ゴタゴタ続きの新日にまるでトドメを刺すように、ノアが三くだり半を突きつけた。
「もうかかわることはない」。
マット界のイニシアチブを握ったノアを仕切る仲田取締役が新日プロとの関係を洗いざらい告白しながら、絶縁を宣言したのだ。
一時は蜜月関係にあったノアと新日に微妙な亀裂が入ったのは昨年の5月のこと。
サイモン社長就任と時を同じくする。
それ以降は昨年のノア7・18東京ドーム大会で力皇猛と棚橋弘至のGHCヘビー級戦が行われただけだ。一年近くも関係が途絶えていた理由を仲田取締役はこう説明する。
「(新日との対抗戦には)日本テレビさんとテレビ朝日さんの間に覚書があり、いわゆるバーターがある。日テレ側にまだ解消されていないことがあるのにサイモン社長は就任会見で"ノアとやるつもりはない"とおっしゃった。日テレに対してウチの立場もない」
つまり、新日側にはノアに選手を派遣しなければならない約束が残っていたにもかかわらず、サイモン社長に一方的な白紙宣言を突きつけられたのだ。
この時点でノアは新体制になった新日プロに違和感を感じ、距離をとってきた。
そんな中、ゲームソフトを製作販売する新日プロの親会社ユークスが、ゲームソフトの次回作にノアを使いたいと打診してきたとか。
ノアは今年1月に発売された「レッスルキングダム」にも協力しているが、話を持ちかけられた時はまだユークスが新日プロを買収(昨年11月)する以前で、前回と今回では話が異なる。
「4~5日前に話があった。でも巨人の選手が中日新聞の仕事に協力することはないでしょう。ウチは辞退しました」。
ライバル団体に平気で協力を要請するユークスの姿勢に首をかしげながら、ノアは企業倫理を貫いて当然の判断を下した。
「前回はゲームの発売に合わせて(新日を)買収した幹事。(買収は)何も聞いてなかった。ユークスさんとは友好的に仕事をしてきたけど、前回はだまされたと思っている」。
そんなムードの中での今回の一件。新日、ユークスに対する不信感は一気に高まり、縁を切る決断につながった。
今の新日プロと対抗戦を行ってもメリットはあまりないという計算も含まれているのは言うまでもない。
「ウチは信用できる人と仕事をしていきたい。絶縁?サイモン社長に絶縁宣言をされたのはウチの方ですから」
一方、藤波とレスナーの問題が解決しないままノアに決別を言い渡された新日プロはまさに泣きっ面にハチ。
ユークスにとってもプロレスオールスター戦がウリの「レッスル――」に最大勢力・ノアを取り込めないのは大打撃になる。
新日プロはまたひとつ追い詰められた。
絶縁宣言の後に来るのは"新日潰し"だ。
「今後はゼロワンMAXや天龍さんがやるというWARとか、健介オフィスさん、FEGさんとかとやっていきたい」(仲田取締役)。
天龍源一郎や佐々木健介、大谷晋二郎やK-1の曙にボブ・サップ、そして今夏の復帰プランが進められている高山善廣らとゆくゆくはオールスター戦を行いたい意向だ。
この豪華メンバーなら、新日不在の影響など全くない。
東京ドームはおろか国立競技場でも勝負できそうだ。
もちろん夢物語ではない。ノア、ゼロワンMAX、高山堂、DDT、キングスロードなどのインディを加えたフロントの会合が昨年末に開催されており、仲田取締役も出席した。
具体的な活動の青写真こそ語られなかったものの、メジャー、インディの枠を超えた太いパイプが通っているという証しだろう。
ノアが「反新日」の旗を掲げたとなれば、この一大勢力が一致団結してノアの援護射撃に加わる可能性は非常に高い。
さらに"ノア派"には願ってもない援軍が合流しそうだ。PRIDEからHERO'sに移籍した桜庭和志だ。本人の希望もあって、ノア参戦が浮上している。
仲田取締役は「ありがたいことです。やりたい選手がいて見てみたいという人がいれば、やった方がいいかもしれない。もう少し早かったら桜庭対永源とか見れたのに…」とサクワールドを理解したうえで歓迎の意を示した。
桜庭も加われば、ノアはまさに鬼に金棒。
新日はますます厳しくなる。