戦争から煌きと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
アレキサンダーやシーザーやナポレオンが兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。
そんなことは、もうなくなった。これからの英雄は、安全で静かで、物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。
一方何千という兵士達が、電話一本で機械の力によって殺され、息の根を止められる。
これから先に起こる戦争は、女性や子供や一般市民全体を殺すことになるだろう。
やがてそれぞれの国には、大規模で、限界のない、一度発動されたら制御不可能となるような破壊の為のシステムを生み出すことになる。
人類は初めて自分達を絶滅させることのできる道具を手に入れた。これこそが、人類の栄光と苦労の全てが最後の到達した運命である。
── ウィンストン・チャーチル「世界の危機」
「政治的思想、か。成る程、そのような質問を受けるのは初めてかも知れんな。
何分、私の産まれた国は、君達が騒々しく書き立てるところの“軍国主義”ないし“帝国主義”、或いは“皇国主義”だった。
そのような国に産まれた者の95%は、体制に対する疑問を持たない。考えるのは『体制の中でどの位置を占めるか』ということだ。故に自己と国家のイデオロギィが同一化する。
残りの4%は国家と対向する思考に走る。それは草莽の志であることもあれば、唾棄すべき反社会的思考であることもある。後者は手段の目的化だ。
私は残る1%だった。つまり、私は“私”だと考えたが、自己と国家を対抗する気にもならなかった。王族の系譜だ。恵まれた者は革命など考えん。
ただ、私は私の≪ロマン≫を、餓鬼のように抱き続けようとしただけだ。それを阻む者は敵。至極分かりやすい。
……あぁ、質問の答えだったか。右も左も国家との対抗の中で産まれるものだろう。興味はない。以上だ。
それよりも、貴誌で連載している菓子のコーナーがあるだろう。あれを1年、私に任せてみないか。今の倍の発行部数は約束しよう。」
── 水国月刊誌『ヴィーズ・リポート』2月号掲載“独占取材・異端の軍人に迫る”内において 記者の政治的思想を問う質問に対し
- ―――〝 Figur 〟―――
作戦行動時
【黒を基調とした士官服に重ねるは、その眼で敵を射抜くが如き『金狼』の刺繍が施された紅の短外套】
【怜悧な印象を与える碧の眸より視線を上げれば、年季の入った軍帽が鈍く輝く】
【左腰には銀の拳銃、右腰には黄金の指揮棒――左目を眼帯で覆った、三十路の男】
平時
【身に纏っているのは水国高級ブランド『エスカレード』の3ピース。襟元には〝金狼〟のバッヂ】
【怜悧な印象を与える碧の右眼。左眼は眼帯に覆われている。癖のある銀髪をした三十路の男】
- ―――Personenbild―――
水の国・国軍中佐。30代前半。水国軍『雷狼部隊』の隊長。
異世界出身で、数代遡って王家に連なる帝国将校の家系の出であり、彼自身も将来を嘱望されていた。
……が、近代兵器を駆使する敵国との『負け戦』の最中、新世界へと転移。
当初は無能力者であったが、この世界で戦いを重ねる内に能力が発現した。
その後、傭兵紛いをしつつ各地の戦場に顔を出し〝佳き戦争〟を求めていたが、水国軍に士官する。
その独特の哲学から軍部内では毀誉褒貶が激しいが、後援者である“ルカイナー卿”なる軍閥貴族の存在もあり立場は悪くない。
彼我が〝矜持〟と〝覚悟〟を持って行う〝佳き戦争〟に対して執着を持っており、彼は其れを≪ロマン≫であると表現している。
彼に言わせれば、『喧嘩する子供』も〝覚悟〟が有れば〝戦士〟足り得るし、『大軍の将』も〝矜持〟無くしては〝戦士〟足り得ない。
また、〝佳き戦争〟に〝戦士〟以外は不要であるため、市街地戦、空爆、総力戦と云った一般人を巻き込む戦闘は軽蔑する。
逆に言えば、一般人の生き死にそれ自体には大して興味が無い。
その独特の哲学を除けば基本的には融通も利き、ユーモアも持ち合わせた人物。
なお、家事関係が滅茶苦茶得意。彼の作るスイーツは絶品である。
ここ数年で結婚した妻がおり、
初を可愛がっているらしい。
- ―――“Wirbelwind”
能力は、〝渦〟を司る能力・≪ヴィルヴェルヴィンド≫。
正確に言えば、「対象を中心として、渦状にエネルギーを収束・発散させる」能力である。
対象となるのは彼自身が〝曲げられる〟と確信した物。故に、精神的側面に左右される。
基本的には空気を媒介として、鎌鼬を発生させる、渦を破裂させて相手に衝撃を与える、等の使用法が多い。
光を曲げて自らの姿を消す事も可能だが、同時に対象とできるのは『一事象』のみの為、緊急回避的な意味合いが強い。
- ―――≪ Blitzwolf ≫
ブリッツヴォルフ。ロロケルム・ランガスター麾下の部隊。隊章は『金狼』。通称、雷狼部隊。
出身・前科等は考慮されず、彼が優秀と判断、或いは、上層部の意向で送り込まれた人員で構成される。
本部はフルーソに存在しているが、常駐する人員は少数。平時は各国の情報収集及び、フルーソの治安任務に当たっている。
軍曹。雷狼部隊・副官の一(自称)の、猫っ毛が目立つ少女。二つ名(自称)は、『陽炎の華』(誰も呼んでくれない)。
身体能力が高く、ナイフ等での接近戦を得意とするが、精神面は未熟。「~であります」という口調で話す。
基本的に馬鹿なので、ロロケルムが逐一指示可能な状況下か、単純な任務において活動することが多い。
【髪型は薄いスカイブルーの髪をリボンで括ったサイドテール、身長165cm程の女性だ】
【双眸と同色の黒を基調とした軍服をきっちりと着込んでおり、胸元には『金狼』の紋章】
【左腰には『軍刀』、紅い鞘には幾何学模様が掘り込まれていて、僅かな魔力の発露が見られる】
少尉。魔術協会卒で、得意分野は風魔術。加えて、華蔵院一刀流を修めている。21歳。
実家は海運企業の華蔵院商会だが、数年前の水の国侵攻戦争に首を突っ込んだ事で絶縁状態に。
その後、知己であるロロケルムの誘いで軍に入る。
自らのプラン通りに進んでいる際には冷静だが、突然の事態に際しては混乱しがち。
蓮華よりはマシだが脳筋傾向も高いので、中規模以上の部隊の統率適正は高くない。
身体の丈夫さがウリの大男。名前は(中の人が考えて)ない。
何も悪くないのに
初にボコられ、警察署からの逃走劇に巻き込まれた挙句、ヤバい軍人に雇われた。
- ―――Preisnachlaß―――
おまけ。
一番上に表示してた奴を、格納して纏めています。
中の人的にコイツを喋らせるのが一番楽しいので、自己満足的な面が九割九分です。
〝戦争〟には≪ロマン≫が介在する────そう思わんか?
