塩野七生「ローマ人の物語10 すべての道はローマに通ず」(2001)


評価

★★★★

ひとこと

五賢帝時代による「パクス・ロマーナ」の後、下り坂に突入する前にローマのインフラについての巻を挟んだのは実に巧みな試みだと思う。
内容自体は、既刊の再掲的な部分もあるものの、ローマ人を語るのにインフラなくして通れず、といった一冊。ハードのインフラについては、その工法と意図する点について素人にも充分に理解できるように書かれている。


分類


目次

第一部 ハードなインフラ
  1. 街道
    • ローマ街道網略図と各時代の万里の長城
    • ローマから南へ(街道の複線化)
    • ローマ街道の基本形
    • マイル塚
    • ローマ街道の断面図
    • ローマ街道の復元想像図
    • 共和政時代のローマ街道網
    • ローマ時代のトンネル
    • 山腹を縫う街道の断面図
    • ローマ時代の舟橋と木
    • 「ポンス・ロングス」
    • ローマ時代の石橋
    • 排水のしくみ
    • 橋脚工事法
    • 明石海峡大橋
    • ユーロ紙幣に描かれたさまざまな橋
    • 三種類の橋の図
    • 街道・橋および水道に必要な用地の幅
  2. それを使った人々
    • カエサル、アウグストゥス、ティベリウスの肖像
    • 郵便馬車
    • アルプス越えのローマ街道(ヴァランスからトリノ)沿いの諸設備
    • アルプスを超える四つのルート
    • ローマ時代の旅行用の銀製コップ
    • 銀製コップの展開ずとカディスからローマまでの街道図
    • 「タブーラ・ぺウンティンゲリアーナ」
    • プトレマイオス地図
    • 「タブーラ・ぺウンティンゲリアーナ」部分(アレクサンドロスが引き返した地、山脈、森林)
    • 「タブーラ・ぺウンティングリアーナ」に収録されている主要六都市
    • 「タブーラ・ぺウンティングリアーナ」部分(ローマ周辺、ナポリ周辺)
    • 「タブーラ・ぺウンティングリアーナ」部分(ペルシア湾、ナイル河口)
    • 「タブーラ・ぺウンティングリアーナ」中の記号(バジリカ、チヴィタヴェッキア、シチリア島)
    • 「タブーラ・ぺウンティングリアーナ」中の記号(宿駅、温泉場)
    • ローマ時代の測量機器
    • 旅人を描いたレリーフ
  3. 水道
    • ローマ水道の模式図
    • ドムスでの雨水利用法
    • ポルタ・マッジョーレ
    • アグリッパ肖像
    • トレヴィの噴水
    • 水源からローマまで
    • ローマ市内の水道
    • ローマ市内の水道
    • 水道の断面図
    • 「カステルム」(水の分配施設)
    • 共同水槽
    • 共同水槽のあるポンペイの街角
    • 鉛管の作り方
    • ハドリアヌス防壁沿いの浴場遺跡
    • カラカラ浴場
    • 浴室の温め方
    • ラオコーン群像
    • 「ファルネーゼの牛」
第二部 ソフトなインフラ
  1. 医療
    • イゾラ・ティべりーナ模型
    • アスクレピウス神像
    • コロッセウムの客席
    • 診察する医師
    • ローマ時代の医学校所在地
    • 公衆浴場の様子
    • クサンテン軍団基地の軍病院
  2. 教育
    • ローマ時代のそろばん
    • 学校での授業風景
    • 公衆浴場の中庭



時期

主要登場人物

  • アッピウス・クラウディウス
  • アグリッパ
  • ベルサリウス
  • ユリウス・カエサル


気になる表現

ローマ人はインフラを、「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」
と考えていたということではないか。(上p24)


メモ

  • ローマ街道とは?
    1. 立案者:その時期の最高位者
    2. 決定者:元老院
    3. 建設費の財源:国庫
    4. 工事従事者:軍隊
    5. 完成後の運営者:公共事業を担当する行政機関
    6. 運営経費の負担:国または地方自治体
    7. 使用料:無料

  • ローマ水道とは?
    1. 立案者:その時期の最高位者
    2. 決定者:元老院
    3. 建設費の財源:国庫
    4. 工事従事者:入札を落札したソチエタス(私企業)
    5. 完成後の運営者:水道局
    6. 運営経費の負担:国または地方自治体
    7. 使用料:共同水槽の水を使う分には無料。自宅まで引く場合には料金を払う

  • ローマ街道
    • 国道一号線:アウレリア街道(BC241)ローマ~ジェノバ
    • 国道二号線:カッシア街道(Bc145)ローマ~フィレンツェ
    • 国道三号線:フラミニア街道(Bc220)ローマ~リミニ
    • 国道四号線:サラーリア街道(アッピア街道以前)ローマ~ポルトピチェーノ
    • 国道五号線:ティブルティーナ街道(アッピア街道以前)ローマ~ティヴォり~ぺスカラ
    • 国道六号線:ラティーナ街道(アッピア街道以前)ローマ~カプア
    • 国道七号線:アッピア街道(BC312)ローマ~ブリンディシ
    • 国道八号線:オスティエンセ街道(アッピア街道以前)ローマ~オスティア
    • 国道九号線:エミーリア街道(BC187)リミニ~ピアチェンツァ

  • ローマの橋の特質
    1. 石造り
    2. L水平にかけられた橋
    3. 街道の延長線上に建設
    4. 街道と同様の舗装。
    5. 車道と歩道は区別
    6. 橋の両端に凱旋門型のアーチの門が立っている場合が多い

  • ローマの水道:流しっぱなしが普通
    • アッピア水道
    • 旧アニオ水道
    • マルキア水道
    • テプラ水道
    • ユリア水道
    • ヴィルゴ水道
    • アルシエティーナ水道
    • クラウディア水道
    • 新アニオ水道
    • トライアーナ水道
    • アントニアーナ水道

  • インフラの分類
    • ハードなインフラ
      • 交通手段としての街道
      • 港湾
      • 神殿
      • フォールム(広場)とバシリカ(公会堂)
      • 楕円形競技場
      • 半円形劇場
      • 円形競技場
      • 上水道・下水道
      • 公衆浴場
    • ソフトなインフラ
      • 安全保障
      • 治安
      • 税制
      • 通貨制度
      • 郵便制度
      • 貧者救済のシステム
      • 育英資金制度(アリメンタ)
      • 医療
      • 教育


参考


本書を引用している文献

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最終更新:2011年11月19日 00:08