『炎へいずる、欲望の災禍。』

~お蔵入りイベント発掘プロジェクト~

このプロジェクトは台本形式で進行します。



『炎へいずる、欲望の災禍。』

開催しなかった理由:時期を逃した、構想アバウト過ぎて終わらせ方が見えなかった
時期:2016年秋~冬、または2017年初頭ごろ



  • ブレイザーシティ:火の国にある市の1つ。最近は非常に豊か。
  • 火炎樹の森:火の国にある森。

  • 市長:ブレイザーシティ市長。40代半ばの男性。銃火器を華麗に使いこなすアグレッシブなおっさん。
  • 秘書:市長の秘書。30代後半の女性。各種権限が市長の次くらいにあるらしい。
  • 一般人A/一般人B/一般人C:モブ。

  • A:手か足から炎を出して操作もできる能力者。
  • B:ステンレスに似た金属を生成でき、限定的だが形状変化も可能な能力者。Cとは顔見知り。
  • C:闇の魔力を操る能力者。Bとは顔見知り。
  • D:両手をドリルに変えられる能力者。

  • ヒエヒエアメ:暑さ無効+火耐性【大】を一定時間付与する飴。ハッカ味。喉に味がめっちゃ残ってスースーする。


1,市役所・市長室

何の変哲も無い市長室の机に、古びた本が幾つか積まれている。

市長「ふむ……なるほど……」

市長、古びた本をじっくり読んでいる。
扉を何回かノックする音がする。

市長「どうぞ」

市長室の扉が開かれる。

秘書「失礼します」

という挨拶とお辞儀をした後、入室する秘書。

市長「もっと雑に入ってきて構わないといつも言っているだろう」
秘書「申し訳ございません」
市長「それに、もっと馴れ馴れしくて良い。……まあそれは置いといて、要件は?」
秘書「市の財政についての現状の資料をお持ちしました」

秘書、市長の机に紙の束を静かに置く。

市長「ありがとう」
秘書「ところで市長、何をお読みになられていたのですか?」

秘書、目線を軽く本の方に向ける。

市長「これか。……このあたりの伝説や言い伝えの本だ。ある言い伝えの情報が欲しくてな」
秘書「と、いいますと」
市長「火炎樹の森にはバケモノが封印されているから気をつけろという言い伝えが、近隣の村にある。
   だが、詳しいことは聞いてもわからなかった。だから調べていた。
   バケモノの話が本当ならば、いつ封印が解かれるかわからないからな」
秘書「何か収穫はありましたか?」
市長「ああ。それも特上のやつがな。
   封印されたバケモノは、2つの頭と腕、4本の脚と翼を持った、光り輝く水晶の獣。
   昔、人間たちが原因で獣が激怒し、それらが住む村を焦土に変えた。
   その獣に恐れをなした人々は獣を2つに分け、火炎樹の森のとある2地点に封印したそうだ」
秘書「……もしかしますか?」
市長「もしかする。とある地点の場所がこの本に書いてあった。行くしかないだろう?」
秘書「確かに方角は書いてありますが……その地点の基準となる場所が現在も存在するのでしょうか。
   そもそも正しいのかも……」

市長、秘書の言葉に割り込む。

市長「大丈夫だ、なんとかなるだろう。というわけで、助っ人として能力者を何人か確保したいんだが」
秘書「了解しました。それでは、失礼します」

秘書、市長に一礼した後、市長室から立ち去る。

市長「……」

市長、真顔で扉を見つめる。


2,街の広場

一般人A「へー、火炎樹の森に封印されてるヤツを封印されてるうちにぶっ殺そうキャンペーンだってさー」
一般人C「ほーん。んー、でもさ、おそらく封印するのが精一杯だったやつをぶっ殺すってできるのかな?」
一般人B「さあ。まあでも、市長のことだから何か方法考えてるんじゃあないの」
一般人C「だよなー、さすがに」

