ユートピアは、トマス・モア(1478年2月7日 ~ 1535年7月6日)がその作品の中ででっち上げた、南アメリカのどこぞにあることになっている、理想郷である。

 現代人からするとその様はびっくりするほどディストピアである。

ユートピア は「どこにもない島」の意であるが、尤もらしく「ユートプス王」が南米にあるアブラクサ半島を切り離して建国したと設定される。

 中には、一応の首都アモ―ロート(英語で「Dark」)と同じ計画で建設された54の都市がある。国民には服(既製品で皮製)、奴隷が提供される。家畜は牛のみで馬は忌避され、屠畜は専門家が行う。狩猟は下賤なものとして行われない。
 病気に罹った人は国を挙げての医療体制の限りが尽くされ治療されるが、症状が酷くなった場合、自死が奨励される。

 他には、近隣にある、版図を広げようと思ったら、大変なことになった国アコーラ*1ギリシアの東方にある警報が独特なポリレロス*2、王の義務としての税制が独特なマカリア*3などが登場する。

 軍事の訓練を男女ともに受けるユートピアで、戦争は、抗争が行われるAB間の内、義のある方へ付いて行われる。ユートピアは同盟国の何人かを軍の指揮官クラスに立て、自身らは敵の一番偉い人の首を獲るのに専念し、戦闘要員に近所の勇猛すぎる戦闘民族を当てる。
 このザポレット*4は、かの地の東方500マイルにあり、土地は峻厳な山々と森林に囲まれ、人民は耕作をせず、牧畜くらいしかいいところがない。戦争がない時は狩猟か泥棒をやるこの一族は、金払いがよっぽどよくないと扱えない或いは敵が、雇われ方より高いお賃金を提示すると寝返るのが普通なので、金銭関係に執着がないユートピア人のみが良く彼らを扱えるという。

主な参考文献

『世界文学に見る架空地名大事典』
トマス・モア『ユートピア』岩波文庫ワイド版
 山北篤監修『幻想地名事典』

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最終更新:2021年07月09日 15:42

*1 「無何有郷の人」の意。『世界文学に見る架空地名大事典』『幻想地名事典』281頁ではアコーラ人の習俗と同じ記述が「ノーランディア(nolandia)」

*2 『世界文学に見る架空地名大事典』『幻想地名事典』255頁では人の習俗と同じ記述が「トールストリア(Tallstoria)」

*3 『世界文学に見る架空地名大事典』『幻想地名事典』この王の行いと同じ記述が「ハッピーランド(happIland)」

*4 Ready Seller 「喜んで身売りするもの」の意。『世界文学に見る架空地名大事典』では、ユートピアの項に「ヴェナーリア」と言う表記でこの記述と同じものが出ており、『幻想地名事典』では66頁で「ヴェナーリア」を紹介している