///)」
男 「(特別な人にだけ出す用の棚にあったよな、あの俺用のブレンド。特別……///)」
男 「ここってお持ち帰りとかやってます?」
女 「持ち帰って家で砂糖入れて飲もうって魂胆?」
男 「そこまでブラック以外の飲み方嫌いですか。違いますって。
眠気覚ましにここ以外での飲みたいんですって」
女 「それならコンビニでカフェイン二倍のコーヒードリンクでも買えばいいよ」
男 「家のインスタントってコーヒー飲んだって感じにならないんですよ。
やっぱり女さんのじゃないと」
女 「……まぁたくさんつくり過ぎた時に限り持って帰っても良いよ」
男 「作りすぎることを願って次は水筒持ってきますね」
女 「持ち帰って家で砂糖入れて飲もうって魂胆?」
男 「そこまでブラック以外の飲み方嫌いですか。違いますって。
眠気覚ましにここ以外での飲みたいんですって」
女 「それならコンビニでカフェイン二倍のコーヒードリンクでも買えばいいよ」
男 「家のインスタントってコーヒー飲んだって感じにならないんですよ。
やっぱり女さんのじゃないと」
女 「……まぁたくさんつくり過ぎた時に限り持って帰っても良いよ」
男 「作りすぎることを願って次は水筒持ってきますね」
女 「……冷めても美味しいとなると、素直に水出しコーヒーがいいかな。
あれなら苦味も少なく出来るし」
あれなら苦味も少なく出来るし」
男 「女さんもあれ買ったんですか。あれあんまり美味しくないですよね」
女 「そう? あれはあれで良いと思ったけどね」
男 「いや、絶対あれすぐなくなりますって」
女 「君がそう言ったやつは結構残ってるけどね。……と、ちょっと待って」
女 「そう? あれはあれで良いと思ったけどね」
男 「いや、絶対あれすぐなくなりますって」
女 「君がそう言ったやつは結構残ってるけどね。……と、ちょっと待って」
女 「ごめんごめん、ちょっと忘れてた事があったから」
男 「そういえばこの店、俺以外の客あんまり居ませんよね」
女 「君がいるから他の人来なくてね。知ってる?威力業務妨害って」
男 「俺居るだけで犯罪ですか。あ、コーヒーおかわり」
女 「たまには一番安い奴以外も頼んだら?」
男 「これでも十分美味しいから良いんです。あ、そういえばあのドラマどうでした?」
女 「あれね。私にはあんまり合わないかな。そもそも……」
男 「そういえばこの店、俺以外の客あんまり居ませんよね」
女 「君がいるから他の人来なくてね。知ってる?威力業務妨害って」
男 「俺居るだけで犯罪ですか。あ、コーヒーおかわり」
女 「たまには一番安い奴以外も頼んだら?」
男 「これでも十分美味しいから良いんです。あ、そういえばあのドラマどうでした?」
女 「あれね。私にはあんまり合わないかな。そもそも……」
客1「あー、この喫茶店閉まってる」
客2「ここ、美味しいんだけど、いきなり閉まるんだよなぁ」
客1「中に人はいるっぽいんだけどな」
客2「なんでも特別なお客さんが来たときは貸切みたいにするとかしないとか」
客1「え? そいつ男?! 俺あのマスター結構好きなんだけど」
客2「そこまでは知らないって。ほれ、あきらめて違うところ行こうや」
客2「ここ、美味しいんだけど、いきなり閉まるんだよなぁ」
客1「中に人はいるっぽいんだけどな」
客2「なんでも特別なお客さんが来たときは貸切みたいにするとかしないとか」
客1「え? そいつ男?! 俺あのマスター結構好きなんだけど」
客2「そこまでは知らないって。ほれ、あきらめて違うところ行こうや」
女 「あー、結局今日も君と話してて一日が終わってしまった」
男 「そんな残念そうに言わないで下さいよ。はい、これお代」
女 「暇つぶしの相手には丁度良いから、忙しいとき以外来なさいね」
男 「またまたぁ。毎日暇j……なんでもないですもう帰りますから睨まないで」
男 「そんな残念そうに言わないで下さいよ。はい、これお代」
女 「暇つぶしの相手には丁度良いから、忙しいとき以外来なさいね」
男 「またまたぁ。毎日暇j……なんでもないですもう帰りますから睨まないで」
男 「ども」
女 「いらっしゃい。……どうかした?」
男 「え? 何がですか?」
女 「なんだか落ち込んで見えるよ。はい、いつもの」
男 「そう見えますか。……その通りなんですけどね」
女 「悩み相談はやってないよ」
男 「酷いなぁ。まぁ相談したり愚痴こぼしに来た訳じゃないですからいいんですけどね」
女 「コーヒー飲むとき位嫌な事は忘れたほうが良いよ」
男 「……苦いなぁ」
女 「苦いのは悪いことばかりじゃないんだよ。コーヒーは苦味もあるから味が引き立つ」
男 「悩み相談はやってないんですよね?」
女 「私はコーヒーについて語っただけだよ」
男 「そうですか」
女 「……もう一杯飲む? ゆっくりしていきなさい」
男 「……今日はむしろ女さんが甘いですね」
女 「そんな辛気臭い顔で店出られたら私のコーヒーが不味かったって思われるじゃない」
