塩野七生「ローマ人の物語14 キリストの勝利」(2005)
評価
★★★☆
ひとこと
この巻あたりから、作者の諦観のようなものが伝わってきます。
「ローマ人の物語」といいつつ、
殆どオリエントのように宦官が宮中で実権を握るようになる、ローマ帝国の模様を描く。
タイトルから想像されるイメージに反して、全編通して、血なまぐささが漂う。
分類
目次
第一部 皇帝コンスタンティウス
- 邪魔者を殺せ
- 帝国三分
- 一人退場
- 二人目退場
- 副帝ガルス
- 賊将マグネンティウス
- 兄と弟
- 副帝の処刑
- ユリアヌス、副帝に
- コンスタンティウスとキリスト教
- 狙い撃ち
- ガリアのユリアヌス
- 積極戦法
- ゲルマン民族
- ストラスブールの勝利
- ローマでの最後の凱旋式
- ガリア再興
第二部 皇帝ユリアヌス
- 古代のオリエント
- ササン朝ペルシア
- アミダ攻防戦
- ユリアヌス、起つ
- 内戦覚悟
- リストラ大作戦
- 「背教者」ユリアヌス
- 対キリスト教宣戦布告
- アンティオキア
- ペルシア戦役
- 首都クテンシフォン
- ティグリス北上
- 若き死
- ユリアヌスの後
- 講和締結
- 皇帝ユリアヌスの生と死
第三部 司教アンブロシウス
- 蛮族出身の皇帝
- フン族登場
- ハドリアノポリスでの大敗
- 皇帝テオドシウス
- 蛮族、移住公認
- 親キリスト教路線の復活
- 「異教」と「異端」
- 「異端」排斥
- 「異教」排斥
- 論戦
- キリストの勝利(異教に対して)
- キリスト教、ローマ帝国の国教に
- キリストの勝利(皇帝に対して)
- 東西分割
時期
- コンスタンティウス帝
- マグネンティウス
- シャプール2世
- ガルス
- エウセビウス
- ユリアヌス
- アミアヌス・マルケリヌス
- ウルシチヌス
- ヴァレンティニアヌス
- ヴァレンス
- グラティアヌス
- ヴァレンティニアヌス2世
- テオドシウス
- アンブロシウス
- シンマクス
私は、ローマ帝国の滅亡とか、ローマ帝国の崩壊とかは、適切な表現ではないのではないかと思い始めている。
滅亡とか崩壊だと、その前はローマ帝国は存在していなくてはならない。(中略)
と言って、分解とか解体とかいう表現も納得いかない。全体が解体して個々の物体になったとしても、それは規模が小さく変わっただけで、本質ならば変わってはいないはずだからだ。
となると、溶解だろうか、と思ったりする。(下p59)
メモ
- キリスト教の振興状況
- 公認することで、他の諸宗教と同等の地位にする・・・コンスタンティヌス大帝
- キリスト教のみの優遇に、はっきりと舵を切る・・・コンスタンティヌス大帝&コンスタンティウス
- ローマ伝来の宗教に、他宗教排撃の目標を明確にしぼる・・・コンスタンティウス
- 歴代の皇帝達の東方対策
- 外交派:境界をユーフラテス河に定め、帝国のリメスとして強化し、アルメニアへの援助を惜しまない。アウグストゥス、ネロ、ハドリアヌス
- 軍事で成功した後に有利な条件で防衛線を確率。トライアヌス、セプティミウス・セヴェルス、ディオクレティアヌス、コンスタンティヌス大帝。
- コンスタンティウス
- コンスタンティウス大帝の次男。(先妻の子クリスプスを入れると三男?)
- 親族、兄弟間の争いに勝ち、唯一の帝位に。
- 親キリスト教政策(ローマ伝来の宗教の排斥)
- ペルシャ戦役に苦戦、副帝ユリアヌスが「正帝」を宣言したが、直接対決を前に病死
- ユリアヌス
- 副帝時代、対ガリア・ドナウ戦線を抑える
- 正帝としてコンスタンティノープル入り
- 官僚機構のリストラ
- キリスト教弾圧(「政局の安定」を求めたコンスタンティヌス大帝に対して懐疑的だったのでは?)
- コンスタンティヌス大帝以前のローマ帝国に戻すことを目指した法律(国費による教会建造の禁止、教会資産、聖職者私産への非課税撤廃)
- キリスト教徒の教師の立場からの追放令
- ペルシャ戦役中に戦死
参考
本書を引用している文献
最終更新:2011年11月21日 23:48