象形文字について
最初に
象形文字(しょうけいもじ)とは、ものの形をかたどって描かれた文字からなる文字体系で、絵文字からの発展によって生まれたと考えられている。絵文字と象形文字との最大の違いは、文字が単語に結びつくか否かにある。
絵文字が文字と語の結びつきを欲せず、その絵によってなんらかの観念や文章を伝えようとしたものであるのに対し、象形文字は文が語に分析され、その語と文字とが一対の対応をなす表語文字の一種のことをいう。
象形文字では、文字はもっぱらそのかたどったものの意味を担うが、一般に表語文字では、それぞれの文字が具体的な事物にとどまらず語や形態素を表すことが多い (詳細は表語文字の項を参照)。
しかし、漢字における仮借、ヒエログリフなどでの表音的使用など必ずしも象形文字の特徴と一致するわけではないものもまとめて象形文字と呼ぶことが多い。
このような意味での象形文字としては、漢字、ヒエログリフ、楔形文字、インダス文字、トンパ文字などがある。
象形文字とは・・・具体的な物の形をかたどって作った文字表意文字(文字の一つ、一つが意味を表しているもの。その代表が漢字。)の一つで、絵文字などから発達しました。
古代エジプトや中国の古代文字などがそうです。
漢字の成り立ちや使い方を説明した六書(漢字の成り立ちや使い方を説明するための六種の分け方で、漢字の成り立ちを象形・指事・会意・形声の四種、用法を天注、仮借の二種に分類する。
中国、後漢の時代に許慎が説文解字という文書でとなえたもの)の一つです。
漢字の中で、物の形をかたどってきたものです。
象形文字といってもたくさんあるので次の三つに絞って話しを展開していきます。
トンパ文字・甲骨文字・ヒエログリフです。
この三つの象形文字は同じ文字というものでも視覚的にとても異なっています。
まずは、それぞれの文字の特徴と時代背景を調べていきたいと思います。
トンパ(東巴)文字 とは・・・
トンパ ( 東巴 ) 文字の特徴は、中国雲南省の納西 ( ナシ ) 族で現在まで使われ続けている世界唯一の生きている象形文字です。
象形文字としては、漢字の祖先である甲骨文字や、古代エジプトのヒエログリフが有名ですが、トンパ文字は一見してわかるように、より絵画的で素朴かつ愛敬のある形をしています。
たとえば、動作なら「人」という象形文字から派生している。
「転ぶ」なら人がそのまま横に倒れているさま、「話す」なら頭の部分から線が出て声を出す様子をあらわしています。
このように一つの主要な文字が元となって、それにポイントを加えた物があります。(それらは実際象形文字ではありません。トンパ文字に、表音文字を使うところがあり、象形文字以外の文字を使うこともありますが、象形文字を現在使われていることは事実です。)
トンパ文字の故郷は「麗江」です。
麗江( LIJIANG ) は雲南省の西北部に位置するナシ(納西)族の自治県です。
明代の街並の大研鎮老街、宋代や明代の建築が残る束河村、壁画で名高い白沙村はユネスコから世界文化遺産に指定されています。トンパとは(東巴)納西族が創り出し信仰する宗教、先祖崇拝と自然崇拝を基本とする納西族の原始宗教をもとに、チベットのボン教・仏教と中国の道教の影響を受けて形成され、東巴が祭る祭天、祭風、祭暑、祭丁巴什羅など 30 種あまりの民間に残る儀式によって伝えられてきました。
丁巴什羅を始祖とするが、特定の教義も寺院もなく、東巴は世襲するが、制度も組織も成立しません。万物霊長を信じ、悪霊(ツイ)、妖怪(ニュー)、悪魔(ドウ)など人間生活を脅かす多種の鬼神の存在も信じています。
東巴は農業、牧畜を行いながら、新築、出産、疾病、葬式、占トなど民衆の日常生活と深く関わり、禍を除くお祓いをしたりします。
専門の経典があり、この トンパ ( 東巴 ) 教の経典を書写 するのに用いたところから 「東巴文 ( トンパ文字 ) 」 と呼ばれました 。
つまりこのころの「東巴教」によって、東巴文化、トンパ文字という象形文字が誕生しました。
トンパ文字は納西(ナシ)族の「東巴(トンパ)」という階級の人々によって使われてきました。
厄除け、占い、祭典、死者の鎮魂儀式や医療活動などを行うトンパはナシ族から見れば「頼りがいのある存在」で、当然生活上ではナシ族に大きくかかわる重要人物でした。
トンパはたくさんの技術・知識をもっており、読経はもちろん絵画・工芸の技術も師から一対一で学んできました。
ただ、ナシ族もまた内部でわかれており、中には文字を読めないトンパもいます。
文字を読めないトンパは記憶のみに頼って物語(歴史)を暗誦しています。文字は物語を語る時に見るメモと同じなので、文字を知らないトンパも大体は知ることが出来ました。
甲骨文字(亀甲獣骨文字) とは・・・