男 「そんなもんですか。……苦いなぁ」
女 「いらっしゃい。……どうかした?」
男 「え? 何がですか?」
女 「なんだか落ち込んで見えるよ。はい、いつもの」
男 「そう見えますか。……その通りなんですけどね」
女 「悩み相談はやってないよ」
男 「酷いなぁ。まぁ相談したり愚痴こぼしに来た訳じゃないですからいいんですけどね」
女 「コーヒー飲むとき位嫌な事は忘れたほうが良いよ」
男 「……苦いなぁ」
女 「苦いのは悪いことばかりじゃないんだよ。コーヒーは苦味もあるから味が引き立つ」
男 「悩み相談はやってないんですよね?」
女 「私はコーヒーについて語っただけだよ」
男 「そうですか」
女 「……もう一杯飲む? ゆっくりしていきなさい」
男 「……今日はむしろ女さんが甘いですね」
女 「そんな辛気臭い顔で店出られたら私のコーヒーが不味かったって思われるじゃない」
男 「そんなもんですか。……苦いなぁ」
女 「あぁ、また来たの」
男 「入店早々そんな酷い事言わなくても良いじゃないですか」
女 「はい、いつもの」
男 「ども。……はぁ暖まる。今日は外寒くて」
女 「へぇ……」
男 「なんだか心ここにあらず、って感じですね。何かあったんですか?」
女 「君に心配されるほど落ちぶれてはいないよ」
男 「そこまで言いますか」
女 「あ、電話。ちょっと出てくるね」
男 「なんだか本当に元気ない感じ……あれ、カウンターの中に手紙が開いて置いてある」
男 「……覗いたわけじゃなくて見えたんだよな。ちょっとだけ……」
男 「……! お見合い? 女さんが、そんな……」
女 「いやいや、最近のセールスはしつこいね。ん? どうかした?」
男 「いえ、何でも……。すいません、今日はちょっと帰ります。用事思い出したんで」
女 「そう。珍しいね」
男 「これ、お代です。それじゃ……」
男 「入店早々そんな酷い事言わなくても良いじゃないですか」
女 「はい、いつもの」
男 「ども。……はぁ暖まる。今日は外寒くて」
女 「へぇ……」
男 「なんだか心ここにあらず、って感じですね。何かあったんですか?」
女 「君に心配されるほど落ちぶれてはいないよ」
男 「そこまで言いますか」
女 「あ、電話。ちょっと出てくるね」
男 「なんだか本当に元気ない感じ……あれ、カウンターの中に手紙が開いて置いてある」
男 「……覗いたわけじゃなくて見えたんだよな。ちょっとだけ……」
男 「……! お見合い? 女さんが、そんな……」
女 「いやいや、最近のセールスはしつこいね。ん? どうかした?」
男 「いえ、何でも……。すいません、今日はちょっと帰ります。用事思い出したんで」
女 「そう。珍しいね」
男 「これ、お代です。それじゃ……」
男 「(お見合い……。どうするつもりなんだろう。女さん結婚しちゃったら俺は……)」
男 「(なんだか顔合わせ辛くて店来てなかったな。お見合いどうなったんだろう……)」
男 「ども、お久しぶりです」
女 「あ、いらっしゃい。しばらく来ないからどうしたのかと思ったよ」
男 「ちょっと忙しくて。すいません」
女 「はい、コーヒー」
男 「ども」
女 「……今から話すのは私の独り言。コーヒー飲みながら黙って聴いて」
男 「……分かりました」
女 「つい最近、実家の親から手紙が送られてきてね。前回男君が来た日だね、そういえば。
それにね、お見合いしないかって書いてあったの」
男 「……」
女 「写真も入ってた。なんだかもう親はお見合いは決定、みたいな感じだったけどね。
断ろうって思ってたけど、気が付いたら実家に帰ってた」
女 「結局お見合いすることになったんだけどね。今の時代にお見合いも珍しいかもしれないけど……
相手の男性は良い人だった。相手が居なくて困ってたみたいな話事前に親からされたけど、
何でこの人が? って感じの」
男 「……」
女 「でね、二人きりで色々話したんだ。結構楽しかったよ。色々面白い話してくれたし。
こっちで喫茶店開いてるって言ったけど、結婚した後も続けても良いって言ってくれた」
女 「実家に帰って一晩考えた。……結局断っちゃったよ」
男 「……なん、で?」
女 「なんでだろう? 自分でも分からないよ。でもね、色々考えてたら、君の顔が浮かんできてね」
男 「俺……ですか?」
女 「そう。なんか捨てられたような、情けない顔の君が。それ見たらなぜか今のまま続けたいって気持ちが
強くなって。あの人は喫茶店続けてもいいって言ってくれたのに、なんでだろうね」
男 「……すいません」
女 「何で君が謝るの。私が勝手に思って勝手に断っただけだよ。むしろ君には心配かけちゃったみたいだから」
男 「……俺が手紙見たの知ってたんですか?」
女 「あの日、君の目に届くところに手紙置きっぱなしにしちゃったからね。その後のあの態度で、しかも来なくなっちゃった。
いくら何でも気が付くよ」
男 「……ごめんなさい」
女 「だから、謝らないの。謝るのはこっちの方なんだから。……悪かったね、心配かけて」