一般人たち、掲示板を見ながら雑談をする。
すると、黒いパーカーを着た黒ずくめの者が掲示板に近づいてくる。
一般人たち、引きながら無言で掲示板から立ち去る。

C「へえ、面白そうじゃん」

C、依頼に書かれた必要な項目をメモに記述し、立ち去る。


3,市役所・広場

よく整備された広場に、市長、秘書、そして3人の能力者たち。
Aの姿はない。

市長「本日は依頼を受けてくださりありがとうございます。
   ……おや、Aさんの姿がないようですが」

市長、周囲を見渡す。

B「俺は知らん」

B、Cの方をちらりと見る。

C「なぜ私に振る。知り合いならいざ知らず、今日始めて会う人間のことなど知らん」
D「まー、来なかったらウチらだけでさっさと出発しちゃいましょーよ」

上空から何かが迫ってくる。
5人は空を見る。正体は人影。人影が迫る。
人影が市長と秘書、3人の能力者の間に着地。ホコリが舞う。

D「けほっけほっ、煙っ! なにー? なに降ってきたのー?」
A「やっほー、A様の参上だぜ!」
市長「……お待ちしておりました」

BとC、呆れた様子でAの方を見る。

市長「さて、気を取り直して……本日は依頼を受けてくださりありがとうございます。
   早速、内容について説明いたします。といっても、依頼に書いてあるとおりですが」
A「んじゃさっさと行こうぜ!」
C「遅れてきたアンタが言うセリフ? それ」
市長「……改めて説明いたしますと、火炎樹の森のどこかに封印された獣を探し出し、討伐するのが今日の目的です。
   封印された場所と思われる位置は既に判明しておりますが、本当にそこであるかは未確認です。
   大幅に異なる可能性もありますが、予めご了承ください。
   また、もし別行動をとった際にも、集合や連絡を簡単に行える品をご用意しました」

秘書、4人に腕時計型の機器と巾着袋を手渡す。
4人、それぞれが機器を身につける。機器のモニターには5つの白い点が表示されている。

市長「このデバイスは、皆様の位置をリアルタイムで表示します。
   また、封印されていると思われる場所の地図も表示可能です。
   簡単な無線機能も備わっておりますので、ご活用ください」
B「これは?」
市長「その袋の中身は、火炎樹の森の高熱に耐えられるようにする効果を持った飴です。
   永続ではございませんので、定期的に摂取していただきたいと思います」
D「なるほど、つまりはヒエヒエアメじゃーん」
A「あと話すこと無いよな? いくぞー!」

A、広場の出口に向けて歩きだす。

市長「Aさん、そっちは逆方向ですし、移動にはこちらで用意した車を利用します」


4,火炎樹の森・入り口

燃え盛る木々から少し離れた位置に車が停まる。
市長と能力者4人が車から出てくる。

市長「……もし、獣が見つからなかった場合でも一定の報酬は用意しておりますのでご安心ください。
   それでは、いきましょう」
A「おー!」

5人、火炎樹の森に足を踏み入れる。


5,火炎樹の森・内部

内部は外から見た状況と同じく、燃え盛る木々が立ち並ぶ。

A「んじゃ、おっさきー」

A、両足から炎を出し、森の中へと消えていった。

市長「……せっかちですね」
D「急ぎすぎー、ムリー、モテなさそー」
C「……だが、ああいう輩ほど目的のものを最初に見つけるものだ。何故だか知らないが」
B「うむ。永遠の謎だ」