殷墟から発見された、象形文字です。 19 世紀末にその存在が確認され、 4500 種あまりの文字のうち、半数ちかくが解読されています。 甲骨文字(正確に言うと亀甲獣骨文字)はいまのところ中国最古の文字であり、また、日本でもなじみの深い漢字の元となった文字でもあります。図形文字のように標識用に図案化された意図の強いものと比べ、占いに使う上で記述するために考案され、発展したために一定のリズム感があり、ある種の書風があるといった説も発表されています。亀の甲に穴をあけ、その部分に金火箸を当ててひびわれを作り、その形を元に吉凶を占い、その占いは何を占ったかを刻み込んだものが甲骨文字です。主に使われたのは海亀の甲ですが、他にも獣骨、特に牛の骨が使われたようです。この占いを「亀卜(きぼく)」または「卜(ぼく)」といいました。
甲骨文字は紀元前 17 世紀ごろから紀元前 11 世紀半ばにかけて黄河中流域を支配していた殷王朝の時に中国の最古の王朝とされる殷で殷民族の人々によって使われていました。殷民族の人々は信心深く、政治も典型的な神権政治で、何かを決定するときには必ず占いが行われました。神以外にも祖先の霊などが敬われ、彼らに対していけにえが捧げられたりしていました。当時の社会は王族・貴族が権力を持ち、奴隷や職人たちを支配していた。
甲骨文字は1899年偶然、国子監祭酒(学徳が高い人が選ばれる、学者として非常に
名誉のある職。)王懿栄の食客、劉鶚・字を鉄雲という人物が薬として買った竜骨(と言われた)に文字が刻んであることから発見されました。王懿栄が斉や櫓など、周代の遺跡が多い山東省出身であったことから、金石文(鼎や石碑など金石に刻まれた文字。)に詳しく、また劉鶚も金石文に関心を示していたことから、この竜骨に刻まれた文字は今まで知られている文字よりももっと古い文字ではなかろうかという事になりました。亀の腹の甲羅と牛の肩胛骨(獣骨)から、亀甲獣骨文字略して甲骨文字と呼ばれるようになりました。また一方山東省の骨董商人、范維卿という人物が河南省北部に古物を探しに出かけたときに文字の書かれた骨を見つけ、湖北巡撫の端方という人物に献上したとも言われています。このよう甲骨文字は殷時代から現代までに形を変えて存在してきました。
ヒエログリフ とは・・・
象形文字ヒエログリフは世界最古の象形文字でアルファベットの原点です。日本では聖刻(神聖)文字と言われています。名前の由来はギリシャ語のヒエロス ( 聖なる ) 、グリフェリン ( 彫る ) から来ています。また表意文字でもあり、表音文字でもあるヒエログリフは母音はなく、 全部子音 で表現していました。一つの文字がいくつかの意味をもち、同じ語句の中で、象形的、表音的、表意的になります。読み方は 横書き の場合、文中に表現されている人や動物の頭が向いている方向が文頭で、 縦書き の場合は文頭にある文字から読んでいきます。ヒエログリフは彫刻品に刻まれたり、パピルス(植物の一種)でできた紙に書かれたりしています。
ヒエログリフはエジプト初期の歴史 を記録するために作られた文字です。巨大なピラミッドやスフィンクスで有名な 古代エジプト王朝 で、今から 紀元前 3000 年~紀元前 30 年 にわたって使われていました。このヒエログリフが使われ始めた紀元前 3000 年はちょうどエジプト王朝が統一した年です。そして同時にエジプト文明が設立しました。しかし、エジプトがローマに滅ぼされた時、エジプトの都「アレクサンドリア」にあった大きな図書館が焼かれてしまったため、5世紀頃にはもう読み方がわからなくなっていました。文字を発見したのは 1799 年、解読することができたのは 1822 年。解読されるまでに 23 年の月日を費やしています。 ヒエログリフが解読できるようになったきっかけは、あの有名なロゼッタストーンです。ロゼッタストーンとは黒っぽい岩石で出来た記念碑で、縦 114cm× 横 72cm の大きさのものです。それには三段に分かれた文字が刻まれていて、上からヒエログリフ、デモティク(民衆文字)、古代ギリシア語の三種類が書かれていました。フランスの学者、 ジャン・フランソワ・シャンポリオン によって解読されることとなりました。
古代エジプト王朝は初めて王が王都として統一した土地で、都の名前は イティ・タァウィー ( 二つの支配者 ) とよばれていました。また、砂漠のイメージで有名なピラミッドやスフィンクスは既に存在していたころです。古代エジプト人は文字と知恵の神様であるトトがヒエログリフを自分たちに送ってくれた物だと思っていたようです。ヒエログリフを使っていたのは古代エジプト人です。古代エジプト人は泥レンガで家を建てていました。たいていは自分たちで食料を作り(自給自足)、足りない時は物々交換で手に入れていました。亜麻布や土器、アクセサリーや香水などの交換もしていたと言われています。 古代エジプト人は小作人、農民、職人、書記などの仕事に就いていて、貴族は少なかったようです。つまり他の象形文字のように一部の優れた人のみに使われていたというわけではありませんでした。
比較
象形文字は目で見たものをそのまま形で表して文字にしています。