男 「……いえ。もうここでコーヒー飲めなくなるんじゃないかって思って」
女 「お客さんが一人でも居れば続けるよ。君一人でもね」
男 「絶対、毎日来ますよ」
女 「そうしてもらえるとこっちも辞めなくて済むよ。……この前は君に気が付かれるくらいぼーっとしちゃってたけど」
男 「はい」
女 「今日からまた、いつも通りだから」
男 「そうですか。……今日のコーヒー、甘いですね」
女 「そう? 気のせいじゃない?」
男 「ども、お久しぶりです」
女 「あ、いらっしゃい。しばらく来ないからどうしたのかと思ったよ」
男 「ちょっと忙しくて。すいません」
女 「はい、コーヒー」
男 「ども」
女 「……今から話すのは私の独り言。コーヒー飲みながら黙って聴いて」
男 「……分かりました」
女 「つい最近、実家の親から手紙が送られてきてね。前回男君が来た日だね、そういえば。
それにね、お見合いしないかって書いてあったの」
男 「……」
女 「写真も入ってた。なんだかもう親はお見合いは決定、みたいな感じだったけどね。
断ろうって思ってたけど、気が付いたら実家に帰ってた」
女 「結局お見合いすることになったんだけどね。今の時代にお見合いも珍しいかもしれないけど……
相手の男性は良い人だった。相手が居なくて困ってたみたいな話事前に親からされたけど、
何でこの人が? って感じの」
男 「……」
女 「でね、二人きりで色々話したんだ。結構楽しかったよ。色々面白い話してくれたし。
こっちで喫茶店開いてるって言ったけど、結婚した後も続けても良いって言ってくれた」
女 「実家に帰って一晩考えた。……結局断っちゃったよ」
男 「……なん、で?」
女 「なんでだろう? 自分でも分からないよ。でもね、色々考えてたら、君の顔が浮かんできてね」
男 「俺……ですか?」
女 「そう。なんか捨てられたような、情けない顔の君が。それ見たらなぜか今のまま続けたいって気持ちが
強くなって。あの人は喫茶店続けてもいいって言ってくれたのに、なんでだろうね」
男 「……すいません」
女 「何で君が謝るの。私が勝手に思って勝手に断っただけだよ。むしろ君には心配かけちゃったみたいだから」
男 「……俺が手紙見たの知ってたんですか?」
女 「あの日、君の目に届くところに手紙置きっぱなしにしちゃったからね。その後のあの態度で、しかも来なくなっちゃった。
いくら何でも気が付くよ」
男 「……ごめんなさい」
女 「だから、謝らないの。謝るのはこっちの方なんだから。……悪かったね、心配かけて」
男 「……いえ。もうここでコーヒー飲めなくなるんじゃないかって思って」
女 「お客さんが一人でも居れば続けるよ。君一人でもね」
男 「絶対、毎日来ますよ」
女 「そうしてもらえるとこっちも辞めなくて済むよ。……この前は君に気が付かれるくらいぼーっとしちゃってたけど」
男 「はい」
女 「今日からまた、いつも通りだから」
男 「そうですか。……今日のコーヒー、甘いですね」
女 「そう? 気のせいじゃない?」
男 「まいど。冷えますね今日は」
女 「そう? 店からあんまり出ないから分からないよ」
男 「引きこもr」
女 「何か言ったかい?」
男 「いーえ何も。あ、今日は違うの頼みますよ」
女 「なんでそういう我がままを言うかな君は。もう淹れはじめちゃったよ」
男 「我がままって。最初に言わない俺も悪かったですけど」
女 「しょうがない、これは私が飲むよ。で、何がいいの? 水?」
男 「なんで更にランクダウンするんですか。ネルドリップで淹れたコーヒーが飲みたくて」
女 「……何で見た?」
男 「……昨日テレビで」
女 「はぁ」
男 「ため息つかなくても。メニューにありましたっけ?」
女 「メニューにはないけどね。道具はあるから作ってあげるよ」
男 「やった。どんな味になるんだろ」
女 「(やっぱりあれ見てたんだ。練習しておいて良かったよ。ネルドリップなんてしばらくやってなかったから……)」
女 「そう? 店からあんまり出ないから分からないよ」
男 「引きこもr」
女 「何か言ったかい?」
男 「いーえ何も。あ、今日は違うの頼みますよ」
女 「なんでそういう我がままを言うかな君は。もう淹れはじめちゃったよ」
男 「我がままって。最初に言わない俺も悪かったですけど」
女 「しょうがない、これは私が飲むよ。で、何がいいの? 水?」
男 「なんで更にランクダウンするんですか。ネルドリップで淹れたコーヒーが飲みたくて」
女 「……何で見た?」
男 「……昨日テレビで」
女 「はぁ」
男 「ため息つかなくても。メニューにありましたっけ?」
女 「メニューにはないけどね。道具はあるから作ってあげるよ」
男 「やった。どんな味になるんだろ」
女 「(やっぱりあれ見てたんだ。練習しておいて良かったよ。ネルドリップなんてしばらくやってなかったから……)」
友 「な、ここのコーヒー美味くね?」
男 「うん……(なんかただ濃く淹れてあるだけみたいな感じだな)」
