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「あなたがロキ君ね」

そう呼ばれたが、顔を上げる気力もないのか
拘束されたまま項垂れる少年
悲痛な気持もあるが、なぜかこの少年が
これからカノッサにいる事に嬉しさすらあった。


天使に魅入られる…こんな気分なのか


それから数日…
彼は食事どころか、水すらも口にしなかった
日に日に弱っていくのが素人の自分でも解る
とうとう自分は耐えかね、診療室への移送を依頼した
移送は…あまりにも簡単に通った。
おそらく、研究者のなかにも危機を感じていた人がいたのだろう。

「ロキ君…何か食べてくれ…」

診察室に寝かされた彼に自分は話し掛けるが
彼は瞼すら動かさずに、まるで人形の様に動かない

細い子どもの腕に刺された点滴が
あまりにも無機質に見えた…


点滴だけの栄養で生き延びた数日が過ぎ
少しずつ彼は言葉を発するようになってきてくれた

「僕…肉や卵は嫌いなんです…」

やっと彼が話してくれた言葉がこれだった

「そうか、それとショックの併発で何も口にしなかったのか…ごめんな」

初めて彼がくれた彼の情報…なぜか申し訳ないというよりも
自分の中は嬉しいと感じていた。

「さて、ロキ君。薬を増やすわよ。」

話の途中で女が診療室に入ってくる。
手には数本のアンプルと注射器

「薬…ですか…?」

やはり子供なのか、薬という言葉で少し顔を歪めていた

「そう、早く良くなって検査させて頂戴ね」

そして女はなれた手付きで数種類のアンプルを
注射器に抽出し、点滴へと混入していく

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…苦しい……体が痛い…

何をされたんだろう…覚えているのはあの薬…



自分の心臓が煩い…

自分の脈が煩い…

自分の呼吸が煩い…



寝ているのか立っているのか解らない…

ここは…水の中?

なんでこんなにフワフワしてるの…?

気持ち悪い…目が回る…



なんでこんな目に会うの?

なんでこんな事をされるの?




お父さん…助けて……

お父さん……


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ロキ君の呼吸が荒く、額に汗が滲み出す
明らかに何か有害な物が体内に侵入したような反応
しかし、女はさも当たり前の表情で彼を傍観している

「幼い少年に、ここまでする意味はあるのか…」

自分でも思わぬ言葉が口から洩れていた
なぜ、こう思ったのか…そしてなぜ、そう言ったのか

自分でも解らない…

なんだろう…この感情は……

情が移ったのか…?




その後も、彼に薬の投与は止められなかった

その度に苦しむ彼を見るのが耐えられなくなってきた…


自分は…機関員失格だ…
ここまで個人の感情を優先させてしまうなんて…








自分はある夜…彼を連れて研究室を脱走した


「機関員No.3-82152、お前を反逆の罪で討伐する」

すでに自分の体の感覚が無い…
あぁ…自分は負けたのか…

ほとんど見えなくなった視界で
先ほどまで一緒にいたはずの少年を捜す…


「………クロード…さん…」

「…初めて…名前を呼んでくれたな」


思わず嬉しくて、顔が綻ぶ


「討伐、執行」

自分達を追いかけて来た男が、自分の首に剣を突き立てる




……あぁ…俺……死ぬんだ…

…あの子……助けてやりたかったな……




体から自分の体液が漏れるのが解る
自分の体が冷えて行く…

ロキ君…最後の最後に…泣かせちまったよ…




ごめんな…ロキ君…



後編・FIN

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最終更新:2009年03月11日 03:50