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とある世界の街の外れ。
彼は岬の先端…所謂崖っぷちに腰掛け、その身を地面に横たえた

「なあ、■■■」

纏うは、黒い外套。更に上から漆黒のマント。所々が傷付き、血に濡れている

「大切なモノって、どうして増えれば増える程に辛いんだろうな」

天蓋に満ちた星々に、手を延ばす。呟いた言葉は、何処か淋しげで

「失いたくない………壊れていく存在を、何より掛け替えの無い存在を、ただ見ているだけの無力感に苛まれるのはもう沢山だ」
「なのにそれは、あまりにもあっさりと訪れ、そして過ぎてゆく」

悲観と絶望と苦渋に満ちた、彼を知る者にはおおよそ想像も付かないような物。

「あの時もそうだったよな、■■■」

「確かにこの腕の中に在った熱が、呼吸がすっかり消えて、同時に胸の中身がごっそり削ぎ落とされるような感じがした」

「泣きたい気分だったよ。でも、あまり上手く泣けないんだ」
「オマエを失った…いいや。殺したその時から、ずっと」

彼は自嘲の笑みを交えつつ、一人、言葉を紡いでゆく

「泣けないって、辛いんだな…………こんなに辛いならいっそ…なんてな。冗談だぞ?」
「でも、死ぬ程痛い。こんなにも、何かを思う事が」
「苦しいなら、悲しいなら、狂おしいなら………きっと、林檎なんて食べなきゃ良かった」

そう告げて、彼は自嘲の篭ったソレでは無く…何時もの笑みを浮かべた。
「………なーんてな、でも。原罪を背負って楽園を追い出された二人もきっと、そんな事を考えてたんだと思うぜ?」

「にしても、随分とらしくない泣き言だったな………そうだろ■■■?」
「まあ、要はまだまだガキだって事なのさ。頑張って周りに見えないように隠しても、何処かで必ず襤褸が出る」

「それならいっそ、たまには良いかなーってさ。まあ端からみてりゃ異常者だがな」

彼は更に続ける。暫くして、自然に欠伸が零れた

「あー………らしくない事したら疲れた。眠い。でも寝床が無い」
「しょうがないから此処で良いや。寝床なんて所詮有れば上々な睡眠用オプション、無くても別段構わない。俺はそこまでヤワじゃない」

「まあ、体中が痛くなるのは困り物だが……うん。さいっこーの寝床で眠れるのと一秒でも長くアリスの隣に居られるの、どちらか選べって言われたら間違いなく後者」

どうやら眠るつもりなのか、彼はそのまま目を閉じた。
「取り敢えず、想い出話はまた明日にして。今は取り敢えず……おやすみ……なさー…い」

ちなみに。
翌日目覚めた彼こと彩咲クランが、何処とも知れない海岸に流れ着いていて……というのは、また別の話である

fin

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最終更新:2009年08月01日 21:14