「お父さんお父さん!見て、僕と同じなんだよ?」
アイツがそう言いながら俺の部屋へ嬉しそうに飛び込んできた。
しかし、その状況を把握した瞬間、俺は恐怖すら感じた
「……おまえ…何したんだ」
俺はそう聞くのが精一杯だった。
実の息子に対して恐怖…?傍から聞けば馬鹿馬鹿しいと思うだろう
しかし、その自分の息子が手を引いてる存在
それが天使だとしたら…あんたはどうだよ…しかも、たかだか5歳のガキだ
何か特殊な訓練を受けたガキじゃない、俺が十分な教育をしてる訳でもない
唯一特殊なところ…それは、こいつは俺が天使に生ませたガキってだけだ
「庭で遊んでて、友達が欲しいって頼んだら来てくれたの。
ねぇ、この子も僕と同じ羽があるよ。だから、僕もうひとりじゃないよ」
当り前のように友達と言い張る…
ご丁寧にも、俺に見せつけるように背中に羽を背負いやがる
「おまえが呼んだのか?こいつを」
確認のように俺は再度問いかけても帰ってくる答えは決まってた
「うん、風が吹いた後、光の中から来てくれたの」
間違いない…召喚だ……
しかも5歳の知識の無いガキが天使召喚だと?
これがあの女の血なのか……
「そうか、部屋で遊んでると良い」
「…うん!!」
何とか2人を子供部屋に閉じ込め、俺は受話器を持ち上げ
滅多に使わない短縮ボタンを押す
「新しいサンプルを売りたい」
「どんなサンプルなのかしら?」
「天使、しかも召喚使いの可能性がある」
「……そんな子、何処にいたの?」
「お前も知ってるガキだよ」
「…まさか、あなた……やっと売ってくれる気になったのね」
「半分天使…だけじゃ無くなったんだ、高く買ってくれるんだろうな?」
「もちろんでしょ。それだけの条件が揃うならいくら出しても惜しくないわ」
「なら、今夜にでも取りに来るか?」
「そうね…母親の時と同じ時間に……かしらね」
「解った、待ってるぞ」
相手との電話を切って、約束の時間まで暇を潰す。
別に仕事があるわけじゃないから、とっておきの酒を開けてみた。
今夜、また大金が手に入るうえに邪魔者が始末できる
それを考えると、俺は機嫌が良くなっていた。
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「この家…ですか?中佐」
「そのようですね」
トントン…
中佐に確認した私は扉のドアをノックした。
命令だと、玄関を開けた者を連行…との事だが
特徴は何ひとつ教えてもらっていない。
「はーい」
子供の声が扉越しに聞こえ、玄関のドアが開かれる
「お父さんのお客さんですね、どうぞ」
扉を開けた子供は、一目で連行対象とわかる容姿だった
染めていない天然の金の髪は絹糸の様に細く、光を反射させ
銀に薄い青が滲んだようなブルーグレーの瞳と長い睫、そして背中には小さな白い翼
子供なのに、一瞬見入ってしまう程の容姿…これが天界の血なのか
「早くしろ、人に見られる」
中佐に声をかけられ、やっと任務を思いだしその子供の腕を掴み
力ずくで拘束し、翼ごと拘束具を付ける
「…!!!何をするんですか!!放して!!」
必死に抵抗をしようとするが、やはり子供
拘束はあまりにも簡単に済んでしまった。
「お疲れ様です、間違いないでしょ?」
家の奥から出てきた男がそう中佐に話しかけた
どうやら、この男が取引相手らしい。
「お父さん!!助けて!!」
あぁ…きっとこの少年は何も知ら無いんだろう…
申し訳ないという気持ちとは裏腹に、今この少年が
自分の手の内に置かれていることに不思議な高揚感を覚え
少年を抱き上げて口を塞ぎ、中佐の後ろへと下がる。
「中佐さん、約束のは?」
「とりあえずはこれで。残りは能力が確認できたら…との事です。」
「ちゃっかりしてんな、まあ構わねぇよ。能力が有るのは俺が確認してっからな」
「では、頂いていきますね。」
「あぁ、さっさと持って行ってくれ」
中佐が踵を返し、家を後にしようとするが立ち止まる
「…なぜ、すぐに我々に引き渡さなかった?」
踵を返した中佐が取引先の男に背中を向けたまま問う
「あんた等と人買い、どっちが高く買うか値踏みしてただけだ」
それだけの会話を済まし、中佐は現場を後にしたので
自分もその後に付いて現場を後にする。
中佐と取引相手の慣れた手順のおかげで
拘束・連行共に誰にも発見される事は無かった。
ただ、自分の腕の中で涙を流す少年の顔は…今でも忘れられない
前編・FIN
最終更新:2009年03月11日 03:50