三つの文字を比較してその違いや共通点から、文字の意味とまたイメージについて論じていく
ここで三つの象形文字の時代背景をもとにそれぞれを比較します。
三つの象形文字は中国・エジプトという場所からうみだされました。それぞれの場所で作り出されたこの象形文字という記号は似た部分もありますが、同じ象形文字と言っても全く異なる部分があります。
三つの文字を比較すると一番の違いはその文字を見たときの第一印象です。
トンパ文字はどちらかというと字というよりは絵です。甲骨文字は表意文字というよりも文字に近いです。ヒエログリフはトンパ文字と似ていますが、トンパ文字よりも簡素な絵という感じです。
また三つの文字を比べると、太陽や月は似ていますが、対応する文字がなかったり、全く違ったりします。このような違いは、住んでいる場所や身近な動物の種類の違いが関係していると考えられます。中国にらくだはいませんし、エジプトにパンダはいません。またその生活の仕方や環境が違うということも関係していると言えるかもしれません。
トンパ文字は中国の奥深く自然と共存してきました。どちらかというと自由な気質の環境です。そのため文字自体、とても自由で文字というよりは絵画と言ったほうが適するものです。まるびをおびた形で、その形を見ただけでどのような意味かがわかりやすくなっています。
甲骨文字は殷王朝のどちらかというと規律にしばられた時代にうまれたものです。人々は信心深く、祖先を祭りいけにえをささげるという環境の中での生活でした。また甲羅に書く為、甲骨文字は角ばっています。一目見るだけではその文字の意味がわからないものが多々あります。
ヒエログリフはトト、 好戦的で温和の性格といわれる神さまから与えられたと信じられていて、文字はやわらかい曲線でトンパ文字と同じように見ただけて意味がわかりやすい文字です。しかしあまりにも簡潔にかかれすぎていて意味がわかりにくいものもあります。
このように時代背景や環境の違いによって文字にも違いが現れます。しかし共通する部分もあります。文字の出所です。それぞれの文字が宗教から生まれています。
トンパはトンパ教の東巴という祭司から、甲骨文字は占いから、そしてヒエログリフはトトという神から与えられた文字だと言われています。
もう一つの共通点はその文字の役割です。それぞれの出来事を記録するために用いられてきました。例えばロゼッタストーンによってエジプトで盛んに行われていた動物崇拝の実態があきらかになりました。(トンパ文字は自然崇拝の実態・甲骨文字は中国最古の文字の情報や宗教)また生活の上で太陽、月などの世界共通のものは似ていました。このようにそれぞれの人、個人によっての違いが大きいということがわかります。同じ人間でも生活・文化の違いによって同じ文字を見ても感じることは異なります。太陽という一つの文字を見て、形は似ていても自然崇拝のトンパの人はその文字に特別な思いをもちます。しかし他の人から見ればただの太陽という文字です。目で見て同じ形でもそれを感じる脳では違う印象を持ちます。つまり同じ文字を見ても世界各国の人が同じ印象を持つというわけではないということです。
このように象形文字と一言でいってもとても奥が深く今回あげた三つの象形文字を一言ではくくれないと思いました。そしてその時代の人からみた文字と現代の私たちが見た象形文字は形は同じでも感じる感覚はまったく異なるということを知りました。現代使われているトンパ文字にしても現代と昔では感じ方が違うかもしれません。今回は私一人の感じた意見をのべただけなので偏った意見になりがちなので、世界の人々がそれぞれの文字を見てどう感じるか国の文化、自然などをもっとくわしく理解し論じる必要があります。
例えばこれは何でしょう?
葉っぱ・さつまいも・いろんなイメージが広がります。
しかし意味を言葉にするとイメージは定まってしまいます。
これはトンパ文字で口という意味です。
では次はこれです。
これはまた口でしょうか?
いいえこれはトンパ文字の葉っぱです。
例えば雨といわれてどちらかを選べといわれたらどちらを選びでしょうか?
私たちはおそらく上の図を指すでしょう。
しかし漢字をしらない人がみたら下の図を指すかもしれません。
このように象形文字はその時代その環境で生活していた人には理解しやすい文字ですが
まったく異なる環境の場合、未知の記号になります。
象形文字からわかるように、文字と一口に言っても、皆が同じイメージをもつわけではない。それぞれの環境・生活において文字のイメージは異なってくる。
私たちが普段生活しているうえで普通に使用している文字のイメージは私たち独特的なもので、その文字を知らない人からみたらまた異なるイメージを与える。
悪い意味をもった文字でもその意味を知らず視覚的に見たイメージだけで悪いイメージに結びつくというわけではない。
文字の意味を理解し視覚でイメージを定着させることによって一つの文字となる。それまではただの記号といえるかもしれない。
最終更新:2010年06月30日 21:49