最初に注意
このSSには出血など微グロ、人によっては極グロ表現があります
苦手な方はスルーして下さい
どーしても目に入ってしまい不快な方はお手数ですがここだけ目を閉じて他の方のSSをお楽しみください
少女は暗い洞窟にいた
洞窟には至る所に白骨が散らばり、不釣り合いなお札がびっしりと岩壁に貼られている
普通なら大人でも恐怖し、足がすくむであろうその場所を、少女は気にもせず奥へと進む
何が彼女をそうさせるのか、少女はとにかく奥へと進む
歩いて歩いて、ずっと歩いたその先に、少女は扉を見付けた
その扉にもお札が貼られている、それが本当に扉か解らない位びっしりと
少女はお札を背負っていたチェーンソーで破り、更に奥へと進む
中は祠のようになっており、血肉や腐臭、死体の臭いが充満している
そしてその更に奥、最深部にそれはあった
それは、人と同じサイズの人形と、それに刺さっている巨大な赤い鋸
――――――――――――――――――――――――――――
「呪いの剣?」
菓子が置かれたテーブルを挟んで二人の男女――姉弟が話している
「そ、前にどっくんにプレゼントした刀みたいなね」
姉は茶を啜りながら続ける
「昔ね、この辺りに工房があったの」
「ある日そこの娘さんが恋をしたのよ」
「それがなんと自分のお兄ちゃんに」
弟は菓子を摘みながら黙って話を聞く
「でも、兄妹で付き合い、ましてや結婚なんてありえないでしょ?」
「あんなに大好きなのに私はお兄ちゃんと結婚できない…そう思った娘さんはある日とんでもない事をしたの」
「…とんでもない事?」
弟は茶をゴクリと飲み、続きを促す
「そのとんでもない事とはね…」
―――――――――――――――――――――――――――
少女は両手で鋸を人形から引き抜く
引き抜いた時、人形から血のような真っ赤な液体が吹き出した
そんな事も気にせず、少女は鋸の刃を指でなぞる
「…!」
その瞬間、少女の頬を涙が伝う
何故涙が出たのか解らない、何も涙を流す要因なんて無いのに
そして少女に何者かの記憶が入り込んできた
恋い焦がれる苦しさに狂い、鉄に自分の血を混ぜ鋸を作った
そしてその鋸で愛しい兄を殺した
大好きな兄を永遠に自分の物にする為に
「…そう…そうだったの…」
鋸を持つ少女の表情は、いつしか笑顔に変わっていた
―――――――――――――――――――――――――――
「そ…そんな事を…」
弟は顔を青ざめカップを持つ
話のあまりの衝撃からか、その手は微かに震えていた
「ま、なんにしろ行き過ぎはよくないって事ね」
この話をそんな言葉で丸く納める姉に、弟は少し呆れ顔になった
「…で、その後娘はどうなったの?」
「んー?えっとねー」
弟の問い掛けに姉は茶を飲んでから答える
「たしかその娘さんはどこかに幽閉されたんだって、あの恐ろしい鋸と一緒に」
「へ、へぇ…怖いね…」
弟の顔は更に青ざめる
「それでね、その剣を持つと娘の亡霊に呪われちゃって、男なら鋸に切られて死んじゃうんだって」
男なら、という言い方に弟が疑問を感じる
「男ならって事は…女の人が持つと?」
「女が持つとねー……娘の亡霊が取り付いて…なんかやばい事になるらしいよ?」
「…随分適当だね…」
「だってー、所詮お話だもーん」
姉は茶化すようにお菓子を口に放り込む
「はぁ…てゆーかなんでいきなりそんな話したの?」
弟は呆れ顔で溜め息をつき、姉に問い掛ける
「いんや別に?面白いかなーと思って」
「…そう…」
弟は大きく息を吐き、顔を俯かせる
「あーそうそう、確か娘さんが作った鋸の名前はー…」
―――――――――――――――――――――――――――
「あははははははははははははははははははは!!!」
少女は鋸を持って暴れ回る
祠の中のお札を、骨を、岩を切り刻む
どれも簡単に粉々になった、それほどまでに鋸の威力は絶大なのだろう
ひとしきり荒らし終え、少女は最後に人形に歩み寄る
人形を見下ろし、刃が回転する鋸を突き刺す
人形はまるで人間のように血を吹き出した
少女がそのまま鋸を動かすと、人形は血を吹き出して真っ二つになった
少女の手に確かに伝わる肉を切る感覚、鋸は血を浴びてより一層赤身を増した
「これからは…私が代わりにあなたの願いを叶える…」
返り血を浴びて真っ赤になった少女は鋸に語りかける
「あなたの名前は…そう…」
笑顔になった少女の顔には狂気が宿り、鋸の名前を口にする
「「Cursed love」」
呪われた愛を、少女は手にする
そして少女は愛に呪われていく…
最終更新:2009年07月05日 01:21