友 「しかも、砂糖とミルクだけじゃなくて、シナモンとかキャラメルシロップとか無料で入れ放題」
男 「へぇ……(そんなに入れたらコーヒーの味分からなくなっちゃうだろ)」
友 「結構人気あるからいつも人いっぱいいてにぎやかだし。あんまり静かだと息が詰まるんだよなぁ」
男 「(にぎやかじゃなくてうるさいって言うだろこういうのは)」
男 「うん……(なんかただ濃く淹れてあるだけみたいな感じだな)」
友 「しかも、砂糖とミルクだけじゃなくて、シナモンとかキャラメルシロップとか無料で入れ放題」
男 「へぇ……(そんなに入れたらコーヒーの味分からなくなっちゃうだろ)」
友 「結構人気あるからいつも人いっぱいいてにぎやかだし。あんまり静かだと息が詰まるんだよなぁ」
男 「(にぎやかじゃなくてうるさいって言うだろこういうのは)」
男 「ここに来るようになって考え方変わりましたよ。通う前ならああいう店の方が好きだったのに」
女 「つまり、ここはコーヒー薄く出してトッピングサービスもなく、人気がないから人も居ないと言いたい訳だ」
男 「なんでそうなるんですか。あ、ちょっと、まだ飲んでますってそれ。え? 何始めるんですか?」
女 「濃く入れたのが飲みたいようだから、エスプレッソ淹れてあげるよ。もちろんブラックで飲むように」
男 「いや、待ってくださいよ。無理ですってそれ。凄い苦いやつでしょそれ」
女 「全部飲むまで帰さないよ」
男 「(それはちょっと嬉しいかもしれない)」
女 「つまり、ここはコーヒー薄く出してトッピングサービスもなく、人気がないから人も居ないと言いたい訳だ」
男 「なんでそうなるんですか。あ、ちょっと、まだ飲んでますってそれ。え? 何始めるんですか?」
女 「濃く入れたのが飲みたいようだから、エスプレッソ淹れてあげるよ。もちろんブラックで飲むように」
男 「いや、待ってくださいよ。無理ですってそれ。凄い苦いやつでしょそれ」
女 「全部飲むまで帰さないよ」
男 「(それはちょっと嬉しいかもしれない)」
男 「そろそろクリスマスですね」
女 「そうだねぇ。あの時期にやるイルミネーション止めたらどれくらいCO2削減に繋がるんだろうねぇ」
男 「思考までブラックですよ。いいじゃないですか、お祭りみたいなもんですよ」
女 「ああいう流行ものに乗るのって嫌いでね」
男 「……クリスマスって流行ものですかね……?」
女 「まぁ何にせよクリスマスだろうがイヴだろうがいつも通り店は開くよ」
男 「らしいなぁ」
女 「今ちょっとカチンと来たね」
男 「何でですか! あ、また飲んでる途中なのに取上げられた」
女 「最近、一番苦いコーヒーの入れ方を思いついてね」
男 「なんかえらいたくさんコーヒー入れてないですか? ちょ、そんなに使ったら絶対苦くて飲めn」
女 「これにお湯じゃなくて、既に別に淹れてあったコーヒーを注ぐと」
男 「ちょっと本当に待ってくださいよ、それ本当に飲み物ですか? てか俺それのお金は払いませんからね」
女 「払わなくてもいいよ。飲んでくれれば。ほらで来た。はい、どうぞ」
男 「く、黒すぎる……。飲めるのかこれ? ……!!!!!!」
女 「あははは、喜んでくれて何よりだよ。しょうがないから水はサービスであげよう」
男 「(し、死ぬかと思った……)」
女 「そうだねぇ。あの時期にやるイルミネーション止めたらどれくらいCO2削減に繋がるんだろうねぇ」
男 「思考までブラックですよ。いいじゃないですか、お祭りみたいなもんですよ」
女 「ああいう流行ものに乗るのって嫌いでね」
男 「……クリスマスって流行ものですかね……?」
女 「まぁ何にせよクリスマスだろうがイヴだろうがいつも通り店は開くよ」
男 「らしいなぁ」
女 「今ちょっとカチンと来たね」
男 「何でですか! あ、また飲んでる途中なのに取上げられた」
女 「最近、一番苦いコーヒーの入れ方を思いついてね」
男 「なんかえらいたくさんコーヒー入れてないですか? ちょ、そんなに使ったら絶対苦くて飲めn」
女 「これにお湯じゃなくて、既に別に淹れてあったコーヒーを注ぐと」
男 「ちょっと本当に待ってくださいよ、それ本当に飲み物ですか? てか俺それのお金は払いませんからね」
女 「払わなくてもいいよ。飲んでくれれば。ほらで来た。はい、どうぞ」
男 「く、黒すぎる……。飲めるのかこれ? ……!!!!!!」
女 「あははは、喜んでくれて何よりだよ。しょうがないから水はサービスであげよう」
男 「(し、死ぬかと思った……)」
男 「あー、寒い寒い。早くあの店でコーヒー飲んで……あれ?」
男 「……店が、無い。……そんな」
男 「女さん、先週何も言ってなかったじゃないですか……」
女 「あれ? 男君何してんの?」
男 「……女さん、あれ? でもお店が」
女 「君は先週帰り際に何を聞いてたんだい? 引越しするって言ったでしょ」
男 「だって先週は何も……そういえば途中から店に居た記憶がない」
