「――――♪」
消え失せてしまいそうな声で、少女は歌い、踊る。
「……――、――♪」
少女の歌声に合わせて、世界が歪んだ。
真っ黒に塗り潰された空を魚が泳ぐ。
夜色に濁った水の中を小鳥が飛ぶ。
ひび割れてもいない卵は跳ね回り、映すモノの無い筈の鏡は歌う。
歪みきったそれらは、彼女の世界だった。
しばらくして、歪んだ世界に一つの影が現れる。
山羊の頭を持つ、闇色のマントに身を包んだ男だった。
「――ああ、来てくれたのね」
少女は笑う。
美しく、そして歪みきった笑みだった。
「それじゃあ、夜会を始めましょう」
少女の声と同時に、世界は叫び声を上げた。
歓喜の声とも悲鳴とも取れる慟哭を。
少女は笑う。笑う。笑う。
朝は未だ遠かった。
最終更新:2009年03月11日 19:58