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――ふいに目が覚める。
目を開けてもその光景は真暗く、僅かに物体の輪郭を覗かせるだけだった。
手を動かせば、柔らかい掛け布団の感触が指先に滲む。
ああ、そうだ。ここは自分の育った場所ではないのだ。
ふと目尻に霞んだものが移るのに気付いて、目を拭った。
覚えていない夢の内容は、あの苦しいけれど優しい日々の事だったのだろうか。

私は夜が怖い。
あの時間を感じさせないいつも薄明るい場所と違って、外には夜がある。
その渇いた暗い大気が、いつか自分を呑むのでは無いかと恐ろしかった。
けれど。
寝返りをうつと、一番大事な人の背中がある。
寝顔を見れないのは残念だけれど、こうやって起きた時も必ずそこに居てくれる。
その温もりが、夜への恐怖から私を守ってくれる。
それはあの檻の中には無い優しさだった。

――私が、こうやって滑らかに思考を動かせるようになったのは最近の事だ。
けれども唇は中々そう動いてくれない。もしかしたら何か「そう」されたのかとも思う。
ひどく、もどかしい。
自分がどれほどその背中を大切に想っているのか、伝える事が出来ない。
その事が、苦しいくらい私のちっぽけな心を握り締めた。

そっと、その真白い髪に触れる。
「レオ」
これだけ光のない空間だと、私の髪と彼の髪は、とても似て見える。
「……大好き、だよ」
きっと、聞かれてすらいない言葉。
けれども私は満足をして、また目を閉じた。

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最終更新:2009年07月26日 03:49