マミー(Mummy)


ミイラのこと。
コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』によれば、19世紀の近東の水夫たちはミイラが嵐を招くと信じていたため、ミイラの積み込みは水夫に内緒で行うしかなかったらしい。こんな話がある。ラドジヴィル家の君主が、エジプトでミイラを男性と女性のペアで2体購入した。彼はミイラを箱積めして、ひそかに船に積み込ませヨーロッパに持ち帰ろうとしていた。トルコ人は、キリスト教徒がミイラを魔術に使うと考えていたため、ミイラの持ち出しを容易に許可しなかった。なので、箱の中身は彼と2人の召使い以外は誰も知らなかった。ところが、ミイラを積んだ船が海に出ると激しい嵐に何度も見舞われ、難破するのも時間の問題であった。そこで、同行していたポーランド人の司祭が祈りを唱えてラドジヴィルと従者たちが答唱を返した。すると司祭は苦しげな様子で、黒くて醜い2人の幽霊が自分を苦しめ脅かしていると言ったのだ。皆は、司祭が難破の恐怖で少しおかしくなっているのだろうと考えた。嵐が静まると、司祭も落ち着いたように見えた。だが再び嵐が起こると、司祭は激しく苦しみ出した。そして、2体のミイラを海に投げ捨てると司祭は苦しまなくなり、嵐も止んだ。

参考文献

 健部伸明/怪兵隊『幻想世界の住人たち』61頁
 コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』
 野宮麻未『世界の本当に怖い妖怪・モンスター 下巻』90頁
 山口敏太郎『大迫力!世界のモンスター・幻獣大百科』198頁

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最終更新:2023年09月13日 00:36