塩野七生「ローマ人の物語5 ユリウス・カエサル ルビコン以後」(1996)

評価

★★★☆

ひとこと

ルビコン河を超えてからのローマの内乱を描いている。
ルビコン以前のような清々しさは影をひそめます。
下巻の前半でカエサル暗殺はあっさり訪れ、真に内戦が終了するまでが描かれています。

分類


目次

第六章 壮年後期 Virilitas (紀元前四九年一月~前四四年三月)
  • 「ルビコン」直後
  • ポンペイウス、首都放棄
  • コルフィニオ開城
  • ポンペイウス、本国放棄
  • 大戦略
  • キケロ対策
  • 首都ローマ
  • 西を撃つ
  • マルセーユ攻防
  • スペイン戦役
  • 逆転
  • 降伏
  • ストライキ
  • 北アフリカ戦線
  • カエサル、執政官に
  • 戦力比較
  • ギリシアへ
  • 第二陣到着
  • 合流
  • ドゥラキウム攻防戦
  • 包囲網
  • 激闘
  • 撤退
  • 誘導作戦
  • 決戦へ
  • ファルサルス
  • 紀元前四八年八月九日
  • 追撃
  • ポンペイウスの死
  • クレオパトラ
  • アレクサンドリア戦役
  • 「来た、見た、勝った」
  • カエサルとキケロ
  • 政治家アントニウス
  • アフリカ戦役
  • タプソス会戦
  • 小カトー
  • 凱旋式
  • 国家改造
  • 暦の改定
  • 通貨改革
  • ムンダの会戦
  • 遺言状
  • 「帝国」へ
  • 市民権問題
  • 政治改革(元老院/市民集会/護民官/終身独裁官)
  • 金融改革
  • 行政改革
  • 「解放奴隷」登用
  • 属州統治
  • 司法改革
  • 社会改革(福祉政策/失業対策・植民政策/組合対策/治安対策/交通渋滞対策/清掃問題/贅沢禁止法)
  • 首都再開発
  • カエサルのフォールム
  • 教師と医師
  • その他の公共事業
  • カエサルの特権
  • 不満な人びと
第七章 「三月十五日」 Idus Martiae (紀元前四四年三月十五日~前四二年十月)
  • 三月十五日
  • 三月十六日
  • 遺言状公開
  • 妥協
  • カエサル、火葬
  • 逃走
  • オクタヴィアヌス
  • 暗殺者たち
  • 国外脱出
  • アントニウス弾劾
  • 復讐
  • 「第二次三頭政治」
  • キケロの死
  • 「神君カエサル」
  • ブルータスの死
第八章 アントニウスとクレオパトラ対オクタヴィアヌス (紀元前四二年~前三〇年)
  • 第一人者アントニウス
  • クレオパトラ
  • 「ブリンディシ協定」
  • オクタヴィアヌスの恋
  • アントニウスとクレオパトラの結婚
  • パルティア遠征
  • 異国での凱旋式
  • 対決へ
  • 準備
  • アクティウムの海戦
  • 最終幕
  • エピローグ



時期

BC49(ルビコン)~BC30(共和制崩壊)

主要登場人物

  • カエサル
  • オクタヴィアヌス
  • クレオパトラ
  • アントニウス
  • テレンティウス・ヴァッロ
  • エノバルブス
  • キケロ
  • 小カトー
  • クリオ
  • ラビエヌス
  • マルクス・ブルータス
  • マルケルス
  • レントゥルス
  • ファルナケス
  • アフラニウス
  • ぺトレイウス
  • ユバ
  • デキムス・ブルータス
  • ガイウス・トレボニウス
  • カシウス・ロンジヌス
  • トゥリウス・キンブロ
  • スルピチウス・ガルバ
  • ミヌチウス・バジルス
  • ヒルティウス
  • レピドゥス
  • ポリオ
  • アグリッパ


気になる表現

わたしが自由にした人々が再びわたしに剣を向けることになるとしても、
そのようなことには心をわずらわせたくない。
何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、
自らの考えに忠実に生きることである。
だから、他の人々も、そうあって当然と思っている。(上p104, カエサルの言葉)

このような状態になった場合、人は二種に分れる。
第一は、失敗に帰した事態の改善に努めることで不利を挽回しようとする人であり、
第二は、それはそのままでひとまずは置いておき、
別のことを成功させることによって、情勢の一挙挽回を図る人である。
カエサルは、後者の代表格といってもよかった。(上p123)

しかし、この時点での最優先事項は、敗北を喫した軍の再建であって、
カエサル個人の潔さをまっとうすることではない。
人間は気落ちしているときにお前の責任ではないと言われると、
ついほっとして、そうなんだ、おれの責任ではなかったのだ、
と思ってしまうものである。
こう思ってしまうと、再起に必要なエネルギーを自己生産することが困難になる。(上p194)

メモ


  • 「ブルータス、お前もか」はデキムス・ブルータスを指していたのではないか?





  • カエサルのキャリア(後半)
    • 51歳:ルビコン渡河・内乱期
      • 独裁官に指名される
      • 反スッラ派仕損の公職永久追放の解除
      • 各属州総督へのカエサル派任命
      • 新通貨発行ほかの経済政策実施
    • 52歳:内乱期
      • ファルサルスの会戦でポンペイウスを破る
    • 54歳:内乱期
      • ユリウス暦(太陽暦)採用
      • 国立造幣所開設、造幣権を元老院から移す
      • 十年任期の独裁官に任命
    • 55歳:内乱期
      • ムンダの会戦でラビエヌス戦死
      • 北伊属州の都市計画
      • シチリアと南仏属州住民へのラテン市民権の授与
      • 元老院議員増員
      • 市民集会と護民官の有名無実化
      • 金銀の換算率の固定化、利息率の上限設定
      • 法務官・会計検査官・按察官の増員、同僚執政官の補佐役化
      • 地方議会の被選挙権の改正
      • 開放奴隷への公職門戸開放
      • 属州の再編成、属州議会の認知
      • 公営の徴税機関設置
      • ユピテル・ユノ―・ミネルヴァをローマの主神とする
      • センプローニウス法確認による元老院最終勧告の廃止、陪審員資格の改正
      • 小麦の無料給付者を15万人に半減、審査按察官の設置
      • 失業者と退役兵の植民先を属州に分散、カルタゴとコリントを再興
      • 教師と医師へのローマ市民権の授与
      • カエサルのフォールム建設、フォロ・ロマーノの再開発、セルヴィウス城壁の撤去などの首都の再開発
      • 干拓・街道の整備延長ほかの公共事業
    • 56歳:終身独裁官に任命。1ヵ月後に暗殺される

参考文献



本書を引用している文献

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最終更新:2011年08月21日 21:58