~お蔵入りイベント発掘プロジェクト~
このプロジェクトは台本形式で進行します。
『燃ゆる山にて轟く、硬き雷鳴の音。』
開催しなかった理由:時期を逃した、敵がロール向けでない
時期:2016年春~夏ごろ
登場人物及び地名など
- ブレイザーシティ:火の国にある市の1つ。何かと不運だが、しぶとい。
- 紅蓮山:火の国にある火山。
- 市長:ブレイザーシティ市長。市と市民のために働く堅実的かつ大胆で現場主義な40代半ばの男性。最近性格が変わったと噂される。
- 秘書:市長の秘書。耐性付与能力を持つ女性。市長のことをよく見ている。
- 鉱夫/受付/調査員A/調査員B/一般人A/一般人B/一般人C:モブ。
- A:氷を生成し、生成したそれを操作できる能力者。
- B:水を生成し、生成したそれを操作できる能力者。
- C:既存かつ制御者が自分以外にいない岩石を操作できる能力者。
- ヒエヒエアメ:体を内部から冷やしつつ、熱への耐性を与えるエキスをたっぷり含んだハッカ味の飴。某ゲーム風に言うと、暑さ無効+火耐性【大】を一定時間付与。
1,紅蓮山・廃坑内部
人工的な明かりは1つもないが、赤熱する石たちによって夕暮れ時程度には明るい廃坑の通路。
鉱夫、その通路をゆっくりぼんやり歩く。急にハッとする。
鉱夫「……ありゃー、ここ廃坑の方じゃあないの。
ぼけーっと歩いてちゃ駄目だね、まったく」
鉱夫、ため息を付く。とりあえず周りを見渡してみると、分岐点が目に入る。
鉱夫、左の方にあるそれに顔を向ける。
鉱夫「お? こんな道あったかな……?」
鉱夫、炭鉱内部の地図を取り出し、確認。
鉱夫「ないよな……うーむ……よし、報告しよう」
鉱夫、来た道を引き返す。
2,市役所・窓口
先程の鉱夫が市役所の窓口にいる。
鉱夫「……ってわけなんですよ」
受付「なるほど……わかりました、調査員を派遣しましょう」
鉱夫「ありがとうございます」
3,紅蓮山・廃坑内部
鉱夫が見つけた分岐点に立つ、2人の人物。
調査員A「ここか……」
調査員B「さて、何が出るかな」
調査員たち、分岐点を左に曲がり、その先へ進む。
他の通路と代わり映えのない長い通路が続く。
調査員A「お、開けてきたぞ」
調査員B「よーし、さっさと調査して帰るぞ!」
通路の先から明るい光が差し込み始める。
調査員たち、少し駆け足になる。
調査員A「えっ」
4,紅蓮山・広場
目の前には溶岩の川が流れる、広い空間が広がっていた。
そして、その空間には黄色いゴーレムが無数にうごめく。
調査員たちに気づいたらしいゴーレムが、そちらに顔を向ける。
調査員A「ぎゃああああ!」
調査員B「あ、あわわわ……て、撤収!」
調査員たち、広場に足を踏み入れることなく、逃げるようにして立ち去る。
5,市役所・市長室
秘書「調査結果です」
市長「ありがとう」
秘書、市長に紅蓮山調査の報告書を渡す。
市長、それを受け取り目を通し始める。
市長「――黄色いゴーレムが無数に、か」
秘書「ええ、どうやらそのようです」
市長「紅蓮山は資源の宝庫だ。開拓すれば珍しい資源が得られるかもしれない。
だが、それには危険を伴うだろう。殲滅するには能力者の手を借りねば」
秘書「依頼を出しますか?」
市長「頼む」
秘書「了解いたしました。それでは失礼します」
秘書、一礼してから市長室から立ち去る。
6,街の広場
いつも賑わっており、緑豊かで噴水のあるおしゃれな広場。
そこに建てられた掲示板に貼られた依頼を見る人々がいる。
一般人A「紅蓮山の新しいエリアに巣食うゴーレム殲滅作戦だってよ!」
一般人B「ゴーレム! 素材高く売れそうじゃね?」
一般人A「いやー、どうだろう。でも、紅蓮山の新しいエリア……レア鉱石とかあるかも!」
