福井雄三「『坂の上の雲』に隠された歴史の真実」(2007)
評価
★★★☆
ひとこと
今年でNHKドラマ「坂の上の雲」が完結。その前に読んでおこうかと購入。
単純な「善玉・悪玉」論を戒める一作で、中身は「坂の上の雲」にとどまらない。
中西輝政「日本人として知っておきたい近代史 明治篇」にも通じる部分あり。
ただ、私のように司馬史観に熱狂していない人間にとっては、
この本もややヒステリックに感じなくもない・・・。
分類
目次
- 日本人を今なお縛る歴史観からの解放をめざして
- 第一章「坂の上の雲」にいま わたしたち日本人が問いかけなければならないもの
- 第二章「坂の上の雲」に描かれた旅順攻防戦の虚像と実像。はたして史実はどこにあったのか
- 第三章 ユダヤ人大迫害と「坂の上の雲」。どんなつながりがあるかおわかりだろうか
- 第四章 ノモンハン事件。司馬氏が果たせなかったライフワーク。この戦いの光と影がいま逆転した
- 第五章 戦後の日本人の精神構造や国家像。「司馬史観」とどう結びついているのか。
- 第六章「明治はよかったが戦前の昭和は暗黒」という史観がある。しかし、欧米の識者は戦前の日本や極東をどう見ていたのだろうか
国家は敗戦によっては滅びない。国民が国家の魂を失った時に滅びる。(p196, ビスマルクのコトバ。)
メモ
- あいくち伝説:ドイツが第一次世界大戦で敗れたのは、正面の敵に負けたのではない。背後の敵(ドイツ国内に居住しているユダヤ人たち)の裏切り行為によって、背中を短刀でぐさりと一突きにされたために負けた、とする論。第一次大戦後、ドイツ国内を蔓延流布。
- 中世ヨーロッパ(キリスト教)では、高利貸しは卑しい行為として禁止されていた。隙間産業にユダヤ人が流れ、必要悪として生存しつづけた。
参考文献
- 司馬遼太郎「坂の上の雲」
- 福井雄三「司馬遼太郎の『意外な歴史眼』」
- ヴィットコップ教授編纂「ドイツ戦役学生の手紙」
- グリム童話「ラプンツェル」
- 山下肇「ドイツ・ユダヤ精神史」
- 五味川純平「ノモンハン」
- 半藤一利「ノモンハンの夏」
- 横光利一「微笑」
- 三島由紀夫「英霊の聲」
- 中沢啓治「はだしのゲン」
最終更新:2011年12月01日 23:38