女 「途中って、あの苦いコーヒー飲んだ後から?」
男 「……そうだ! そうですよ、その後から朝起きるまで記憶が無かったんですよ!」
女 「いやぁ、あれ飲んだあと君なんか様子がおかしくなっちゃってさ。目の焦点が合ってないっていうか」
男 「そりゃあんなの飲まされたら……」
女 「まさか記憶なくすなんて思わなかったから、ごめんごめん。でも一応家までは送り届けたよ」
男 「俺は一人暮らしでよかったですよ」
女 「全くだね。ベッドまで運んであげた私の上に覆いかぶさって寝ちゃった所見られる事になるからね」
男 「……俺、そんなことしました?」
女 「したというか、ベッドに寝せる前に倒れこんできちゃって、支え切れなくて」
男 「えーと、覚えてないけどごめんなさい」
女 「原因は私だからね。その後私を抱き枕にして1時間も離さなかった事も許してあげるよ」
男 「(そ、そんなおいしい体験をしたのか俺の体は……///)」
男 「……店が、無い。……そんな」
男 「女さん、先週何も言ってなかったじゃないですか……」
女 「あれ? 男君何してんの?」
男 「……女さん、あれ? でもお店が」
女 「君は先週帰り際に何を聞いてたんだい? 引越しするって言ったでしょ」
男 「だって先週は何も……そういえば途中から店に居た記憶がない」
女 「途中って、あの苦いコーヒー飲んだ後から?」
男 「……そうだ! そうですよ、その後から朝起きるまで記憶が無かったんですよ!」
女 「いやぁ、あれ飲んだあと君なんか様子がおかしくなっちゃってさ。目の焦点が合ってないっていうか」
男 「そりゃあんなの飲まされたら……」
女 「まさか記憶なくすなんて思わなかったから、ごめんごめん。でも一応家までは送り届けたよ」
男 「俺は一人暮らしでよかったですよ」
女 「全くだね。ベッドまで運んであげた私の上に覆いかぶさって寝ちゃった所見られる事になるからね」
男 「……俺、そんなことしました?」
女 「したというか、ベッドに寝せる前に倒れこんできちゃって、支え切れなくて」
男 「えーと、覚えてないけどごめんなさい」
女 「原因は私だからね。その後私を抱き枕にして1時間も離さなかった事も許してあげるよ」
男 「(そ、そんなおいしい体験をしたのか俺の体は……///)」
女 「この前のアレ。ちょっと私も飲んでみたんだけど」
男 「アレって二重ドリップですか? 俺はもう飲みませんよ!」
女 「そこまで怯えなくてもいいよ、飲ませないから。で、アレね」
男 「何ですか?」
女 「もうちょっと、改善の余地があると思ったんだ」
男 「(なんだか嫌な予感が)」
女 「あれのエスプレッソバージョンを」
男 「じゃ俺帰りますね! それじゃ!」
女 「どこに行くんだい? 一緒に飲んでみようよ」
男 「飲ませないって言ったじゃないかぁ! あ、ドア開かない!」
女 「ほら、こうやってエスプレッソをもう一回直火式のエスプレッソメーカーに入れると」
男 「嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
男 「アレって二重ドリップですか? 俺はもう飲みませんよ!」
女 「そこまで怯えなくてもいいよ、飲ませないから。で、アレね」
男 「何ですか?」
女 「もうちょっと、改善の余地があると思ったんだ」
男 「(なんだか嫌な予感が)」
女 「あれのエスプレッソバージョンを」
男 「じゃ俺帰りますね! それじゃ!」
女 「どこに行くんだい? 一緒に飲んでみようよ」
男 「飲ませないって言ったじゃないかぁ! あ、ドア開かない!」
女 「ほら、こうやってエスプレッソをもう一回直火式のエスプレッソメーカーに入れると」
男 「嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
男 「まいどどーも。お邪魔しますよ」
女 「君は本当に邪魔だから困る」
男 「……最近ツッコミ厳しくないですか?」
女 「私は漫才をしているつもりはないよ。はい、いつもの水」
男 「いや、コーヒー出してくださいよ」
女 「全く、喫茶店でコーヒーを頼むなんて」
男 「それが普通ですって」
女 「それにしても暇だ。店閉めて散歩にでも行こうかな」
男 「俺居ます、超居ます。無視しないでお願い」
女 「なんだいたの。……君も来るかい? 散歩」
男 「え? いやだって今コーヒー飲みに来たばっかりなのに」
女 「水筒に暖かいコーヒー入れて、たまには外で飲もう。はいこれ」
男 「何で既に準備してあるんですか。でも、たまには良いですね」
女 「よし。じゃぁ行こうか」
男 「(これってデート……)」
女 「君は本当に邪魔だから困る」
男 「……最近ツッコミ厳しくないですか?」
女 「私は漫才をしているつもりはないよ。はい、いつもの水」
男 「いや、コーヒー出してくださいよ」
女 「全く、喫茶店でコーヒーを頼むなんて」
男 「それが普通ですって」
女 「それにしても暇だ。店閉めて散歩にでも行こうかな」
