――サイドテーブルに置かれたメモ書きより
身に着けたものなどでない、ああいう大質量の物も一緒に持ってこられるとは驚いた。
それだったら計画はもっと大きな鐘でもよかったかも知れないが、
さすがにそんな纏まった質量の神鉄は手に入らないだろう。
また、年齢を吸い取るという魔具(?)の存在も確認。
もしかしたら大鐘も俺から何らかの代償を奪っていくかも知れないが、まあそれはそれで構わない。
どいつもこいつも、明らかにこの世界の転移のせいで影響を受けているように見える。
アイツまで、アイツがこれまで以上に、力を求める必要性なんて、そうは無いはずだ。
餓鬼の目に水見えず――アイツがどれだけ、この言葉を理解できただろうな。
そうだな、完成したらあのクソガキにいの一番に見せてやろう。
……俺のしようとしていることは、間違っていないはずだ。
それと、うっかり俺に起きた異変を喋くっちまったが、代わりに一つ嘘をついてしまった。
「でも自分でもそんなに脆くなってたとは知らなかった」。俺も随分口が回る事だと思った。
本当は、脆くなっていることを理解している上で、どれだけ耐え切れるか試す為に手合わせを持ちかけた。
これを言ったらまたぶん殴られてたんだろうと思うと、多少笑いがこみ上げてくる。
俺もあれくらい若かったら、もっと別の道を選び取ることが出来たんだろうか。
ああそうだ、あのジジイには危うく彼女の事を喋りそうになった。まあなんとか押しとどまったが。
相も変わらず、俺は彼女の事になると頭に血が上りやすくなっているようだ。
……彼女は、俺の姿を見てどう思うんだろうか。自己犠牲を嫌いながら、それをしようとする俺を。
きっとあの時のように、泣きながら俺を怒鳴りつけるんだろう。ああ、それはよくない。
抱き締めることすら叶わなかったあの日の彼女を、これ以上心配させてはならない。
厄介な事を頼まれた。あいつは俺が他の誰かに助けを求めるような人間じゃないことを理解してんだろうか。
出来れば再会はずっと後がいい。せめて大鐘を完成させなければ、すべてが無駄になる。
あいつは多分手加減無しにかかってくるんだろうし、まあどう転んでも俺は死ぬんだろうと思う。
それならその前に誰かに俺の魂の名を教えておきたい。これは俺のただの自己満足だが……。
一体誰に教えるか、セリやユラか静刃か三日月か、とここまで考えたが、拒否される可能性があるんだった。
この世界で、二種の神鉄が手に入った。
あとは製作に手を回すだけだ。
この、馬鹿げた神の気まぐれを終結させるために。
Carway・Rick・Spankmire――
最終更新:2009年03月30日 11:32