ツブラー(Tsuburā)


喜界島に伝わる歌い骸骨の類話。

ある男性が山の草刈りに行くと、シュンガオー節を歌う美しい声が聞こえてきた。
彼が「聞いた覚イのない声じゃが、いったい歌の主はだれだろう」と諸所を捜したがそれでも声の主は見つからず、そこで耳を澄ますと歌声は足下から聞こえていたので、木の葉を掻き退けて捜すとツブラー(頭蓋骨)が歌っているのを発見した。
そのツブラーが「今歌を歌ったのは我だが、我バ連れて行ってお前の一番憎い人の前で、歌をさせて金儲けして見らんか、必ずお前を勝たすが」と言ったので、彼は喜んでツブラーを懐に入れて持ち帰った。
そして彼は自分が一番憎んでいたとある男性の元へツブラーを持って行き「このツブラーは美しい声でシュンガオー節を歌う」と言った。
すると相手は彼の思い通りに「ツブラーが歌できるもんな」と否定してきた。
そこで彼は「それでは二人賭けをやろう。もし歌わなかったら我首をお前に渡す、歌ったらお前の首は我もらうことにしたらどうじゃ」と言うと相手もそれを聞き入れた。
なのだが、彼がツブラーに「トウ歌て見り」と話しかけてもツブラーは口を開かず、彼がいくら「歌イ歌イ」と話しかけてもツブラーは歌わなかったので、彼は斬首されてしまった。
このツブラーは彼の祖先に恨みを持っていたのだ。

また、ツブラーが笛(ハンソー)を吹く話もある。
傍輩の関係にあった仲の悪い二人の男性がいて、やがて片方が先に亡くなった。
ある日、傍輩の片割れが夜遅くに遠方から帰ってくると、大変懐かしい笛の音が聞こえてきた。
今頃誰が吹いているのだろうと思った彼が奏者を捜すと、笛の音は仲が悪かった傍輩の墓の中から聞こえていた。
そこで彼が「今の笛吹きはお前か」と墓に向かって話しかけると、墓の中から亡くなった傍輩の声で「今吹いたのは俺であるが、俺を連れて行って笛吹かせて金儲キしらんな」と答えたので、彼は喜んで墓の中の傍輩のツブラーを持ち帰った。
彼が手に入れた傍輩のツブラーは人前では笛を上手に吹いたのだが、殿様の前で吹かせることにしたら今度は何を言っても吹いてくれなかった。
なので彼は殿様を騙す不届き者として斬首された。

参考文献

 柳田國男/岩倉市郎『日本昔話記録 12 鹿児島県 喜界島昔話集』98頁

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最終更新:2023年11月23日 14:55