中国の四大奇書の一つ、唐代の「西遊記」の主人公・三蔵法師(玄奘)と共に天竺へお経を取りに行く旅の中で、猪八戒や沙悟浄と共に活躍する猿。
孫悟空は宇宙ができた時から存在する大きな石から生まれた猿であり、仙人のもとで修行して、72変化の術や、抜いた毛を小猿に変える術、觔斗雲や伸縮自在の棒術などを体得し、天下無双の力を身につけた。しかし、傍若無人に暴れ竜宮や天界を騒がせ、ついに如来の手によって捕えられ、五行山の岩に三蔵法師に救われるまで500年間幽閉されたのである。
民間では斉天大聖の名で信仰を集め、彼を祀る廟は数多く見られる。また三蔵法師に弟子入りする以前には美猴王と名乗っており、中国ではむしろこちらの名前のほうが一般的である。
彼の持つ武器『如意金箍棒』については、物語で悟空が自分に合う武器を探し求めていた時、竜宮の龍王が伝説の「夏」王朝が作り出した神珍鉄と呼ばれる巨大な鉄の柱を出してきた。長さは4メートル、重さは2トンにもなるという。もちろん悟空ならば簡単に扱えるが、持ち運びの不便さに不平をもたらす。すると、巨大な鉄の柱はみるみると縮み、針ほどの大きさになる。悟空はこれに満足し、耳の穴に入れて持ち帰ったという。その後三蔵法師のお供をし、15年の旅を経て天竺まで辿り着き、経典を手に入れる。見事役目を果たした孫悟空は仏の位を授かり、天下の暴れん坊はいつしか悟りを開き、仏の道を極めたのである。