ニブヌ(Nivnu)
台湾の先住民ツォウ族の女神。漢字表記は妮芙努。
大昔、美しい女神ニブヌが天から台湾の玉山に降りてきて人間を作り、それから次々と色々なものを作った。そして人間が亡くなると、すぐに神の術で生き返らせてくれた。四度目まではすぐに生き返らせてくれたが、五度目になるともうそれでおしまいであった。ある日のこと、ニブヌが出かけようとしたら、ちょうどその時に一人の人間が亡くなった。だが「あっ、これは2度目だな、よし生き返る」と思ったニブヌはつい、そのまま忘れて用事に出てしまった。その時、そこを通りかかったソエソハという神がこれを見て大層悲しみ、遺体を埋めて側でおいおいと泣いていた。そして帰ってきたニブヌは生き返らせる人間のことを思い出してハッとしたが、もう手遅れになってしまったことに気がつき、どうしても生き返らせることができなかった。それ以来、ツォウ族は亡くなったら二度と生き返れなくなり、遺体を家の中に深く埋めて側で泣く習慣ができた。しかし万物を愛するニブヌの評判は大したものであり、ソエソハはニブヌのことが羨ましくてたまらなかった。ニブヌが一粒の粟を炊くとみるみる釜一杯になるが、ソエソハがやると豚や牛の糞になってしまったり、ニブヌがやる通りに真似て酒を作っても汚いものになってしまったり、どうしても敵わなかったという。
参考文献
松村武雄『支那・台湾・
朝鮮神話と伝説』506頁
中西芳朗『神話美談』381頁
最終更新:2023年06月24日 14:59