アットウィキロゴ
名も知らぬ国に逃げてきた夫婦には
深い事情がある様子だった。

受け入れた村人は何も問うこと無く彼等を受け入れ。
彼等は村にある丘の上の空き家に住み
そして数年の時が経った。

----

青年は少し離れた場所にある機関に勤めたらしく
時には帰らぬ日もあったが、毎日を真面目に過ごし
乙女は村の子供達とよく遊び
子供の母親達からも良く思われていた。

ある年の春から、乙女の腹が目立ち始め。
冬には生まれると言う事で
先に母となった村の女達に支えられ
村人も乙女も、新しい住人の誕生を心待ちにしていた。

----

冬になり…子供が生まれたであろう時期に
母親の姿は見られ無くなった。

青年に聞いた所、産後が悪く
母親は街の医師に預かってもらい
子供は体が弱く、外に出せないと答えていた。

村人が見舞いや子供の世話を希望しても
青年は全て断り、胡散臭い女を村の外から雇い
子供の面倒を見させはじめた。

その頃から青年は大きく変わった。
酒に溺れ、勤めにも滅多に出ず
村人と会う事すら無くなって来た。
だが、酒を売った者からの話しでは
金払いは良く、支払いが滞る事は無いらしい。

不安に感じた村人は
次第にその家に近づかなくなっていった。

ただ時折、窓に写る子供の影が
村人の不安と心配を煽っていた。


母親が居なくなり、五回ほど季節が廻った頃
窓に写る子供の姿も無くなり
胡散臭い女の姿も見えなくなった。

不安を覚えた村の女が青年に問い詰めたが
「子供も体調が悪く病院に居る」
としか返答は返ってこなかった。
それ以上の事を問い詰めたが
青年はその返答しか返さなかった。

----

子供の影すら見かけなくなってから
青年の生活は更に酷いものへと変わったが
金払いの良さは前以上に良くなった。

隣村の賭博場に入り浸り
村にすら帰らない生活を二年程すごしていたが
……ある冬の朝
彼の体は氷の張る池で見つかった。

「酔って足を踏み外したんだろう」
村人の考えはそれでまとまり
もしかしたら帰るかもしれない母親と子供のために
あの家を定期的に掃除しようと話しが決まった。

----

【ある日の事】

「よいしょっと…一階はこんなもんかねぇ?」
「そうだね、じゃあ2階をやろうか」
「はいはい。それにしても凄い量の酒瓶だねぇ」
一人の女が溜息混じりで呟く

「子供も苦労したろうに…」
「男の子か女の子かも、あたしらは知らんがねぇ」
「あんなに良い青年だったのに…何を間違えたんだか」

そんな話しをしながら階段を上がり
二人は2階の部屋の一つに入る

「……この部屋…子供の影が見えてた部屋だね」
「……………」
「………何処に行っちまったんだか……」
「……………」
気まずい空気と沈黙が二人を包む

「……ほらほら、その子が帰ってくるかもしれないんだ
 綺麗にしといてあげなきゃ可哀相だろ?」

一人が部屋の奥の窓に手をかけて
カーテンを開き、窓を大きく開け放つと
部屋に篭った嫌な空気を絞りだす様に風がふく。

「あら…鳥でも飼ってたのかね?」

暗くて見えなかった部屋に光が入り
床に落ちた一枚の白羽を見つける。

白羽は部屋を抜けた風に舞い
高くなった青空へと、その姿を消した…

まるで…消えた子供の影の様に……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月11日 05:35