1 被告は,原告に対し,7万1640円及びこれに対する平成22年6月1日から,支払済みの日が奇数月に属する場合はその月の前々月末日まで,支払済みの日が偶数月に属する場合はその月の前月末日まで,2か月当たり2%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
第1 請求の趣旨
主文同旨
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)
放送法及び日本放送協会
放送受信規約
ア 原告は,放送法に基づいて設置された法人であり,同法32条3項に基づき,総務大臣の認可を受けて,放送受信契約の内容を規定した日本放送協会放送受信規約(以下「本件規約」という。)を定めている。
イ 本件規約の概要は,別紙「日本放送協会放送受信規約概要」記載のとおりである。なお,以下において「期」とは,本件規約6条に定める2か月ごとの支払期間をいい,4月及び5月を第1期とし,以下第6期まで同様である。
(2)放送受信契約の締結
ア(ア)原告は,平成15年6月10日,被告との間で,カラーの放送受信契約を締結した(なお,カラー契約は,平成19年4月1日の規約改正により,同年10月1日をもって地上契約に変更されたが,カラー契約と地上契約の放送受信料額は同一である。以下,当該変更の前後を問わず,原告・被告間の放送受信契約を「本件契約」という。)。その際,被告の妻が,被告名で本件契約に係る放送受信契約書(以下「本件契約書」という。)に署名押印をした。
(イ)仮に,被告が主張するとおり,被告の妻が本件契約を締結したとしても,被告の妻は,本件契約の締結に関して,民法761条を根拠として,被告を代理する権限を有しており,被告の妻が本件契約書に被告の氏名を署名し,押印したのであるから,本件契約は原告・被告間において有効に成立した。
イ 平成17年12月1日における,本件契約の契約種別は,カラー,支払区分・支払コースは口座振替・毎期払であった。
(3)放送受信料の不払
ア 被告は,平成17年12月1日以降の放送受信料を支払わない。
イ 被告は,平成18年1月31日までに支払うべき平成17年度第5期の放送受信料を支払わないため,平成20年4月1日改正前の本件規約6条により,上記支払期限に支払うべき放送受信料から,訪問集金・毎期払の放送受信料額(月額1395円)が適用されることになった。
なお,平成20年4月1日の本件規約改正により,同年10月1日をもって支払区分のうち訪問集金は廃止され,同日以降に発生する毎期払の放送受信料は月額1345円に変更された。
(4)よって,原告は,被告に対し,本件契約に基づき,平成17年12月1日から平成20年9月30日まで(平成17年度第5期から平成20年度第3期まで)の34か月分については,訪問集金・毎期払(月額1395円)による放送受信料小計4万7430円及び平成20年10月1日から平成22年3月31日まで(平成20年度第4期から平成21年度第6期まで)の18か月分については,毎期払(月額1345円)による放送受信料小計2万4210円の合計7万1640円並びにこれに対する平成22年6月1日から,支払済みの日が奇数月に属する場合はその月の前々月末日まで,支払済みの日が偶数月に属する場合はその月の前月末日まで,約定の2か月当たり2%の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否及び被告の主張
(1)請求原因(2)は否認する。
被告は,自分自身で原告と本件契約を締結した覚えはない。
本件契約は,被告の妻が勝手に契約したものであり,既払いの放送受信料の振り込みも被告の妻が行った。
(2)被告は,〔1〕被告が原告のテレビ放送を一切視聴していないこと,〔2〕原告は公共放送であるにもかかわらず原告の組織・職員に問題があること(受信料を不正に流用していること),〔3〕現在,被告には,放送受信料を支払うだけの経済的な余裕がないこと,などの各理由から,原告に対し,本件契約に基づく放送受信料の支払を拒絶する。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因(1)及び同(3)は,証拠(甲2)及び弁論の全趣旨から,それぞれ認められる。
2 請求原因(2)について
(1)証拠(甲1)及び弁論の全趣旨からすれば,被告の妻が,本件契約書に,受信契約者として被告の氏名を自署し,押印した事実が認められる。
(2)そこで,被告の妻による上記行為をもって,本件契約が原告・被告間において成立したと認められるかについて,以下で検討する。
(3)ア 民法761条は,「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは,他の一方は,これによって生じた債務について,連帯してその責に任ずる。」として,その明文上は,単に夫婦の日常の家事に関する法律行為の効果,特にその責任のみについて規定しているにすぎないけれども,同条は,その実質においては,さらに,右のような効果の生じる前提として,夫婦は相互に日常に家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である(
最高裁昭和44年12月18日判決・民集23巻12号2476頁参照)。
イ そして,ここでいう「日常の家事に関する法律行為」とは,夫婦の共同生活を営む上で通常必要な法律行為を指すものであるところ,現代社会において,テレビ番組の視聴は,日常生活に必要な情報を収集するため又は相当な範囲内の娯楽として,夫婦の共同生活を営む上で通常必要なものといえるから,放送受信契約の締結は,上記「日常の家事に関する法律行為」に該当するというべきである。
ウ そうすると,本件においても,本件契約の締結は,日常の家事に関する法律行為に当たるとして,被告の妻は,本件契約書の作成当時,本件契約の締結につき,被告を代理する権限を有していたと認められる。
エ そして,前記認定事実のとおり,被告の妻は,受信契約者として被告の氏名を自署し,押印した事実が認められるから,原告と被告の妻との間において,被告のためにすることを示して,本件契約が締結されたものと認められるというべきである。
(4)したがって,原告と被告との間には,本件契約が成立したものと認められる。
3 よって,請求原因事実はすべて認められる。
4 その余の被告の主張について
(1)被告は,原告に対して本件契約に基づく放送受信料の支払を拒絶する理由として,〔1〕被告が原告のテレビ放送を一切視聴していないこと,〔2〕原告は公共放送であるにもかかわらず原告の組織・職員に問題があること(受信料を不正に流用していること),〔3〕現在,被告には,放送受信料を支払うだけの経済的な余裕がないこと,などを挙げる。
被告は,これらの主張の法的位置づけについて明確にしていないが,原告の請求に対する抗弁となりうるかについて,以下検討する。
(2)まず,〔1〕の点については,放送法及び本件規約に照らして,原告の放送を受信することのできる受信設備を設置した者であれば,原告のテレビ放送を視聴しているか否かにかかわらず放送受信料を支払う義務があると認められること(本件規約5条1項。なお,本件規約1条1項及び2項,放送法32条参照。)から,被告が原告に対して本件契約に基づく放送受信料の支払を拒絶することのできる理由とはならない。
また,〔2〕及び〔3〕の点についても,仮に被告の主張を前提とするとしても,被告が原告に対して本件契約に基づく放送受信料の支払を拒絶することのできる法的根拠となりうるものではないというべきである。
その他,被告は,原告に対して本件契約に基づく放送受信料の支払を拒絶する理由として,るる主張するが,いずれもその支払を拒絶することのできる法的根拠とは認められない。
(3)したがって,被告の上記各指摘事実は,原告の請求に対する抗弁とはならない。
第4 結論
以上の次第で,原告の請求は,理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第2民事部
裁判官 圓道至剛