雉子梟(Kijifukurō)
キジフクロウと読む。
『隠顕曽我物語』に記述がある怪鳥。
雉子のような体、梟のような頭部、黒い羽、五色に光り輝く尾を有し、言葉にできないほどの凄まじい羽音を立てる。
鎌倉幕府の将軍が参詣しようとして工藤祐経を供奉に命じたが、祐経は冬に海道で敵の曽我兄弟に出会ってしまったためひたすら用心していて、道すがら害に遭うのを避けるために虚病を構えてまでして将軍のお供をしなかった。そしてそんな祐経の元に現れたのがこの怪鳥である。
神奈川県にあった祐経の屋敷で、年始の七日の暮れ方の時間帯に起きた出来事。屋敷の庇の方から怪鳥が飛び入ってきて居間を飛び回った。家来の者たちが棒を持って追い回してもなかなか退治できなかったが、一人の者が半弓で射ったことでようやく大地に落ちたので、皆で駆け寄って棒で打つと退治できた。この怪鳥の名を知る者はいなかったため、占者を招いて卜筮を試みると、その慎み甚だ軽からずと言われた。それを聞いて大いに驚いた祐経はさっそく諸社で武運長久の祈誓をして身を慎んだ。
本来は名も無き怪鳥だったが『日本怪異妖怪事典 関東』では雉子梟の名で紹介された。
参考文献
伊随又七『隠顕曽我物語』132頁
自由閣『隠顕曽我物語』106頁
高橋平三郎『隠顕曽我物語』106頁
兎屋『隠顕曽我物語』117頁
野村銀次郎『隠顕曽我物語』80頁
朝里樹/氷厘亭氷泉『日本怪異妖怪事典 関東』293頁
最終更新:2023年10月20日 18:03