経営資源の観点からみた戦略論

経営資源に関する論点


1. 獲得   
2. 蓄積
3. 配分
4. 依存

これら4つの論点にかかわるキーワードは
ペンローズの「経営資源の束としての企業」、持続的競争優位、経験曲線、効率的配分、シナジー(アンゾフ)、PLCとPPM

以下、高垣著『経営戦略の理論と実践』より経営資源の考察をしていく。

内部分析━組織内の経営資源を見極めること

SWOTのうちのSWを明確にし、企業の保有する経営資源の中で何が競争優位であるかを洗い出す。

 強み…コア・コンピタンス、競争優位をもたらすもの。更に卓越した強みはディスチンクティブ・コンピタンス。
 弱み…コア・ディフィシエンシー、その能力を持っていても活用する能力がなかったり、活用方法が拙劣である場合。

タイプ別経営資源


1. 人的資源━すべての従業員、経営者、企業に対し労働力提供だけでなく知的な貢献も行う。
【特性】
① 適性に合った割り当て
② 能力差によりアウトプットの質と量が異なる
③ 意欲により労働の質が異なり、アウトプットに影響
④ 経験や学習によって能力水準が向上。学習の効果に関しても志気や意欲が影響
採用した人的資源を有効活用するには、人員配置、能力開発、労働意欲。インセンティブなどが必要になる。

2. 物的資源━製品生産に必要な原材料、部品、工場整備、生産機械、プラント機械、事務所、情報機器などの備品類。
【特性】
ほかの企業に持っていても同じような性能を発揮。企業特殊性は低い。

3. 資金的資源━物的資源や人的資源の取得や維持に必要となる資金
A) 設備投資、資材調達費、人件費などの企業活動に投入されるインプット
B) 製品の売り上げはアウトプット
直接金融(株式や社債)、間接金融(借入)で調達した資金
→①投資収益率②成長性を考慮して配分を行う。

4.知識・情報的資源━無形の経営資源全般

ex)市場情報、技術・ノウハウ、ブランドロイヤルティー、企業イメージ、企業文化、経営能力、従業員のモラール
※人的資源が想像する知識・経験・千恵・工夫などを格として形成され、競争優位を確立する上で最も重要な経営資源。
企業活動から得られた知識・情報が既存のものと融合して新たな能力を形成。「自己増殖の力」を持つ。
企業特殊性が高い→市場での取引は困難、まねられにくい。ひとたびものにすれば、複数の人や場所で利用可能。

A) 可変的資源━必要に応じて市場から容易に調達できるもの
Ex)短期契約の労働者、原材料
【特性】
資金さえあれば調達可。競合他社も同じように調達できて、占有は難しいので独自の強さにはなりにくい。

B) 固定的資源
Ex)工場、正規従業員(長期雇用)、技術・ノウハウ
【特性】
他社との競争において独自の強みをもたらす可能性がある。特に技術・ノウハウといった無形資産(知識・情報的資源)
→これらを用いて製品を生産していく過程で、新たな知識・情報が組織内部に蓄積されていくという「自己増殖」という特性。

経営資源の評価方法━経営資源が優位となるかどうか

 企業の過去の実績
 企業の重要な競争相手
 企業全体の指標
と比較する。

バーニーのVRIO━企業の経営資源の評価方法としての4項目

もともとはVRIN
① 価値(Value):競争優位をもたらすものであるか
② 希少性(Rareness):競合他社もそれを持っているかどうか
③ 模倣性(Imitability):競合他社が完全には模倣できない
④ 代用不可能性(Non substitutability):代替不可能であるかどうか

しかし、これでは持続的競争優位性が説明できない
そこで③④を統合して模倣性とし、ケイパビリティなどの観点から新たに各資源を結びつけ活用する主体としての組織を項目に加える。

① 価値(Value):競争優位をもたらすものであるか
② 希少性(Rareness):競合他社もそれを持っているかどうか
③ 模倣性(Imitability):他社が模倣するのはコスト高であるか
④ 組織(Organization):その資源を活用できるような組織であるかどうか

