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―――『裁きし罪の血筋』
彼は、旧くから続く処刑人の家系の出である。その一族は代々、血筋に因って異能の『因子』を色濃く受け継いで来た。
彼等に発現する異能は人により様々だが、何れも一定レベルを超えた行使には代償を必要とするのが特徴。

或る者は処刑人としての圧倒的な身体能力を得て、代わりに感情を失い。
或る者は背負った罪に身体を歪め捩じ曲げ異形と化し、人としての生と、其れに付随する多くの物を失って。
また或る者は判決を破滅と変じる術を得て、自分自身の言葉を失い、喉を自ら潰すに至った。

彼の異能は、“罪と罰の具現”、そして“破壊”。代償は苦痛である。
こう記すと代償が少ないようにも見受けられるが、過ぎた此れらの能力は自らの心身をも蝕んでおり。
全体的にバランス良く高い基礎能力の内、
生命力に関連する(治癒力、持久力、魔的存在への抵抗力等)性能を、軒並み大きく減衰させる要因と成っている

勘違いされがちだが――他人が犯した罪に応じて威力が上下する、といった要素は無い。
邪悪とされる者に対して高い効果を及ぼす事は、まま有るのだが。

因みに能力解放のプロセスは、其の発動速度からは思いもせぬ程に複雑奇怪且つ大掛かりな物であり。
精密解析する事は、恐らく至難を極めるであろう。

因みに簡略化すれば、以下のような手順である。

1.苦痛の代償を捧げ、自らの異能(以下、裁罪と呼称)を周囲に循環させる。
2.此れを以て、所謂アカシックレコード――世界の記録にして、
根源、或いは究極の英智と称される存在――に干渉し、罪と罰の「記録」を汲み上げる。
3.汲み上げた「記録」を裁罪を用いてそのまま具象化、或いは手を加え、様々に変容させた後に具現化する。
4.顕れた「記録」が、効力を発揮する。

―――酷く限定的とは言え、最短一工程で根源に干渉する能力を持った異能。一個体の持つ力としては、破格の物だ。
だが正直な所、何とも無駄遣いな感が否めない力である。
通常の異能や魔術ならば単純な発動や詠唱で済む所にわざわざ要らない手間を掛ける上、決して安くない代償まで支払う必要が有るのだから。

現代風に言うならば、
「ガスコンロを使えば事足りるにも関わらず、敢えてそのガスを使って火力発電。
此れによって発生した電気を用いて、IHクッキングヒーターを使い野菜炒めを作ってみる」
と、いう感じだろうか。
無駄が多ければエネルギーロスも多くなるのが道理、お世辞にも効率的とは言い難い力だ。

だが――エネルギーロスによって周囲に分散された裁罪は、“破壊”や代償の一時的強制共有に依る苦痛、治癒の阻害といった負の効果を相手へと齎す。

其の効果は――技に掠っただけでも激痛が走る、展開した術式に障害を与える、
通常よりも治癒し難い傷を付与する、生命力を僅かながら減衰させる、等。
総じて、敵の行動を潰しつつ、深手を与える事に向いた物。

裁罪者は、加減の利かないこの副次効果を嫌っており――痛みや阻害等、実害の比較的少ない物を除いて、無意識に封じているようだ。
本気で相手を殺傷する覚悟を決めた時にのみ、解放されるらしい。

また、裁罪は特定の属性を持たない。
具現された水や炎等も、其れに酷似する性質を付与された力の集積体であり、正確には属性は無い。
故に、属性攻撃を苦手とする相手の弱点を突く事は不可能。万能に見えて、其の実酷く偏っているのだ。

例:吸血鬼が苦手とする流水を具現しても、
  「正確には水では無い」為か出力次第ではごく普通に踏破される。

尚、根源から組み上げたせいか。
具現した物は、その物体の絶対原型――イデア――と、世界が記録した物質。言わば、高次の概念と能力とが混合した存在と成っており、
非物質界からの干渉や概念的攻撃に対する、ある程度の耐性を有している。
此方は、単純に真っ向から彼と戦う分には、全く脅威とは成り得ないだろう。

此れ等の特徴を最大限に活かし。

欠点を補う高火力、高範囲、高密度の弾幕に、決して低いとは言えない機動性。
幼少時からの血を吐くような鍛練と経験則を以て編み上げられた、
中~遠距離特化の全距離対応型砲戦は、多少不安定ながらも高い殲滅、征圧力を有する。

些細な障害は消し飛ばす、自殺的とすら言える大出力での短期決戦が、彼の主な戦闘スタイル。

破壊しか出来ない負の力だ、と本人は厭って居るが。
単身で並み居る敵に立ち向かい、戦禍に抗い、
運命と言う壁を撃ち抜かんと鎌を翳して足掻く彼には、或る意味似つかわしい異能では有る。

勇気を以て弾幕を掻い潜り、嵐の只中へと飛び込む事が、或いは此の裁き手を下す事に繋がるやも知れない―――
最終更新:2010年04月21日 00:24