男 「俺居ます、超居ます。無視しないでお願い」
女 「なんだいたの。……君も来るかい? 散歩」
男 「え? いやだって今コーヒー飲みに来たばっかりなのに」
女 「水筒に暖かいコーヒー入れて、たまには外で飲もう。はいこれ」
男 「何で既に準備してあるんですか。でも、たまには良いですね」
女 「よし。じゃぁ行こうか」
男 「(これってデート……)」
女 「日差しが暖かいから外も暖かいと思ったけど、結構寒いね」
男 「これだから引きこもりは」
女 「何か言ったかい?」
男 「痛い痛い! 耳、耳が取れる! それにしても、女さんのスカート姿ってなんだか珍しいですね」
女 「それは私が女っぽくないと言っている訳だね」
男 「そうじゃないですって。だから痛い痛い! 耳だけ攻めないで!」
女 「外で飲むコーヒーもまた違った味わいがあるね」
男 「キャンプの時とかに食べるレトルトカレーが美味しいのと同じ感じですかね」
女 「私のコーヒーがレトルトカレーと同類だと」
男 「ごめんなさい今のはちょっと失言でしたああああイタイイタイイタイ頭ぐりぐりやめて!」
女 「しょうがないな。そんなに気持ち良いなら膝枕してあげるよ」
男 「膝枕は嬉しいけど頭ぐりぐりイタイイタイ辞めて割れる!」
男 「これだから引きこもりは」
女 「何か言ったかい?」
男 「痛い痛い! 耳、耳が取れる! それにしても、女さんのスカート姿ってなんだか珍しいですね」
女 「それは私が女っぽくないと言っている訳だね」
男 「そうじゃないですって。だから痛い痛い! 耳だけ攻めないで!」
女 「外で飲むコーヒーもまた違った味わいがあるね」
男 「キャンプの時とかに食べるレトルトカレーが美味しいのと同じ感じですかね」
女 「私のコーヒーがレトルトカレーと同類だと」
男 「ごめんなさい今のはちょっと失言でしたああああイタイイタイイタイ頭ぐりぐりやめて!」
女 「しょうがないな。そんなに気持ち良いなら膝枕してあげるよ」
男 「膝枕は嬉しいけど頭ぐりぐりイタイイタイ辞めて割れる!」
男 「そういえば、何で女さんの店ってコーヒーブラックだけなんですか?」
女 「ブラックの方がコーヒー本来の味が分かるから……っていつも言ってるじゃないか」
男 「いや、それは分かるんですけどね。経営的に考えたらそれって厳しくないかなぁって」
女 「……」
男 「すいません、なんだか生意気な事言っちゃって。どうしても気になってたものですから」
女 「私がコーヒーを好きになるきっかけになった人がいてね」
男 「……」
女 「毎日その人の所に通ったよ。当時は缶コーヒーも苦くて飲めなかったくらいのお子様だったけどね」
男 「……彼氏、ですか」
女 「ふふ、気になる?」
男 「……」
女 「違うよ。残念ながら恋人じゃない。でも憧れの人だったことは確かだね。コーヒーに対する知識も情熱も凄かった」
男 「その人にコーヒーの淹れ方を?」
女 「そうだね。基本的な部分はその人に教わったかな。で、その人がブラックしか飲まなくてね」
男 「それもそのまま引き継いだんですか」
女 「というよりも、気が付いたら私もブラックでしか飲まなくなっていた、と言ったほうが正しいかな」
男 「……それで、その人は今は?」
女 「さぁ? ある日いなくなったよ。今何をしてるんだろう」
男 「……」
女 「だから、あの人がふらっと現れても分かるように、あの人オリジナルブレンドの名前を店名にして、店を開いたんだ」
男 「そう、だったんですか……。知りませんでした」
女 「今まで話したことがなかったよ。話すのは君が初めてだ」
男 「……なんだか、複雑な気分です」
女 「ブラックの方がコーヒー本来の味が分かるから……っていつも言ってるじゃないか」
男 「いや、それは分かるんですけどね。経営的に考えたらそれって厳しくないかなぁって」
女 「……」
男 「すいません、なんだか生意気な事言っちゃって。どうしても気になってたものですから」
女 「私がコーヒーを好きになるきっかけになった人がいてね」
男 「……」
女 「毎日その人の所に通ったよ。当時は缶コーヒーも苦くて飲めなかったくらいのお子様だったけどね」
男 「……彼氏、ですか」
女 「ふふ、気になる?」
男 「……」
女 「違うよ。残念ながら恋人じゃない。でも憧れの人だったことは確かだね。コーヒーに対する知識も情熱も凄かった」
男 「その人にコーヒーの淹れ方を?」
女 「そうだね。基本的な部分はその人に教わったかな。で、その人がブラックしか飲まなくてね」
男 「それもそのまま引き継いだんですか」
女 「というよりも、気が付いたら私もブラックでしか飲まなくなっていた、と言ったほうが正しいかな」
男 「……それで、その人は今は?」
女 「さぁ? ある日いなくなったよ。今何をしてるんだろう」
男 「……」
女 「だから、あの人がふらっと現れても分かるように、あの人オリジナルブレンドの名前を店名にして、店を開いたんだ」