4人、呆れ顔でAが消えていった方向を見る。

市長「我々も行きましょうか」

4人の前に何者かの影が現れる。

D「クマだー! めっちゃ燃えてるウケるー」

その正体は、炎の毛皮を持ったクマ。
クマ、4人に向けて突進してくる。
4人、バラバラに避ける。

D「ちょっ、なんでウチの方にくんのー? テンション下がるー」

クマ、Dに向けて襲いかかる。

市長「! こっちからも来たッ」

更に同種のクマが2頭やってくる。
クマB、市長に襲いかかる。
クマC、BとCに襲いかかる。

それぞれがクマと戦っているうちに、それぞれ別の場所へと移動する。


6,同上・D中心

D「しつこいと嫌われるよ!」

D、両手のドリルでクマAの引き裂きをガード。
クマA、一瞬だけ動きが止まる。
D、すかさずクマAの心臓部に右手のドリルを突き刺す。
クマA、倒れる。

D「あー、はぐれちゃったー、マジ最悪。
  そーだ、せっかくだしクマの素材ゲットしなきゃ」

D、ナイフを取り出し、クマAの解体を始める。
毛皮を剥ぎ取り荷物にしまえば、地図を見ながら森の奥へと歩きだす。


7,同上・BC中心

BとC、既に息絶えたクマBを見下ろしている。

C「手荒い歓迎だな」
B「うむ」

Dからの無線が届く。

D(無線)「そっちはどおー?」
C「問題なく殺した」
D(無線)「さっすがー! あ、集合すんのメンドイからー、ウチはこのままクリスタルちゃん探すねー」
C「了解」

C、Bの方を見る。

C「市長は大丈夫だろうか」

B、無言で無線を市長に繋ぐ。


8,同上・市長中心

C(無線)「市長、大丈夫か」
市長「ええ、なんとか……」

市長、クマCの死骸の近くで怪我の応急処置を行っている。

C(無線)「今からそちらに向かう」
市長「了解です」

市長、一息つく。
BとC、市長のもとに辿り着く。
市長、BとCが何か言う前に素早く口を開く。

市長「ご心配なく。この程度の怪我は何度も負いましたから」
B「……そうか」
市長「Dさんは?」
C「あいつはそのまま別行動だそうだ」
市長「了解しました。それでは、気を取り直して行きましょう」

3人、歩きだす。


9,同上・A中心

A「ちくしょおおーーっ!!」

A、手足から炎を噴射し高速で木々の間をすり抜け飛行する。
背後から迫るのは、ハトほどの大きさをしたフェニックスのような鳥の群れ。

A「ちょっと卵食べただけじゃんよー! おいしく食べたんだから許せよー!」

A、右を見る。遺跡の入口のようなものを発見。

A「よーし」

A、遺跡の入口を一旦無視し、フェニックスたちが遺跡の入口を通り過ぎたタイミングで急旋回。
そのまま遺跡の入口にへと侵入し、身を隠す。着地時、階段に背中を擦り付け、傷を作る。
フェニックスたち、Aを見失い去ってゆく。
A、フェニックスたちの羽ばたきの音が聞こえなくなってから口を開く。

A「……いってぇー! よし、せっかくだし進んでみよーっと。しっかし階段なげーなー」

A、階段を下り、遺跡の内部へと足を進める。


10,遺跡内部

薄暗い階段を抜けた先に広がる、広々とした石造りの明るい部屋。
窓の類は一切なく、どうやらあちこちに生える水晶が発光しているためこの明るさのようだ。

A「おっ、キラキラ発見!」

A、部屋の中央へと移動。
中央には、大きな光り輝く水晶の柱が何本か集まり出来た塊がある。
塊は縄でぐるぐる巻きにされており、あちこちに札が貼られている。

A「おみやげにしたいなー、でも1人じゃ回収できないから……よーし、助っ人だ!
  あと、このヒモとか紙とか邪魔だし焼いとこーっと」

A、縄や札を左手から噴き出す火炎で焼いたり吹き飛ばしたりしつつ、右手で無線を操作する。


11,火炎樹の森・市長中心

長時間の探索により、日の差し込む位置が変わったようだ。

市長「地図によるとこの辺りのようですが……」
B「無いな」

3人、獣が封印されていると推測される場所にたどり着くも、
そこは他の場所と何ら変わりない風景。

市長「変わったことと言えば、カエンタケが大量に生えている程度ですね」
C「地図が間違ってたってことか?」
市長「当初の懸念通り、そういうことになります……申し訳ございません」
B「……さて、どうするか」
市長「この辺りを中心に探索してみましょう」

