公訴事実
被告人は平成21年9月18日午後10時07分ころ名古屋市昭和区山里町1000番地先路上において、山田花子(当19)に対し殺意をもってその胸部,腰部及び背部を所携のペテナイフ(刃体の長さ約12.3㎝。平成21年押第30号の1)で数回突き刺し,よって,同日午後10時39分ころ,同県名古屋市内の病院において,同人を前胸部盲管刺創による心臓損傷に伴う出血性ショックにより死亡させて殺害した。
第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,前記路上において,前記ペテナイフ1丁を携帯した。
なお,被告人は,犯行後直ちに110番通報し,愛知県昭和警察署に赴いて,同警察署司法警察員山田一朗に自首している。
罪名及び罰条
殺人 刑法199条
銃刀法違反 32条4号
冒頭陳述
被告人の経歴など
被告人は昭和40年1月3日に北海道札幌市において出生し、昭和58年札幌市立岩岡高等学校を卒業して上京し「文化学習教材」に就職するが、まもなく同社を辞めてパチンコ店の店員となり、その後は教材販売業者、製パン会社、土木作業員を転々としていたが、平成20年4月ころからは腎臓を患い定職についていない。
被害者山田花子は平成2年9月25日に出生し、名古屋市昭和区いりなか1-1-1で両親と3人で暮らしていた。
犯行にいたる経緯
肝臓を患った被告人は、仕事につくこともできず、サラ金・闇金からの借金や、入質あるいはパチンコで生活を稼ぐなどして生活いていた。しかし結局平成21年7月中旬ころ,多額の借金から逃れるため,当時暮らしていた東京を離れ,愛知県内で無為徒食の生活を始めた。が,いよいよ所持金が尽きてくると今後の身の振り方について思い悩み,自殺することも考えたものの実行できなかったことから,刑務所に入って生きてゆくほかない,人を殺せば確実に刑務所に入れるなどと考え,服役するために殺人を行うことを決意した。
犯行の状況
被告人は,平成21年9月18日午後3時ごろ刑務所に入るために殺人を犯すことを決意すると,手持ちのカッターナイフでは凶器として心許ないと考えて名古屋市昭和区青池1-1ホームセンター南山においいぇペテイナイフを購入し,犯行場所として人目に付きづらい場所を選択し,さらに,同日午後10時ころ自分よりも小柄な女性である被害者に目を付け、名古屋市昭和区山里町1000番地先路上において、被害者に対し胸部,腰部及び背部を所携のペテナイフ(刃体の長さ約12.3㎝。平成21年押第30号の1)で,「この野郎」,「死ね」などと怒鳴りながら,必死に抵抗する被害者を鋭利なペテナイフで手加減せずに数回にわたって繰り返し突き刺したことによって,同日午後10時39分ころ,同県名古屋市内の病院において,同人を前胸部盲管刺創による心臓損傷に伴う出血性ショックにより死亡させて殺害した。
被害者遺族陳述 求刑
うちの娘はまだ19歳。看護師を目指しながら勉学やアルバイトに励み,家族や友人らとの関係も良好で,充実した毎日を送っていました。事件当日も,普段どおりコンビニエンスストアでのアルバイトを終え,帰宅していたところ,突如として本件凶行に遭遇し,恐怖と苦痛の中で非業の死を遂げたのです。
娘が被った恐怖心や身体的苦痛を想像するだけで夜も寝られません。私は,怒りを抑えることが出来ませんし,かといってこの怒りをどこにぶつけたらいいのかもわからず,はっきり言って腸が煮えくりかえっています。
ましてや,看護師の道を選び,その上助産婦の資格も取ろうと頑張り,人の命を助ける仕事をしようとしていた娘がどうして命を奪われなければならないのですか。私も妻もやり場のない怒りで気持ちが休まることは一時もありません。1年後は成人式だったのに,何でこんなにも短い命で終わってしまったの,命を助ける看護師を目指していた娘が,なぜ,人に殺されなければならなかったの,と叫びたくなります。
被告人には極刑以外望む刑はないし極刑でも許されません。
弁護人陳述
公訴事実については争わない。
しかしながら被告人には次のような情状があるので、判決に際しては十分に斟酌されたい
1 被告人は生育環境において,実母が被告人の中学時代に自殺したり,その後実父が年若い外国人女性と再婚して家を追い出されるかたちになったなど,不遇ないし不安定な面がある。
2 被告人は腎臓を患い、仕事に就くこともできず生活苦のため、やむを得ず本件犯行におよんだこと。
3 本件の犯行様態からみれば、用意周到な計画的犯行というには余りにお粗末なものである。
4 被告人は前科がない。
5 被害者が一名
参考事件
平成16(わ)526・568 甲府地方裁判所 平成18年04月27日 量刑 無期懲役