一般人C「現地採集OKって太っ腹だよな~。まあ、俺らはどうあがいても行けないけど」
一般人A「それ言っちゃあお終いよ」
一般人B「ほんとそれな」
一般人たち、掲示板から立ち去る。
7,紅蓮山・入り口
市長と秘書、そして3人の能力者(A,B,C)がいる。
市長「依頼を受けてくださりありがとうございます。
紅蓮山で発見された新しいエリアに住むゴーレム……
皆様にはそれを殲滅していただきたいと思っております。
さて、早速紅蓮山の坑道に入っていただくことになるのですが、その前に」
市長、秘書の方に目線を移動する。
秘書「はい、私が坑道に入るための耐性を授けます。
紅蓮山は観光名所ですが、坑道の方は非常に高温かつ有毒ガスが充満しております。
無策で入れば最悪死んでしまうでしょう。それだけは避けさせていただければと思います。
では、失礼いたします」
秘書、まずはAの手を両手で握り、目を閉じる。
手の部分が淡く発光する。そして手を離す。
秘書、次はBに対して同じ行動を始める。
A「おお、入り口からの熱風が熱くなくなったぞ」
秘書、Cに対しても同じ行動を始める。
B「本当だ。全然熱くない、それに煙さも消えた」
秘書、市長の隣に戻る。
C「凄いわね。持ってきたヒエヒエアメとかガスマスクとかが無駄になりそう」
市長、3人の方に目線を移動する。
市長「――では、本日はよろしくお願いいたします」
市長、3人に対して頭を下げた後、坑道の内部へ誘導する。
3人、それに従い坑道の内部へ足を踏み入れる。
秘書、4人を見送る。
8,紅蓮山・広場
4人は広場の入口に辿り着いた。
市長「兵器などを持ってきておりますので、必要があればお申し付けください」
A「オッケー、まあ今のところ必要ないな」
B「だな」
C「行きましょ」
3人、広場へ足を踏み入れる。
市長、持参した兵器を担ぎ、3人の後ろを追う。
ゴーレムたちが一斉に4人へ顔を向ける。遅れて、体も。
A「一気にバッサバッサとなぎ倒してやるぜ!」
A、両手に氷の刀をそれぞれ1本ずつ生成し、ゴーレムに向けて突撃。
射程距離内に入ったらすぐさまそれを振り下ろす。
氷の刀が砕ける。
A「ちっ、硬え」
C「斬撃は効きづらいみたいね、だったらこれはどう!?」
C、地面に落ちている岩を遠隔で持ち上げる。
その岩をゴーレムに向けて勢い良く発射。
ゴーレムと岩、両方共が砕け散る。
黄色い宝石のようなものが転がる。
C「よしっ」
ゴーレムの破片が蠢く。宝石に向けて吸い寄せられていく。
市長「ゴーレムは核が生きている限り蘇ってしまいます!
おそらく、その黄色い宝石のようなものが核! です!」
A、その言葉を聞いて、宝石を踏み潰そうとするが、失敗し転倒しかける。
A「横着は駄目か」
A、バランスを立て直しつつ、氷塊を1つ生成し宝石に向けて勢い良く発射。
宝石は砕け、ゴーレムの破片の蠢きも停止。
B「くるぞッ!」
1体倒した程度では頭数の違いがわからない数ほどのゴーレムたちが4人に襲い掛かってくる。
B「俺が足止めをする!」
B、水を生成、操作。ゴーレムたちに水が絡まってゆく。
A「センキュー、さあぶっ壊しタイムの開始だ!」
それによって生まれた隙を付いて、AとCが次々とゴーレムを破壊していく。
市長「砕け散れ!」
市長、3人とはやや距離を離しつつ別の方向にいるゴーレムに向けて、バズーカによる砲撃。
そして着弾。ゴーレムが粉砕されていく。
9,同一地点
次々と粉砕されていくゴーレムたち。
一方、4人の方も、幾らかダメージを受けている様子。
A「何だあいつ、やたらでかいぞ!」
ようやく数が減ったと実感した時、奥から現れる数倍は大きなゴーレム。
B「ボスかな? めっちゃ怒ってる気がする」
C「トーゼンでしょ、よーし先手必勝!
