ふわふわのベッドとあったかいシーツ。
それらが合わさるとき、人はこの上ない快眠を手にすることが出来る。
そして、今も一人。
極上の眠りに落ちる、一人の王子が。
すやすや、すやすやと眠っている。
ゆっくり、ゆっくりと誘われて行く。
"夢"の世界へ……
足を一歩、地面へと踏み出す。
踏みしめる足に力がうまく入らず、右によろけてしまう。
その体を支えようと、両手を地面に突き出す。
地を支える腕に力がうまく入らず、体ごと倒れ込んでしまう。
体の感覚を叩き込みながら、全身を使って立ち上がる。
そうしてまた、次の一歩を踏み出しては体勢を崩す。
そうしてまた、両手を突き出しては体ごと倒れ込む。
そうしてまた、全身の筋肉を使いながら起きあがる。
数え切れないほどの生傷を生み出しながら、
グリフィスは確実に前へ進んで行く。
踏み込み、倒れ込み、起き上がり。
一連の動作を通じて、体の感覚を叩き込んでいく。
人の肉体とは、血液とは、筋肉とは、骨とは、神経とは、どう扱う物だったか。
まだ、自分が人間の体を持っていた頃の記憶を頼りに、ひとつずつ思い出していく。
ひとつずつ、ひとつずつ、我武者羅に思い出していく。
気がつけば勇者の放った雷の方へと、その体は動いていた。
少しずつ感覚を取り戻していく体を使いながら、前へ進む。
勇者の放った雷の方、そこに聳え立つ山の中へ入り込む。
体を岩肌にあちこちぶつけ、生傷を擦り傷へと変貌させ、それでも前に進んでいく。
道中、奇妙な七体の像が置かれた広間に当たる。
中央の巨大な鳥の像の周りに、恐竜、髑髏、蛙、そして男三人の像が置かれている。
これらが何を意味するのか、さっぱり見当もつかない。
だが、グリフィスはしっかりと感じ取っていた。
この部屋に入ったとき、其々の像の"目"が光ったことを。
何とも言えぬおぞましさから、逃げるように先の部屋へと進む。
奥の部屋にあったのはたった一体の像。
強靭そうな鎧兜とマントを身に纏った、男のような像。
一見すると何の変哲もない像だが、グリフィスには何か特別な像のように見えた。
そう、まるで"あいつ"のような――――
「ん……?」
未だに安定からは遠い体で、屈むような姿勢でその像を見つめていた。
今のグリフィスだからこそ、まるで小さな少年のような視点を持つことが出来た。
どう見ても怪しい何かが、像の傍にあることに気がついた。
そして、その怪しい何かには像とは対照的に埃がついていない。
自分より先に、何者かがこのスイッチに触れていると考えられる。
辺りから血の臭いはしない、ということは罠の類ではなさそうだと考えていい。
恐れることなく、その何かを押し込む。
像の台座から一本の道が現れる。
埃を被っているところに対し、誰かが通ったのか埃が綺麗になっているところがある。
つまり、誰かが先にこの道を通っているという事。
では、この先に何があるのか。
恐らく、歩んできた道から考えても山頂が近いのは分かる。
ならば、その山頂には何があるのか。
ひょっとすれば罠かもしれない、その罠に引っかかって戻ってこないというのも十分考えられる。
万が一、罠がないとすれば先に登っている筈の"誰か"は何をしているのか?