男 「そう、だったんですか……。知りませんでした」
女 「今まで話したことがなかったよ。話すのは君が初めてだ」
男 「……なんだか、複雑な気分です」
男 「もし、その人が現れたら、どうするんですか?」
女 「考えもしなかったな。やっぱり心の底ではもう会えないと思っていたんだろうね」
男 「……お店、やめちゃうんですか?」
女 「……辞めないと思うよ。お客さんとして来たその人に私の作ったコーヒーを飲んでもらって、
上手になったとかまだまだだとか感想言ってもらって。昔の話で盛り上がって。
『じゃ、またどこかで』って分かれるんじゃないかな」
男 「それだけで、良いんですか?」
女 「うん、そういう人だからね、あの人も。そして私も」
男 「そうですか……」
女 「さ、こんな寒いベンチでいつまでも膝枕してると私も君も風邪を引いてしまうよ」
男 「……そうだった、女さんに拷問されてる途中だったんだ」
女 「君の中で女性に膝枕されるのは拷問って言うのかい?」
男 「いえ、そっちではなくて」
女 「コーヒーも冷めてしまった。店で暖かいコーヒーを飲もうか」
男 「そうですね。それ飲んで今日は帰りますよ」
女 「考えもしなかったな。やっぱり心の底ではもう会えないと思っていたんだろうね」
男 「……お店、やめちゃうんですか?」
女 「……辞めないと思うよ。お客さんとして来たその人に私の作ったコーヒーを飲んでもらって、
上手になったとかまだまだだとか感想言ってもらって。昔の話で盛り上がって。
『じゃ、またどこかで』って分かれるんじゃないかな」
男 「それだけで、良いんですか?」
女 「うん、そういう人だからね、あの人も。そして私も」
男 「そうですか……」
女 「さ、こんな寒いベンチでいつまでも膝枕してると私も君も風邪を引いてしまうよ」
男 「……そうだった、女さんに拷問されてる途中だったんだ」
女 「君の中で女性に膝枕されるのは拷問って言うのかい?」
男 「いえ、そっちではなくて」
女 「コーヒーも冷めてしまった。店で暖かいコーヒーを飲もうか」
男 「そうですね。それ飲んで今日は帰りますよ」
男 「……なんだか、すっきりしたようなしないような、複雑な気分だ」
女 「ん? 何か言ったかい?」
男 「いいえ、何も」
女 「ん? 何か言ったかい?」
男 「いいえ、何も」
男 「店番、ですか?」
女 「そう、店番。とはいってもコーヒー淹れたりはしなくてもいいよ」
男 「何か来るんですか?」
女 「そう。お客さんから頼まれてた珍しい豆が今日届くんだけど、あいにく今日は午後から用事があってね」
男 「不在票入れてきますから後から取りに行くとか」
女 「それだと下手すると明日になってしまう。今日のうちに色々やっておきたいからね」
男 「お客さんが来たらどうするんですか?」
女 「事情話してお引取り願うか、作り置きのコーヒーで良いって言うならそれ出すか。君に任せるよ」
男 「はぁ。分かりました」
女 「そう、店番。とはいってもコーヒー淹れたりはしなくてもいいよ」
男 「何か来るんですか?」
女 「そう。お客さんから頼まれてた珍しい豆が今日届くんだけど、あいにく今日は午後から用事があってね」
男 「不在票入れてきますから後から取りに行くとか」
女 「それだと下手すると明日になってしまう。今日のうちに色々やっておきたいからね」
男 「お客さんが来たらどうするんですか?」
女 「事情話してお引取り願うか、作り置きのコーヒーで良いって言うならそれ出すか。君に任せるよ」
男 「はぁ。分かりました」
男 「とは言ってもこの店、俺以外の客見たこと無いんだよな」
客 「あ、今日はやってるね。……あれ?」
男 「いらっしゃいませ。あいにく本日店主は不在でして」
客 「そうですか。せっかく開いていたのに残念だ……」
男 「店主が作り置きしていったコーヒーでしたらありますけど」
客 「本当ですか! いやぁ、来たかいがありましたよ」
男 「はい、こちらです。……そんなに有名ですか? このお店」
客 「有名もなにも、町で一番美味しいブラックコーヒーが飲める店で有名なんですよ」
男 「(し、知らなかった……)」
客 「これ、持ち帰りたいんですけど、いいですか?」
男 「はい、結構たくさんありますから良いですよ」
客 「やった! はい、これお代です」
男 「ありがとうございました~」
客 「あ、今日はやってるね。……あれ?」
男 「いらっしゃいませ。あいにく本日店主は不在でして」
客 「そうですか。せっかく開いていたのに残念だ……」
男 「店主が作り置きしていったコーヒーでしたらありますけど」
客 「本当ですか! いやぁ、来たかいがありましたよ」
男 「はい、こちらです。……そんなに有名ですか? このお店」
客 「有名もなにも、町で一番美味しいブラックコーヒーが飲める店で有名なんですよ」
男 「(し、知らなかった……)」
客 「これ、持ち帰りたいんですけど、いいですか?」
男 「はい、結構たくさんありますから良いですよ」