無論、一般的な戦争の事では無い。〝戦争〟だ。
“兵士”が、“戦場”で、“敵兵”を相手取り、“武器”で以て、《勝利を求める》───〝戦争〟だ
大量破壊兵器?戦闘機?アレは却下だ。民衆を巻き込むと『悲劇』が生まれてしまうではないか。
悲劇は邪魔にならぬよう、飽くまでも隠し味……メインは英雄譚でなければならん。
君たちも多かれ少なかれ、戦争小説は読んだ事が有るだろう。アレが面白いのは偏に、《マイナス》を削除しているからだ。
《マイナス》だらけの戦争小説など読めた物では有るまい。《プラス》を凝縮したからこその“物語”。
〝覚悟〟と〝気概〟を持つ者達の衝突───私は、そんな〝戦争〟をしたいのだ。
……さぁ、貴様の「気概」を見せろ………――――『矜持』を見せろ。
其れこそが〝戦争の終着点〟……《ロマン》へと続く「光明」だ―――。
『名』? 『首』? そんな物に拘泥するな……―――肝心要は「気概」だ、覚えておけシリウス君。
私、ロロケルム・ランガスターは〝持っている〟と自負している……貴様は如何なんだ?
薄汚い『殺し屋』なのか? 其れとも逃げ惑う『野兎』でしか無いのか?
其れとも―――…… 〝 戦 争 〟 す る 覚 悟 を 決 め た ≪ 兵 士 ≫ な の か ?
────市街戦は、不愉快だ。
〝戦争〟とはそもそも、共同体員に利益を齎す為の物なのだ。
攻める側は、共同体に新規に加入する物体を物理的に破壊しようとしている。
守る側は、野戦でも仕掛ければいいものを──守るべき物を危機に曝しながら戦っているのだ。
────民衆まで巻き込んだ日には、とても不愉快だ。
婦人の金切り声、幼児の泣き声、大の男の命乞い。
私はそれらを聴いた瞬間、耳の奥の蝸牛を押し潰したい衝動に駆られる。
不愉快だから聴きたくないのか、聴きたくないから不愉快なのかは知らん。
そして────────世界には、≪ロマン≫の無い戦争が圧倒的に多い。
……道理道理道理道理――君は道理の妖怪か何かか、青年。
道理など、〝戦場〟では当てにならん。 ……思い返してみろ。
君は今、私に『吹き飛ばされる』事を想定したか?
……今の拳は、〝能力〟抜きならば屁にもならん筈だ。
そして恐らく、此処までの戦闘で君は……〝私の能力〟を看破しては居ない。
詰まり、だ。 『此処では何が起こるか判りはしない』のだ――無論、私にとっても、な。
道理など捨ててしまえ。 目の前に存在する“事象”から〝経験則〟で判断しろ――。
……道理を信じぬ私は、〝今から一撃も当てられず、君に一撃を入れる〟積もりだぞ。
…、…『一騎討ち』を為す者は「莫迦」だが、其処には〝矜持〟が有る。
圧倒的なリスク。其処での決着は、大勢に全く影響を与えない。
ならば、何故、人は〝一対一の戦争〟を生み出したのか――、
――……、≪ロマン≫が有るからだ。
〝理解しかねる〟、と言うのは。
…、…貴様等の様に執務室から足を動さず電子画面を通じて政治遊戯に興じ朝には安穏の中で目を覚まし夜には豚の如く虚栄を喰い争う塵芥に私の〝矜持〟を測る資格は無い。
── と言う事だ。
私を『買う』?──、その阿呆面から放たれる莫迦な言葉は、一分に一度までに抑えろ。
断言しよう。 貴様等は〝富嶽会〟に『斬られる』。 …、…〝矜持〟無き者が『戦争ごっこ』に興じた時、しっぺ返しは必ず来る。
貴様等が此処まで〝生きている〟のは、『運が良い』だけだ。 ──、だが、その運も、『覚悟』には捻り潰される。
…、…あぁ、呆けているな。ならば、分かりやすく言ってやろう。
〝クソ喰らえ〟、だ。
最終更新:2014年06月27日 01:28