「…いやー…遂にやっちゃいましたねぇ」
暗い暗い研究室、の真ん中にある巨大なカプセル、の前に立つ私
淡く光るカプセルの中には液体が満たされ、私の最高傑作とも悪魔の発明とも言える物が収まっている
しかしアイディアってのは恐ろしい、最初に思い立って…思い立たされて作り始めた
のはいいが、できてみるとこれが最初想像していたのと全然違う
「なーんでしょうねぇ、これ」
中に大家族が住めそうなくらい巨大なカプセルに収まり切らない位大きな…鯨のような鰐のような生物
が体を折り曲げるようにして眠っている
もちろんこれは愛でる為の物じゃないし、鑑賞用でもない
これは紛れも無い兵器だ、それもただ人を殺すような兵器ではない
『世界そのものを食い尽くし、破壊する』兵器
「いやはや、本当にどうしてこんなものを作ってしまったんでしょうねぇ…」
自分でそう呟くが、理由は解っている
偶然もたらされた気まぐれ…いや、もしかしたら必然的にもたらされた気まぐれだったのかもしれない
私の腕…心には邪悪な存在が巣くっている
その存在が私の心を蝕み、覆い尽くし、染めて行く
その代わりなのか、私は力を手に入れた、しかしそんなものは私には必要無い物だった
しかしそんな事はお構いなしに、邪悪な物は私に悪を植え付ける
まるで畑に種を蒔くように、私の心には悪と欲望が増えていく
もう、悪を、欲望を抑えるのも限界が近いかもしれない
そこで私は考えた
『欲求不満は欲求を解放するのが一番手っ取り早い』
つまり、『兵器を作りたい欲望を解消しておけば、兵器を起動したい欲望が少し抑えられる』という訳
「馬鹿げた考えでしょうかねぇ?」
「でも、その馬鹿げた考えこそ科学者には必要な物なんですよ」
誰に言うでもなく、私は呟いた
だが、ただ欲望を抑えるだけではいつかは限界がくる
だから私は私を殺そうと考えた
欲望が抑えられている間に、悪と欲望に染まった私を――――
殺してもらおうと、考えた
「いっちゃんいっちゃん!!何してるのー!?」
パタパタと軽い音を響かせ、あの子が駆けて私の隣で立ち止まる
私は何故か、何も言わずにあの子の頭を撫でる
「どうしたの?」とあの子は私の顔を見た
眼鏡を隔て、無垢な瞳と目が合った
「…なぁんでもないですよぉ!?イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
私が笑うとあの子も笑う
そうしていると今までシリアスにしていた自分が解らなくなった
「さてと、行きますか」
あの子の手を引いて私は研究室を後にする
「どこにいくのー?」
「んー、そうですねぇ…」
「…お散歩、ですかねぇ?」
最終更新:2009年08月29日 13:53