死んだゴーレムの破片なら操作可能!」
C、辺りに散らばったゴーレムやその他岩石の破片を能力でかき集め、
大きなゴーレムに向けて発射。体が多少欠けるダメージ。
大きなゴーレムの体表に電気がほとばしる。
B「電気!? こいつ電気を扱うゴーレムなのか!」
大きなゴーレム、右腕を勢い良くBに向けて振り下ろす。
B、後方に退避するも避けきれず、地面に叩きつけられる。
AとC、Bの様子を素早く確認。
B「痺れる……」
A「よかった、生きてるな」
C「大きいから……粉砕してから核を潰すより、先に核を潰した方が良いかも」
A「オッケー」
C、溶岩を能力で引き寄せ、大きなゴーレムの胸部へかける。
ノーダメージ。溶岩が貼り付く。胸部に電気がほとばしる。
C「溶けない! さすが火山暮らし、熱耐性バッチリ。
電気を扱ってるんだから、多分電気にも強そうね」
C、岩石を引き寄せる。
大きなゴーレム、腕を右から左へ薙ぐ。
C、引き寄せた岩石をそのまま盾にする。岩石は粉砕され、Cの体に幾つか突き刺さる。
大きなゴーレムの腕が大きく破損する。
C「部下も使ってないだけで電気扱えるのかも。充電されると悪いから、ゴーレムの破片は控えめにしましょ」
ゴーレムたちが4人に襲いかかる。
B「市長、後は頼みます!」
B、水を操作し一部のゴーレムを捕らえ、市長が攻撃しやすい位置に向けてぶん投げる。
市長、すかさずバズーカを発射しゴーレムを粉砕。
A「でかいつららだ! くらいやがれッ!」
A、大きなゴーレムの胸部に向けて巨大なつららを3本発射。
大きなゴーレム、1本は叩き割ったが、後の2本は頭部に突き刺さる。
体温が急激に冷やされ、ヒビが入る。
A「頭か……まあ良いか、炸裂!」
A、つららを急激に膨張させ、破裂させる。
大きなゴーレムの頭部に入っていたヒビが拡大し、砕ける。
辺りにつららの破片が散るが、すぐさま消滅。そしてゴーレムの胸部付近で複数回の小爆発。
A「なんだ……? 俺はこんなことしてないぞ」
大きなゴーレム、周囲に散らばったゴーレムたちの破片を吸い寄せ、破損した体を補強してゆく。
更に、破損していない部分にも破片を吸い寄せ、最初よりもより大きな状態になる。
B「自己修復能力持ち……いや、それ以上の能力! 厄介だな」
A「一気に攻めて核を破壊しないと……どうやって?」
C「決まってるじゃない。ゴリ押しよ」
既に通常のゴーレムは殆どいなくなっていた。
9,同一地点
大きなゴーレム以外のゴーレムは全てバラバラになっている。
市長「この大きなゴーレムが他のゴーレムと同じ構造であるならば、
核は胸部中央……つまり大体心臓辺りの位置にあるはずです。
いきますよ、……Fire!」
市長、大きなゴーレムの胸部に向けてバズーカを発射。
大きく破壊されたものの、核は見えず。
A「修復される前に……撃ち込む!」
A、巨大な1本のつららを生成、大きなゴーレムに向けて発射する。
だが、それよりも早く、大きなゴーレムは自己修復を開始。同時に両腕による防御。
A「ゴリ押しが効かない!?」
C「厄介ね……」
B、考える。
B「……俺に考えがある」
10,同一地点
B「よし、いくぞ!」
4人、作戦会議を素早く済ませる。
大きなゴーレム、自身や他のゴーレムの破片を操作し、4人に向けて発射。
B「くっ、数が多い!」
B、水の盾で防御。他の3人への被害を抑える。
防ぎきれなかった破片が体に突き刺さってゆく。
A、Cは能力によって破片を防御。
市長はバズーカを盾にするも、防ぎきれず。
C「水の野郎、助かった! ……まずは私から!」
C、防御に使った岩石をそのまま攻撃に転用。
大きなゴーレムの脚部を覆うように包み込み、移動を阻害する。
B「よし、今だ!」
A「オッケー!」
AとBが攻撃を行う直前、何者かが射線を遮る。
火炎が辺りを包み込み、それに怯んだ2人は攻撃を行えず。
A「なんだ!?」
射線を遮った者の正体は、全長5m程の東洋の龍。黄金色の眼が、怒りに染まっている。
龍「グオオアアーーッ!!」
龍、大きなゴーレムの背後に回り込み、大きなゴーレムに向けて火炎を吐く。
大きなゴーレムにほとばしる電気が強くなってゆく。
市長「……熱を電気に変えている!」
大きなゴーレム、大放電。辺りが電撃に包まれる。
11,紅蓮山・廃坑付近
鉱夫、坑道を歩く。すると突然、微弱な電流が体に刺さる。
鉱夫、驚いた様子で立ち止まる。
鉱夫「……うおおっ、急にビリっと来たぁ!
なんだ……? あっちは確か見知らぬ道ができていた廃坑の方……
そう言えば、ゴーレム殲滅作戦の実行日は今日だったような……激しいねえ。
おっ、なんか肩コリがスッキリした気がする」
鉱夫、何事もなかったかのように、歩みを再開する。
12,紅蓮山・広場
C「間一髪、ね……」
無数のゴーレムの破片が落下し、Cが出現。そして倒れる。
A「無茶しやがって!」
無数のゴーレムの破片が他の場所にも落下。
その中から、A・B・市長が出現。
市長「クソッ、厄介なドラゴンめ! 撃ち落としてくれる!
