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恋愛とは偉大なものである。
スイトピーはそれを信念としていた。
マイトの事を考えれば元気が出るし、マイトを見てると生き生きとしてくる。
スイトピーはそう信じていた。
お茶会に呼ばれたのはそんな折だった。
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「ミチコさんでもアレ、ダメそうなんですか!?」
お茶会主催のソーニャは、何やら電話を取って叫んでいる。
優雅じゃないわ。
「お茶の時間なのに」
思わず声を漏らすと、エミリオも
「そうだね」
と答えた。
エミリオとはここの所何故か縁があり、いろんな所を一緒に回っている。
何かしら? 最近様子がおかしいわね?
スイトピーは首を傾げた。
そうだ、何故か視線が合わないんだ。私は彼に何かしたかしら?
もう一度首を傾げて考えてみたが、とんと思い当たる節はみつからなかった。
「どうしたんすか?」
「いや、その………恋愛って難しいですね………」
須田の問いにソーニャは曖昧な口調で返したが。
スイトピーがそれに食いついた。
「どんな話ですの?」
目をキラキラ輝かせるスイトピーに、ソーニャはたじろぐ。
「その………ああ、私からはちょっと説明しづらい話です、あまり良い話ではないので。ゴメンナサイ、スイトピーさん」
ソーニャが謝るが、スイトピーは話を濁らせたソーニャを見て、面白くなさそうに頬を膨らませた。
「あまり、プライベートには立ち入らないほうが」
エミリオが苦い顔でたしなめるのが、ますますもって面白くない。
「あ、そういうスイトピーさんはどうなんですか? 今どんな恋愛してます?」
ソーニャが話を切り替えようと訊ねてきた。
スイトピーの瞳が、再び輝く。
「マイト」
好きな人の名前を口に出してみる。
うん、幸せ。
スイトピーがキラキラしてる横で、エミリオが暗くなっている。
本当にこの方は何なのかしら。
スイトピーはいきなり暗くなったエミリオをキョトンとした顔で見た。
「だれ…あ、いや」
スイトピーがジイィっとみつめると、顔を逸らす。
何でこんなに面白い反応するのかしら?
エミリオが暗く落ち込んでいるのを、須田は「うんうん」とお茶をすすりながら微笑ましそうにみつめた。
「若いっていいなあ」
須田の発言に、スイトピーはやはりキョトンとした顔をした。
何で若いと暗くて落ち込むのかしら?
首を傾げて考えてみるが、やっぱり分からない。
ソーニャと須田が何やら話し出した横で、スイトピーがエミリオの肩を叩いた。
「え、何……?」
視線が合わない、いや合わせない。
スイトピーはますます訳が分からなくなる。
紳士って言うものは、目と目を合わせて話をするものじゃないの? 私、本当にエミリオに何かしたかしら?
「何でいきなり落ち込みましたの?」
「え、いや……」
まだ視線を彷徨わせて合わせないエミリオに、スイトピーは遂にキレた。
「もう、殿方がいきなり落ち込んだり目を合わせないなんて男らしくない!! 私が何かしましたか!?」
スイトピーが怒鳴ると、エミリオは深くふかーく溜め息をついた。
何ですの? その反応。
「もういい……」
エミリオが再度暗くなったのに、スイトピーは再度頭にはてなマークを飛ばすのだった。
「うんうん。少年だねえ」
「ですよねぇ~」
いつの間にやら会話を中断してスイトピーとエミリオを鑑賞していた須田とソーニャは「うんうん」と首を振りながらみつめていた。
頑張れ男の子。
恋をして何もしない間に落ち込んでいるのはまだまだだぞ?
ソーニャはにっこりとしながらエミリオに無言のエールを送った。
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恋愛とはやっかいなものである。
エミリオは内心そう思っている。
恋してる女の子ってきらきらしていて可愛い……とは思う。多分……何考えているんだろう。
スイトピーは可愛いとは思う。うん。多分……本当に何考えているんだろう。
マイトって誰だろう……いや、スイトピーが誰の事好きなんて、どうでもいいじゃないか。
でも何でだろう……すごく、嫌だ。
エミリオは頬を膨らませて怒るスイトピーをチラリチラリと見ながら、この居心地の悪さに首を傾げていた。
最終更新:2007年09月20日 19:37