3人、解散しようとする。無線の音がする。解散を中止する。

A(無線)「市長! 市長! なんかキラキラしてんの見つけた!」
市長「本当ですか!?」
A(無線)「本当! あっ! キラキラしてんの動き始めた! やっべー、襲われる! ぎゃー!」

3人、顔を見合わせる。

市長「おそらく、……いえ、もしかするとですが、見つけたようです」
C「やはりなぜか見つけたか……」
B「永遠の謎だ」
市長「実際に見てみるまで確定はできませんが、ひとまずDさんには私が報告しておきます。
   ……結構遠いですね、この地図全くアテにならないですね」
C「市長が用意したんだろう」
市長「すみません」

3人、Aがいる地点に向けて早足で向かう。


12,遺跡内部

1つの頭と4つの翼を持った光り輝く水晶の獣が部屋中を飛び回っている。
辺りには水晶の破片が散乱しており、一部は未だ光り輝いている。
Aの体には大小様々な傷。水晶が刺さっていた痕も幾つか。

A「全然効かねー!」

A、火炎の渦を両手から放出し、獣の頭部を縛り付ける。
獣、少し苦しんだ後、強引に振り払う。

A「助っ人早くー!」

獣、Aに向けて水晶の槍を発射。
A、脚部から炎を噴き出し素早く回避。

市長「見つけたぞ!」
A「おそーーーい!!」

3人、封印地点に辿り着く。

C「いくぞ、B」
B「ああ」

B、イカリ状の金属を地面から生やす形で生成。鎖の部分を操作し、獣の胴体にイカリを突き刺す。
C、イカリが突き刺さった部分に向けて闇の波を発射。
獣、苦しみながら地面に落ちる。

A「うっひょ~、効果は抜群だぁ!」
市長「では私は、このバズーカを……!」

市長、獣のいない方向へ素早く振り向く。
その目線の先には、エメラルドグリーンの結晶で出来た人型の魔物。

魔物「人間。またボクの居場所を奪うつもりか。無害なのになぜ殺す」

(魔物は、幼い子供のような口調)

市長「また……? お前とは初対面のはずだ」
魔物「雷のゴーレム。人間が来なければずっと平和に暮らしていた」

BとC、イカリを振り払い再び飛び立った獣と戦っている。

市長「……まさかあの時の龍だとでも言うのか?」
魔物「そのとおり。だから、早く帰って! ボクは静かに平和に暮らしたい」
市長「それはできない相談だ。……我々は、この獣を倒さねばならない」
魔物「悪くないのになんで殺すの!」

