ギルドマスター私的日誌。
西暦2009年。1月20日。AR1716年。14月25日。
やはり人生は必然の連続らしい。
久方ぶりに零次の師父、レイ・ジャンドに会った次の週に、衰退の断片、グリクシスへと飛ばされた。
グリクシス出身のプレインズウォーカー、ヘイト・グリクシスに会ったのは今から三年前。
父が亡くなる少し前だった。
奴はまるで、俺が絶望に落ちる事を予知していたかのような言動をしていた。
今でも覚えている。奴はこう言った。
「お前は俺と同じだ。必ず世界に絶望し、憎悪を抱く。
お前が言う、起源とやらがあらゆる人間にあるのだとしたら、お前の起源と俺の起源は同じ。
それは『憎悪』だ。
人を憎み、世界を憎み、自分を憎む。また逆に、人から憎まれ、世界から憎まれ、自分から憎まれる。
それが、俺とお前だ。
お前の言う通り、起源からは逃れられない。
俺とお前も、憎悪とは切っても切れない関係にあるのさ」
奴の言う通りだった。今でもそうだ。
今でも俺は憎悪を抱いている。人と、世界と、自分に。
俺の、人を助ける、という行動の理由は、純粋なものではなく、憎悪からくるものだ。
困っている人を助けたい、ではなく、人を困らせる人間の邪魔をしたい、だ。
困っている人が居るから助けるんじゃない。人を困らせるような理不尽な人間が許せず、憎んでいるから助けるんだ。
だから俺は、最初、人助けではなく殺人を選んだ。
グリクシスは話に聞いた通り、不気味な世界だった。
大よそ生と呼ばれる物を一切感じさせない世界。
……認めたくはないが、気が楽だった。
居るのはデーモン、アンデッド、吸血鬼。
どれもこれも明確な人の敵。殺したとしても致し方ない相手。
人間に居たのは、独裁者、略奪者、殺人者。
どれもこれも、正当防衛の名の元に殺せる相手。
殺人が許容される世界。いや、殺人が当たり前に存在する死の世界。
本当に気が楽だった。何も考えずに銃の引き金が引けた。
これも奴の言う通りだった。
俺は心のどこかで、世界から人が消える事を望んでいる。
生命が誕生しない世界。憎しみの連鎖が起こらない世界。誰もが、自分のためだけに生きている世界。
そして……自分のためだけに生きる事が許される、孤独だが、束縛の無い世界。
理性は否定しているが……俺はこの世界が気に入ってる。
俺は──今でも復讐者だ。
最終更新:2009年01月27日 00:21