「大好き新潟 2泊3日の旅」 参加者 水谷、田所、倉島、五藤
第一章
10月末日の早朝、私たち4人は新潟駅前のロイヤルホストにいた。そこで今回の新潟小旅の計画を立てていたのだ。小雨の降る寒い朝だった。朝食をとりながら、外の雨を気にしつつ、小一時間観光案内のパンフレットを眺めながら話し合いをするも、一向に計画はまとまらなかった。なぜなら思いの外、新潟には観光スポットがなかったからである。そこで私たち4人は計画を大きく変更することにした。「佐渡島へ行こう」と。早速、私たちは観光案内所へ向かい、フェリーの時間を確認すると、それまで新潟市内を散策することにした。しかし、いざ街に出てみると、そこにあったのはどこまでも続く地方都市ならではの殺風景な街並みだった。それはシティーボーイ(ガール)大学生の私たちには、あまりにも退屈すぎた。街はハロウィンということもあって、僅かながらの賑わいを見せていたが、それでもやはり、何か寂しかった。これが新潟なのか、それとも私たち自身の心が寂しいのか、私たちは絶望した。そして行くあてもなく街を歩き出した。どこまでも歩き続けた。歩き疲れ、時刻がちょうど昼にさしかかったころ、せっかく新潟に来たのだから何か新潟名物を食べようということで、偶然見つけた新潟名物?のイタリアンの店で昼食をとることにした。味に特に期待はしていなかったが、それはその期待を決して裏切ることのない、間違っても旨いと言えるようなものではなかった。良くも悪くも「新潟らしい」というのが4人の率直な感想だっただろう。食事を終え、店をあとにした私たちは、再び何のあてもなく歩き始めた。肉体的にも精神的にも疲れがピークに達し、あたりがようやく暗くなりはじめたころ、ついにフェリーの時間がやってきた。私たちは疲れ切った身体で足早に、新潟市内から逃げるかのように港へ向かい、チケットを購入した。そしてついに念願の佐渡島へと出発したのだった。
第二章
未開の離島に想いを馳せながら船に揺られること2時間あまり、遂に私たちは念願の佐渡の地を踏んだ。島に着いた達成感からか真っ暗な港も、強い潮風もどこか心地よく感じられた。各人何を想ったのかはわからないが、しばし耽っているとふと「これからどうする?」という言葉が聞こえた。私たちは夢想から一気に現実へと引き戻された。新潟市内ですら持て余していた私たち、更に僻地に来てしまっているのだ。しかも陽はとっくに沈んでいる。全員が口をつぐんだが、動かないことには仕方ない。歩を進めるとなれば求めるものは一つ、そう風呂である。というのもまだ本土にいた頃、田所が「佐渡島には黒いお湯の風呂がある」と意気揚々と話していたのだ。わざわざ夜に渡航したのもこの為と言っても過言ではなかった。自然と軽くなる足取りと共に向かった。しかし、歩き疲れた私たちを待っていたのは非情な事実だった、風呂は宿泊者のみが入れたのだ。私たちは「野宿愛好会」、宿泊なぞできるはずもない。全員の落胆が見ずともわかった、もはや田所を罵る元気もない。それからは特に話すこともなく、少しでも栄えている方へと向かった。途中、会った酒屋の店主に勧められた赤ちょうちんとかいう定食屋に出向くと、中は外の静寂が嘘だったかのように華やいでいた。各々料理を頼み運ばれた食事に舌鼓をうつと、なるほど勧められただけはあると納得の品々だった。美味いものを食せば人間多少のことは気にならなくなるもので、これまた先が嘘のように話が盛り上がった。ひとしきり話すと。多少の名残惜しさを感じながら会計を済ませ店を出た。あとは眠るだけ、言わなくとも全員の意思が合った。少し歩いた近くの適当な日本海を臨む浜辺で静かに寝袋にくるまった。
(to be continued)