→これのいずれかに該当すれば経営資源は強みであり、distinctive competenceといえる。

グラントの経営資源の質

企業の持続的な競争優位は主として資源の質により決定されるとし、経営資源と戦略分析に関して5段階の方法を提案している。

1st 「強み」と「弱み」の観点から企業の資源を見極め分類する。

2nd 企業の「強み」を企業の「能力」と組み合わせる。企業の中核能力とは、戦略上で実行できる能力(capability)のこと。経営資源が競争力のあるもの(core competence)であり、capabilityと組み合わさることにより他社に比べて優れたものになるならば卓越した競争力(distinctive competence)といえる。

3rd 持続的な競争優位であるという観点からみた利点、そして期待利益を取り込む力という点から、経営資源と能力を査定する。

4th 経営資源と能力を、外部分析から得られた機会に対して最大限活用する戦略を選択する。

5th 経営資源の強弱の差を確認して、弱みを改善するための投資を行う。

競争優位の持続性━企業の長期的な利益のためには持続性が必要


「耐久性」
 経営資源の価値が下がらない可能性
 時代遅れにならない可能性
Ex)新しい科学技術発達により、保有する技術優位性が陳腐化する可能性

「模倣性」
経営資源が他社によって複製される可能性
いつ模倣されやすいのか?
① 透明性:成功企業の戦略を支えている資源と能力を理解できる能力と即応力
② 移動可能性:競合者が先行者に対して挑戦を行うに必要な資源と能力をそろえる能力
③ 複製可能性:成功企業から模倣した資源と能力を使う力量
これらが高い時!

ここからは、最初から見てもらいたいので桧山のレポートに追加して書きます。

RBV(資源ベース理論)の誕生・・・ポーターが展開した「5つの競争要因モデル」はいわゆる「SCPパラダイム」(産業構造・行動・成果)に基づいたものである。彼は持続的に優れたパフォーマンスを追求する企業は不完全競争下においてのみ操業することを好むという戦略研究への重要なインプリケーションを与えた。しかし、産業構造と収益性の関係性に不確実な要素が露呈されてきた。ポーターはある産業内の企業の支配している資源や企業内要素は同質、発展する資源も同質と考えていたため、同一産業内の企業の収益性の差異を説明できないという限界から「資源ベース理論」という見方が誕生した。ちなみにバーニーが最初ではなく、デムゼッツという人物。この間も話したが、資源ベース理論はポーターの戦略論を排除するのではなくあくまで補完
。ポーターの5つの競争要因の分析フレームワークを活用しながらも、企業の内部資源に着目するフレームワーク。

RBVの基本構造:①企業の資源の違いがパフォーマンスの違いを引き起こす
        ②それら資源の違いは比較的安定的である 。

仮に、企業が有利な事業機会を創造することができる経営資源を有しておりその経営資源が少数で、複製コストがきわめて高いとその経営資源は企業にとっての“強み”となる。

桧山が言ったとおり、企業の強みを内面から見ようというのがRBV。もちろん弱みも見なくてはいけないので資源の配分が必要となる。
経営資源の種類については上記を確認してください。

  • 「静」と「動」のフレームワーク
 (視点の違い)静:なぜ、ある企業は競争優位を獲得しある企業はそれができないのか
        動:企業内部の特異な資産の持続性はどのように蓄積されるのか(獲得・蓄積・配分)

静的な理論フレームワークは企業に有益な資源がどのような条件を持つのか、言い換えれば、経済的に均衡した(競争している)場合での理論は競争優位の源泉となる資源が当たり前のごとく優位性を発生させるとした。しかしそれらの資源はどのようにして獲得・蓄積・発展されるのかを見たのが動的フレームワークである。これもあくまで、補完

ちなみに静的では資源の異質性と固着性はVRINの必要性!

企業の強み・弱みを分析するためのフレームワーク:VRIO
価値・模倣性・希少性についてはわかると思うので、ここでは組織について
…その組織は前の三つの条件を満たす経営資源が効率的に活用できる環境であるか。つまり資源をうまく配分しなくてはならない。

何度も言うように、RBVは競争優位などを内部要因から分析する見方であるので、現段階では強み・弱みについて適用しているが何においても適用出来ると思われます。


最終更新:2009年08月09日 18:06