客 「やった! はい、これお代です」
男 「ありがとうございました~」
男 「なんだか意外な事実を知ってしまったような……」
客 「また来るよ。マスターによろしく!」
男 「ありがとうございました。……なんだかお客さん多いな。あの人で20人目だぞ」
男 「何で俺が来るときは暇そうなんだろう……」
配 「こんにちは~。宅急便です~」
男 「はい。どうもご苦労様です」
配 「こちらにはんこかサインお願いします」
男 「はい」
配 「いやぁ、開いていて良かった。このお店、いつもこの時間は閉店ですからね」
男 「え? そうなんですか?」
配 「えぇ。ご存知なかったですか? 中にお客さんはいる見たいなんですけど、閉まってるんです。
ご家族かご友人か、特別なお客さんが来ているとか噂で聞いたことがありますけど」
男 「そんなに有名ですか? このお店」
宅 「結構話には聞きますよ。雑誌とかの取材も結構来るみたいですけど、全部断ってるとか」
男 「へぇ……」
宅 「と、すいません長々と。はい、こちら荷物になりますんで。ありがとうございました~」
男 「はい、どうも……」
男 「ありがとうございました。……なんだかお客さん多いな。あの人で20人目だぞ」
男 「何で俺が来るときは暇そうなんだろう……」
配 「こんにちは~。宅急便です~」
男 「はい。どうもご苦労様です」
配 「こちらにはんこかサインお願いします」
男 「はい」
配 「いやぁ、開いていて良かった。このお店、いつもこの時間は閉店ですからね」
男 「え? そうなんですか?」
配 「えぇ。ご存知なかったですか? 中にお客さんはいる見たいなんですけど、閉まってるんです。
ご家族かご友人か、特別なお客さんが来ているとか噂で聞いたことがありますけど」
男 「そんなに有名ですか? このお店」
宅 「結構話には聞きますよ。雑誌とかの取材も結構来るみたいですけど、全部断ってるとか」
男 「へぇ……」
宅 「と、すいません長々と。はい、こちら荷物になりますんで。ありがとうございました~」
男 「はい、どうも……」
男 「特別なお客さん……」
男 「そういえば荷物受け取った後どうすれば良いか聞いてないぞ」
女 「やぁ。留守番お疲れ様」
男 「丁度良かった。今豆届きましたよ」
女 「なんだ。もうちょっと用事早く済ませれば留守番頼まなくても良かったね」
男 「冷蔵庫にでも入れたほうが良いか丁度迷ってた所です」
女 「言っていかなかったからね、そういえば。とりあえずすぐに使うからそこに置いてくれる?」
男 「はい。……忙しくなりそうなんで俺はこれで」
女 「まぁまぁ。留守番のお礼に一杯サービスしよう。すぐに淹れるからそれ飲んでいきなさい」
男 「すいません。……結構お客さん来るんですね、このお店」
女 「そうだろう? なんで君が来る時間帯は誰もこないんだろうねぇ」
男 「ぷっ……ふふふ」
女 「なんだい気持ち悪い。子供が見たら泣くよ、その不気味な笑い」
男 「そ、そこまで言いますか」
女 「お客さんに何か聞いたね、その様子だと」
男 「秘密にしておきましょう」
女 「そうかい。……はい、今日のお礼だ」
男 「ども」
男 「(これがこの町で一番美味しいブラックコーヒーだったのか……)」
女 「今日はやけに神妙な顔で飲むね。いつもはスポーツドリンク飲むみたいに流し込むのに」
男 「今日は神妙に飲みたい気分なんですよ」
女 「へぇ。やれやれ、12月だってのに明日は真夏日になりそうだね」
男 「どういう意味ですかそれは……」
女 「やぁ。留守番お疲れ様」
男 「丁度良かった。今豆届きましたよ」
女 「なんだ。もうちょっと用事早く済ませれば留守番頼まなくても良かったね」
男 「冷蔵庫にでも入れたほうが良いか丁度迷ってた所です」
女 「言っていかなかったからね、そういえば。とりあえずすぐに使うからそこに置いてくれる?」
男 「はい。……忙しくなりそうなんで俺はこれで」
女 「まぁまぁ。留守番のお礼に一杯サービスしよう。すぐに淹れるからそれ飲んでいきなさい」
男 「すいません。……結構お客さん来るんですね、このお店」
女 「そうだろう? なんで君が来る時間帯は誰もこないんだろうねぇ」
男 「ぷっ……ふふふ」
女 「なんだい気持ち悪い。子供が見たら泣くよ、その不気味な笑い」
男 「そ、そこまで言いますか」
女 「お客さんに何か聞いたね、その様子だと」
男 「秘密にしておきましょう」
女 「そうかい。……はい、今日のお礼だ」
男 「ども」
男 「(これがこの町で一番美味しいブラックコーヒーだったのか……)」
女 「今日はやけに神妙な顔で飲むね。いつもはスポーツドリンク飲むみたいに流し込むのに」
男 「今日は神妙に飲みたい気分なんですよ」
女 「へぇ。やれやれ、12月だってのに明日は真夏日になりそうだね」
男 「どういう意味ですかそれは……」
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