魔物、鋭い結晶を市長に向けて発射。市長の左腕に突き刺さる。

市長「……知ってるさ」

市長、誰にも聞こえないほど小さな声量で呟く。


13,火炎樹の森・D中心

D、早足で遺跡へと向かう。腕に装備された機器から戦闘音が聞こえる。

D「ウチ逆方向に行ってたんじゃーん、マジテンション下がる」

D、右手に持っていた植物と左手に持っていたキノコをバッグにしまう。

D「あっ、このゲート! 多分、てか絶対そうでしょ」

D、遺跡の入口に辿り着く。

D「んー、でも無線の情報だと飛び回ってるって噂で、ウチ空中戦苦手なんだよね……あーっ、閃いた!」

D、4人が獣と交戦している地点の上に移動。
フルフェイスヘルメットのような装備を被り、両腕をドリルに変え、地面を掘り進む。


14,遺跡内部

A「あっちのキラキラ全然攻撃通んねーからこっち手伝うぜ!」
市長「ありがとうございます」

A、魔物に向けて炎の塊を幾つか発射。
魔物、炎の塊に向けて水のレーザーを発射。蒸発音と共に、炎はかき消される。

A「どっちもこっちも相性悪いぞー! ちくしょー!」

市長、魔物に向けてバズーカを発射。
魔物、跳躍してそれを回避、更に獣の背中に着地。

市長「素早い奴め」

獣、尻尾で辺りを薙ぐ。
B、金属の土台を作成し、近くにいたCと共にその上に避難。
A、脚から炎を噴射して上空に避難。
市長、尻尾が命中して壁に叩きつけられる。

C「市長!」
B「……まずは敵だ」

魔物、上空を飛ぶAに向けて水のレーザーを発射。
A、炎を手から放出し盾を作るも、消しきれずレーザーが命中。
落下するも、地面に激突する前に体勢を立て直す。

B、先程のイカリを手に持ち、再び発射。
獣、イカリを尻尾ではたき落とす。イカリの鎖が尻尾に絡みつき、移動を阻害。
C、獣の胸部に向けて闇の刃を発射。獣が暴れていたため、狙いがそれて翼の一枚に命中。

A「いいこと思いついた!」

A、獣の頭部の真下に移動、そして上に向けて勢い良く炎を噴射。
獣、勢いに押されて頭部を天井にぶつける。ヒビが入り、小さな瓦礫が幾つか落ちてくる。
獣、翼を動かし暴れまわった後、ぴたっと動きを止める。

A「このまま押さえつけてやるぜ!」

魔物、小さな結晶の雨を降らせる。結晶から水が吹き出す。
獣の体に宿る光が弱まる。

市長「……まずい! 全員防御しろーっ!」

獣、無数の光のレーザーを辺りに撒き散らす。
光は結晶や水、金属や地面の水晶に反射し、様々な角度から4人を襲う。


15,火炎樹の森・D中心

時は少しさかのぼる。
D、無線で戦闘の様子を聞きつつ、蛇行しながら地面を掘り進めている。

D「よし、もうちょいで……うわっ! あっつ!」

Dの顔に向けて噴き出してくる炎。
D、素早くドリルを盾にしつつ、後方へ退避。

D「マジ最悪なんですけど……ん? 押さえつけてやるぜ?」

噴き出す炎が止む。
D、その地点を見る。地中に明かりが差し込んでくる。

D「わかった、これビンゴっしょ」

差し込む明かりが急激に強まる。

D「無線的にヤバイ状況っぽい! 今マッハで行くからね!」


16,遺跡内部

C「……っ、焼ける……!」

B、金属を生成し防ごうとする。
しかし、金属に光が反射し、更に隙間からも光が襲ってくるため、防ぎきれない。
C、闇を生成し防ごうとするも、間に合わない。
Aと市長、顔を腕で覆うくらいしかできない。

市長「このままでは……くっ、無理にでもバズーカを……」

天井が砕ける音がする。そして次の瞬間、獣の頭が、体が、地面に落ちる。光が止む。

D「ごめーん、遅くなっちゃったー」

火傷を負った土まみれのDが、両腕のドリルを獣の頭に何度も何度も突き刺して攻撃している。

D「たぶん炎噴き出す奴のおかげで頭ピンポいけたよー」
A「俺グッジョブじゃーん」

魔物、鋭い結晶を大量にDに向けて発射。
市長、その隙を狙ってバズーカを魔物に向けて発射。
魔物、バズーカの直撃を受けて吹き飛ばされる。
D、結晶の直撃を受け、攻撃の手を止める。
獣、体を起こそうとする。

