ニャー…ニャーー………
降りしきる冷たい雨の中、小さな子猫が道の隅で親を呼ぶ
人の群れは無情にもその小さな命を「見なかった物」として通り過ぎる
子猫の声は擦れており、栄養が失われた細く小さな体が震え
どれだけの長い時間、親を探し求めていたのか想像もつかないほどである
「どうしたチビ、はぐれたか?」
短めの黒髪を大雑把に後ろに流したオールバックの髪が雨に濡れた青年
子猫の前に立ち止まったその青年は優しく子猫を掬いあげる
「俺ん所、動物禁止なんだよなー………まいっか」
青年はその子猫を、自分の身を包んだ何処かの制服の懐に仕舞いこむ
「とりあえず、飼い主見つけてやるよ」
ニャーー…
青年の大きな手に撫でられ、子猫は安心したように一つ鳴く
「上司には隠さねえとなぁ…俺、まだ新人だし」
『君は…契約者の匂いがするにゃ…』
青年がぼやいた声と重なる様に、何処からともなく声がする
「ん…?誰だ……?」
青年が辺りを見回す。しかし周の人間は青年を見ていない者かの様に摺れ違う
『ここにゃ、ここにゃ』
声の元は青年の懐。
青年が驚いて懐の子猫を改めて見る。
黒い体に金の目、そして……赤いブーツ
『君が助けてくれた子猫は僕の欠片にゃ。お礼に契約すにゃよ』
懐の子猫がニンマリと笑みを零す
「をっ、そうしてくれると飼い主探す手間も省けるや。ヨロシクな」
『にゃお!僕は月を持つ猫、ケット・シーにゃ。きみは?』
「俺か?俺は召喚師の―――。」
降りしきる雨の中、運命的な出会いを果たした青年とケット・シー
この出会いが、一つの歯車である事は……誰も知らない……。
[Fin]
最終更新:2009年08月18日 01:22