何もないなら何もないで、下山途中に自分と遭遇するはずだ。
なんにせよ人がいる事、そして頂上に何かあるのは確実だ。
上手く動かない体にムチを打ちながら、グリフィスは山頂を目指して動く。
辿り着いた先で見た。
昇り始める太陽と、辺りを一望出来る景色を。
先ほどより一回り大きい"あいつ"のような像を。
そして、その中ですやすやと寝息を立てる。
一人の、黒髪の少年の姿を。
雷の発生した場所は山頂。
そして自分が歩いてきた道中では、誰にも出くわすことはなかった。
ならば、この少年が雷を打った張本人だろう。
……あまりにも、信じがたい出来事だが。
グリフィスは考える。
この僅かな情報を手に、これから自分がどう動くべきなのか。
この動かない体と、手にした情報と、この状況でどう動くべきなのか。
まず、少年の命をここで奪い去ってしまうのは、あまりにも愚策。
自分は夢の為に屍を積み上げるのが目的だが、そのために手当たり次第に殺戮するのは良策とはいえない。
ましてや赤ん坊のようにはいずりながら移動するのがやっとの今の自分では、力を取り戻すまで生き残れないだろう。
本当はこの少年について知りたいところだが、偵察スコープはまだ使うことが出来ない。
ならば、この少年について考える。
何故、雷を打ったのか? 何故、人目につくような行動に出たのか?
仮に、この姿からは考えられないほどの邪悪を抱えた殺戮者であるとすれば。
そこまで考えてから、その可能性をまずは振り払う。
そもそも、この少年はあの隠し通路を通ってきている。
わざわざ山頂方面へ向かうより、下山して獲物を探すほうがよっぽど効率がいい。
殺し合いには乗っているものの、眠たかったので寝れる場所を探して山頂まで来ましたと考えるには少し無理がある。
となると、この少年が殺し合いに乗っているという線は薄くなる。
連鎖するように答えが見つかっていくもので、とするとあの雷は仲間を集う狼煙のような物だったのだろう。
誰が集まるかわからないというこの状況なのに、悠長に眠りに着く事ができるのは余裕の表れか。
とはいえあの雷を自在に操る力は、確実にある。
そして殺戮に乗っている線は薄く、それどころか仲間を募っている可能性が高い。
つまり、この少年も力を欲しているのだ。
ならば、この機会を利用しない手はない。
殺し合いを打破するという建前を持って少年の傘下に入り、体の感覚を取り戻すまで共に過ごす。
いつかのあの時と似ているようで少し違う方法を取るのが、恐らく最善の一手。
一時的な隠れ蓑としては十分な環境だろう。
この少年が戦闘面でどこまで役に立つのかは未知数だが、あの雷を操るほどの力があるのならば、強力な仲間であることには違いない。
何時手のひらを返し反旗を掲げるのか、それは処分の方法と共に追々考えて行けばいい。
「……う、ううん」
その時、ベッドの上で眠る少年が目を擦りながら起き上がってきた。
傷つき倒れそうな青年を演じるために、近くの適当な場所に倒れこむ。
道中で作ってきた傷が、上手く作用してくれそうだ。
一瞬で頭の中に言葉が次々に浮かんでくる。
彼をを味方につける、貧弱な"平民"の言葉が。
準備は揃った、あとは演じるだけだ。
オレが目指す、"夢"の世界へ辿り着くために。
ここは、まだ"夢"の途中。
倒れるわけにはいかないから、なんだって利用してみせる。
【D-6 /魔王山最深部/1日目/早朝】
【
主人公の息子@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品1式(松明をひとつ消費しました)、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:ワルモノを倒してみんなで帰る
1:ここに集められた人と合流して助け合う
2:少し石像が気になる。
[備考]
ライデインによって山に落ちた雷が幾つか離れたエリアでも観測できるかもしれません。
【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:左の歯数本欠損、身体感覚が戻りきっていない
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ていさつスコープ@MM2R(一日目朝まで使用不可)、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:夢のために屍を積み上げる
1:少年と交渉
2:感覚を取り戻すまで直接的な戦闘は避けたいが、ある程度したら積極的に動く。
[参戦時期]:フェムトへの転生途中
[備考]
容姿・能力は人間時のグリフィスのものです。拷問痕はなくなっています。
この殺し合いは転生のためのもの、参加者はベヘリットに関連した者だろうと考えています。
ていさつスコープの効果により、ライを介して
葉隠散の容姿と名前の情報を得ました(散が参加者であることは認識していません)。
最終更新:2012年12月10日 22:38