……おっと、バズーカは弾切れか。まあ問題ない」
市長、武器をマシンガンに変更。龍を射線に収められる位置へ移動した後、龍に向けて連射、連射、連射!
龍「グ、グウウオオ」
龍、地面に落ちる。
B「今度こそ!」
A「オーケー!」
Aは氷のつぶてを、Bは水を多量に生成し、大きなゴーレムに向けて発射。
大きなゴーレム、龍に気を取られていたため回避できず。
市長「新作の火炎瓶だッ!」
市長、火炎瓶を大きなゴーレムに向けて投擲。大きなゴーレムの足元が青白い火の海と化す。
A「逃げるぞ!」
AとB、Cを抱えつつ入り口に向けてダッシュ。
市長、龍に向けてゴーレムの破片が動く様子に気がつく。そして少し遅れて入り口へダッシュ。
氷水が大きなゴーレムの体を覆う。電流が氷水を巡る。
龍「ゴーレム!」
無数のゴーレムの破片が龍を包み、溶岩の川に飛び込んだ。
13,紅蓮山・広場前
爆音が鳴り響く。爆風が広場の方から吹く。
4人は爆風に煽られ、軽く吹き飛ばされる。
(回想)
4人、小さな声でやりとりをする。
B「作戦の内容は……
岩石で足止め、水と氷でゴーレム覆う。逃げる。
逃げたら、水や氷を消さずに操作だけ解除。
あとは溶岩を適当にぶっかけて……バーン!
わかった?」
A「オッケー」
C「りょ」
市長「溶岩より火炎瓶の方が安全かもしれません」
B「じゃあ、そっちで」
(回想終わり)
C以外、起き上がる。
A「ぜえぜえ……やったか!?」
B「やめろ、フラグを立てるな」
C、起き上がる。
C「うーん……はっ!」
B「大丈夫!?」
A「お前のお陰で助かったぜ、ありがとう」
C「多分大丈夫よ、どういたしまして」
4人、再び広場に移動する。
14,紅蓮山・広場
無数のゴーレムの破片が散らばっており、しかし動くものは1つもない。
市長「大変です、核がまだ壊れきっていません!」
市長、ある方向を指差す。その先には、欠けてはいるがまだ形を保っていて淡く発光する大きなゴーレムの核。
A「トドメだ!」
C「くらいなさい!」
A、大きな氷塊を生成し核に向けて発射。
C、周囲の岩石を集めて核に向けて発射。
それらが命中した核は砕け、淡い光を失い、今度こそ活動を停止した。
A「さーて、採集採集」
B「何が出るかな?」
C「動いたら暑くなってきちゃった。ヒエヒエアメ舐めよーっと」
3人、静かになった広場の探索を始める。
市長、その様子を入口付近で眺めながら、考え事をする。
市長「おそらく、あの龍はゴーレムに護られていた。
電気耐性があったのでなければ、
ゴーレムによって護られなくては大放電の際にダメージを受けていたはず。
しかし、かといってゴーレムを使役しているわけでもなさそうだった。
あの龍は一体……」
15,市役所・広場
シンプルだが綺麗に整備された広場に、市長と能力者たちの姿。
市長「本日はありがとうございました。こちらは我々からのお礼でございます」
市長、3人それぞれにずっしりと重たそうな布袋を渡す。
3人、受け取る。
A「おお、中々良い鉱石じゃん」
A、袋の中身を覗き込む。
市長「現地で得たものは約束通りそのままお持ち帰りください。
それでは、本日は本当にありがとうございました」
市長、深々とお辞儀をする。
3人、解散する。
市長、解散を確認した後、市役所内に足を運ぶ。
16,市役所・市長室
市長、秘書に傷口を治療されている。
秘書「お疲れ様です」
市長「新作兵器のバズーカを少々撃ちすぎたな。結構高価なんだが。
だが……あの広場から資源を採掘すれば、驚くほどの黒字になりそうだ」
秘書「早速、鉱夫らを派遣しますか?」
市長「勿論だ」
17,同一地点・数日後
秘書「市長、例の広場から得た資源ですが……
ゴーレムの破片に類似する性質を持った鉱石が多数採掘されたようです」
市長「やはり見つかったか、熱を電気に変える鉱石が。利用しない手はない。
しばらくは我々が独占しよう。まずは開発部門に回すぞ」
秘書「ゴーレムの破片はどうします?」
市長「それも回そう」
18,その後
(ナレーション)
それから数ヶ月後、紅蓮山の新たなエリアから採掘された鉱石は
ブレイザーシティの発展に大きく貢献した。
特に、熱を電気に変換する鉱石は非常に有用であった。
だが、それは新たな火種の原因ともなった――。
(END)
最終更新:2018年02月03日 22:41