塩野七生「ローマ人の物語6 パクス・ロマーナ」(1997)


評価

★★★☆

ひとこと

アウグストゥスが如何にして帝政ローマを確立していったかを追っている。
なんだか、カエサルから一転して血の通わない人間のような書き方だが
そこまでカエサルと比較しなくてもよいのでは・・・と言う気もした。

ローマ帝国の礎は40年にも及ぶ治政なくして成り立たなかったろう。
徳川家康が2年で将軍職を譲って院政を敷けたのは、「征夷大将軍」
とハッキリとした地位があり、「元老院」のような機関が存在しなかったからだ。

分類


目次


第一部 統治前期(紀元前二九年~前一九年)
  • 若き最高権力者
  • 軍備削減
  • 国勢調査
  • 霊廟建設
  • 情報公開
  • 元老院の“リストラ”
  • 共和政復帰宣言
  • 「アウグストゥス」
  • イメージ作成
  • 書き手から見たアウグストゥス
  • 「内閣」の創設
  • 属州統治の基本方針
  • 「安全保障」
  • 西方の再編成
  • “国税庁”創設
  • 「幸運のアラビア」
  • 「護民官特権」
  • 通貨改革
  • 選挙改革
  • ローマ時代の「ノーメンクラトゥーラ」
  • 血への執着
  • “食料安保”
  • 東方の再編成
  • ユダヤ問題
  • パルティア問題
  • エジプト
  • 首都帰還
第二部 統治中期(紀元前一八年~前六年)
  • “少子対策”
  • 宗教心
  • アルプス
  • ドナウ河
  • 「平和の祭壇」
  • 軍事再編成
  • 総合戦略
  • 近衛軍団
  • 税制改革
  • アグリッパ
  • マエケナス
  • ゲルマン民族
  • 行政改革
  • ドゥルーススの死
  • ティベリウスの引退
第三部 統治後期(紀元前五年~紀元後一四年)
  • 祖父アウグストゥス
  • 娘の醜聞
  • 「国家の父」
  • 東方問題
  • ティベリウス復帰
  • 反乱
  • 家族の不祥事
  • 詩人オヴィディウス
  • 「森はゲルマンの母である」

時期

BC29(アウグストゥス統治開始)~BC14(アウグストゥス死)

主要登場人物

  • アウグストゥス帝(在位BC30-AD14, 病死)
  • アジニウス・ポリオ
  • アグリッパ
  • 甥マルケルス
  • 娘ユリア
  • アルタクセス
  • ティリダテス
  • ティベリウス
  • ドゥルースス
  • ルキウス・カエサル
  • ガイウス・カエサル
  • マエケナス
  • ゲルマニクス
  • マロボドゥヌス
  • アグリッパ・ポストゥムス
  • オヴィディウス
  • アルミニウス
  • ヴァルス


気になる表現


メモ

  • アウグストゥスがカエサルと異なる手法をとった理由
    1. 何事にも慎重な本来の性格
    2. 殺されでもすれば大事業も中絶を余儀なくされるという、カエサルあんさつが与えた教訓
    3. カエサルに比肩しうる説得力は自分にはないという自覚

  • 通史
    • BC29
      • 凱旋式
      • カエサルに捧げる神殿をフォロ・ロマーノに建てると公表
      • 軍縮
    • BC28
      • 国税調査実施
      • 皇帝廟建設開始
      • 情報公開法「アクタ・ディウルナ」「アクタ・セナートゥス」制度改定
      • 元老院再編成(600名の定員に戻す)
    • BC27
      • 共和政体への復帰宣言
        • 返還した特権(三頭政治権、イタリア誓約、世界的賛意)
        • 放棄しなかったもの(執政官職、インペラトールの称号、第一人者の称号)
      • 「アウグストゥス」を贈られる
      • 内閣設置
        • 第一人者+執政官+法務官+会計検査官+財務官+按察官+元老院議員15名(抽選)
    • BC26~24
      • イベリア半島完全制覇
    • BC23
      • 執政官を辞任。「護民官特権」を授与される
      • 通貨制度改革に着手
        • 1アウレウス金貨=25デナリウス銀貨=100セスティウル銅貨
    • BC22~21
      • 東方再編成。ローマ・パルティア間講和
    • BC18
      • 「ユリウス姦通罪・婚外交渉罪法」「ユリウス正式婚姻法」制定
    • BC17
      • 「世紀祝祭」の祭事を定期化
    • BC16~9
      • ティベリウス・ドゥルーススによる北征行
      • ドゥルースス死す
      • エルベ=ドナウ防衛線成立
    • BC13
      • 「平和の祭壇」建設着手
      • 最高神祇官に選出(レピドゥスの死に伴う)
    • BC12
      • アグリッパ死す
    • BC8
      • マエケナス死す
    • BC6
      • ティベリウス、ロードス島へ引きこもる
    • BC5
      • 15歳の孫ガイウス・カエサルに「予定執政官」を新設
    • BC2
      • 娘ユリアを終身流刑に処す
    • BC1
      • 元老院、アウグストゥスに「国家の父」の称号を贈る
    • AD2
      • 養孫ルキウス、死す
    • AD3~4
      • 養孫ガイウス、アルメニアとの外交交渉に失敗
      • ガイウス、小アジアで死す
      • ティベリウスを後継者に決め、その後継者をゲルマニクス(ドゥルーススの遺子)を指名
    • AD5
      • ティベリウスゲルマニア戦線に復帰、14年ぶりにエルベ河に達する
    • AD13
      • ティベリウスに「最高司令権」を授与
    • AD14
      • アウグストゥス、「業績録」を書きあげ、ナポリにて死す


  • 属州統治
    1. 本国イタリア
    2. 元老院属州
    3. 皇帝属州
      • イベリア半島西部のルジタニア属州
      • イベリア半島東部のヒスパニア・タラコネンシス属州
      • 南仏以外のガリア全土
      • イリリクム、ダルマティア地方
      • 小アジア南東部のキリキア属州
      • シリア属州
    4. 征服者アウグストゥスの個人所領(エジプト)

  • 国税庁創設
    1. 属州への徴税の公正化
    2. 帝国統治のグランドデザインにそsって、税金を配分できる
(属州間の経済力の差と防衛費の必要度合いのアンバランス解消)
    1. 統治の継続性の確立

  • ローマ市民権への考え方
    • カエサル
      1. 多民族でも、与えるにふさわしい働きをした者には与える。
      2. ローマ帝国の将来にとって、与えておいたほうが的作と思える人には与える
    • アウグストゥス
      1. 同上
      2. 消極的で通す。(元老院の反発を買わないこと、ローマ本国人自体の充実と振興を先行)

  • 軍事制度再編成の基本方針
    1. 目的は征服でなく、防衛
    2. 敵はパルティア以外、すべて見開発見組織の蛮族
    3. 常備軍事力の設立(防衛の目的のため)
    4. 防衛担当者(兵士)の労働条件の向上と確立
    5. 安全保障に必要な総合戦略の確立
    6. これらの安全保障システムの維持に要する、財源の確保
      • のちに「相続税」制度を考案。退役兵への退職金の財源に充てる
    7. 近衛軍団の新設

参考

  • 青柳正規「古代都市ローマ」
  • 青柳正規「皇帝たちの都ローマ」
  • 南川高志「ローマ皇帝とその時代」

本書を引用している文献

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最終更新:2011年11月19日 18:47