市長「獣はまだ生きている! 全身をくまなく粉砕しろっ!」
D「りょ」

市長、獣の胸部に向けてバズーカを何度も発射。水晶や獣の破片が辺りに飛び散ってゆく。
D、獣の身を手当たり次第ドリルで突き、貫く。

B「……頼む」
C「わかった」

B、巨大な金属の鎚を生成。
C、鎚に闇をまとわせる。
B、鎚を何度も振り下ろす。床ごと獣を粉砕する音が響き渡る。

A「何しよう……おっ! どっかーん!」

A、市長の荷物を漁り、中から出てきた手榴弾を2つ同時に投げる。
それに気がついた4人、獣から離れる。爆発。多少巻き込まれる。

市長「投げるなら一言声をかけてくれ」
A「ごめーん」

ボロボロになった獣はまばゆい光に包まれ、爆発。光の粒子となって消滅する。
胸部があっただろう位置に、半球の形をした光り輝く水晶のようなものが残される。
市長、複雑そうな表情で水晶を拾う。

魔物、立ち上がる。体はヒビだらけ。
後ろではAが騒がしく、他の3人もAに気を取られている様子。

魔物「……悪くないってわかってるのに、なんで殺したの」
市長「聞こえていたか。……それが、獣のためになるからだ」

市長、魔物に接近し胸部に向けて回し蹴り。ヒビが広がり、魔物の体が崩壊。
胸部の中心にあった核が地面に転がる。
核を囲むような形で水晶の小さな柱が生える。
核に向けて、どこからか現れた水晶の杭が落下する。核が砕け、魔物の体から力が失われる。

市長「そして、お前も……今までの恨みで私を殺しに来ると悪いからな、殺られる前に殺っておく」


17,火炎樹の森・入り口(夜)

森から5人が現れる。近くには車が止められており、運転席には秘書の姿。

市長「本日はありがとうございました」
A「いいってことよ!」
B「……」
C「ああ」
D「どーいたしましてー」

市長、深々と礼をする。傷口が傷んだのか、小さなうめき声を上げる。

市長「報酬は市に帰ってからお渡しします。
   現地で採集などした素材はそのままお持ち帰り頂いて構いません。それでは、帰りましょう」

5人、車に乗り込む。車が街に向けて走り出す。


18,ブレイザーシティ・居酒屋(夜)

客層はあまりよろしくないこの店で、BとCが飲んでいる。

C「仕事上がりの一杯はうまいな」
B「ああ」

C、枝豆をひたすら食べている。

B「ところで、C。気づいていたか?」
C「……何にだ」
B「獣が残した半球の水晶はどこへ行った? そして、魔物の核を潰した水晶はどこから現れた?」
C「見てなかったから知らん。……が、一番合理的な答えがある。市長が水晶を拾い、獣の力を得た。それが答えだ」
B「獣を殺すのが目的としか我々は聞いていない」
C「…………市長、何か隠し事をしてそうだな」

C、枝豆を再び食べ始める。


19,市役所・市長室(数日後)

秘書「市長」
市長「どうした」
秘書「……今回の依頼は、本当に獣を討伐することが目的だったのですか?」
市長「…………ああ」
秘書「少なくとも、この部屋にあった本には『獣が激怒した』とは書かれておりませんでした。
   獣は理由なく人々を襲った。獣は薄笑いを浮かべながら楽しそうに村を焼き尽くした。そう書かれておりました」
市長「…………」
秘書「そして、無線の内容を聞いておりました」
市長「…………」
秘書「……正直に書いたら依頼を受け付けてくれないだろうという判断ですね?」
市長「……そうだ」
秘書「市長、わかりやすい嘘をつきすぎると不審がられますので気をつけてください。それでは失礼します」

秘書、市長室から立ち去る。

市長「……さすがは私の秘書だ。さて、もう片方の場所はきっちり探してから依頼を出そう。
   少々焦りすぎた。今回は偶然見つかったからいいものの……あれほど誤差があるとは思わなかった」


20,その後

(ナレーション)

光り輝く水晶の獣の1体は倒された。市長は残るもう1体の場所を探す。
しかし、本当に獣を倒すことが目的だったのだろうか。
獣は悪くない、それは本当なのだろうか。幾つかの謎が残される結果となった。

(END)

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最終更新:2018年02月22日 20:08