クラー(Khla, Khlaa, ខ្លា)
カンボジアの言葉で虎のこと。
とある王国の国王と王妃と四人の大臣と一人の侍従の七人が
インドで変身術を学んだが、帰りに密林に迷い込んで食糧も尽きてしまった。そこで全員で一匹の猛獣に変身して獣を捕食しながら帰ることを侍従が提案した。
王国の柱と呼ばれた四人の大臣はがっしりした力強い四肢になり、国王の助けとなった侍従は獲物を探すのに役立つ尻尾になり、しなやかな体付きの王妃は胴体になり、厳めしい髭を生やした国王は頭部になった。
こうしてこの世に生まれたこの新種の猛獣は虎と名付けられて密林の王者になり、天敵のいない密林での暮らしを楽しむうちに自分が人間であったことも忘れてしまった。
民話以外で虎と言えば、虎と牛に分かれた二人のプレイヤーが対戦するクラーシーコー(Khla Si Ko ខ្លាសុីគោ)という伝統ゲームもある。
このゲームを遊ぶために必要なのは4×4マスのゲーム盤、虎の駒4個、牛の駒8個。
虎の駒を四方に4個置いた状態でゲームスタート、先手は牛のプレイヤーで盤上に牛を配置、次のターンから虎と牛の両プレイヤーが交互に駒を動かしていく。虎も牛も縦横にしか動けず斜めには動かせない。
虎のプレイヤーは自ターンで虎を1マスずつ動かすが、隣に牛がいれば虎は牛を飛び越えるように2マス動いて食べる(牛の駒を取る)ことができる。虎は虎を飛び越せず、牛の先のマスが空いていない場合も飛び越せない。
牛のプレイヤーは自ターンで盤上に配置していない控えの牛を空いているマスに配置するか、もしくは既に盤上に配置された牛を1マスずつ動かすことができる。控えの牛を配置したターンに牛を動かすことはできず、さらに牛は他の駒を飛び越すこともできない。虎のターンで虎が動けず牛が食べられない状態になれば牛のプレイヤーの勝ちとなる。
参考文献
高橋宏明『カンボジアの民話世界』51, 62, 130頁
内田莉莎子/君島久子/山内清子/鈴木裕子『こども世界の民話(上)』201頁
矢崎源九郎『子どもに聞かせる世界の民話』167頁
学研『世界の国ぐに 民話と風土 11
ミャンマー・タイ・
ベトナム・
ラオス・カンボジア』89頁
河野六郎/前野直淋/松原至大/松山納『中国・東南アジアの民話』301, 304頁
高橋浩徳『伝統ゲーム大事典 子供から大人まであそべる世界の遊戯』88頁
最終更新:2025年08月29日 16:54