トリンア森の怪奇事件

ボルドリア公国の北に存在する『トリンア森』で複数の死体が発見された事件。
また、この際に発見された大木が『不吉なもので有る』とされて焼き払われた。

容疑者は森の近くに住むトベーロという名の若者だった。
事件の発覚後すぐに捕縛されたものの、精神錯乱状態で会話が不可能だっという。
そして捕縛の翌日、トベーロは牢内で死んでいるのが発見された。
この事件後、後述するように奇怪な現象が相次いで発生し国中を震撼させた。


【事件の内容】
事の発端はボルドリア公国で行方不明事件が相次いだ事だった。

そして直近の行方不明事件から一週間後、ボルドリア公国北部の街で女性の死体が発見される。
死体が発見されたのはトベーロの乗っていた馬車の荷台からであり、トベーロはその場で憲兵に捕縛された。

その後、トベーロは詰所にて尋問を受けるも『あれは生きている』『急がないと俺も死ぬ』『こっちを見ている』等の発言をするばかりで話が通じなかったらしい。
特に『あれ』に対する質問には異常な恐怖を見せていたと記録されている。
それから数時間にわたる尋問が行われるも、彼の口から出た情報らしい情報は『トリンア森』という地名のみであった。

トベーロは詰所内の牢に一旦拘置される事となったが、翌朝に見回りの憲兵が牢内でトベーロの死体を発見。
死体の胸は酷く抉られており心臓が失われていたと言う。
トベーロを殺害した犯人については現在も捜査が行われている。


その後『トリンア森』に捜査団が派遣され、森林内にて複数の遺体を発見。
酷く損傷している遺体も多かったが、その殆どが行方不明者と特徴が一致しておりトベーロによる犯行説が濃厚となった。
死体は共通して眼と心臓が抉り取られていたらしい。
だが周囲を捜索するも眼と心臓は発見できなかった。


その一方、現地にて赤いツルの絡まった不気味な大木が発見されたとの報告がされている。
事件とは別件であろうものの、話を聞いた神官学者達から『邪気を招くので焼き払われるべきである』とされた。
国からもそうするよう許可が下ったので捜査団は木を処分する事となる。

当初は普通に伐倒する予定だったが、堅すぎて刃がろくに通らなかった為に焼き払う事を決定。
燃え広がらないよう周囲の木を伐倒し、付近の小川から水を集めた上で大木に火が放たれた。
そうして大木は燃え尽き、その後砕かれて捜査団は撤収した。

この際、燃えさかる炎の中で大木が動いていたと証言する者が居たようだ。


この事件は
  • トベーロの精神異常による猟奇的連続殺人
  • その共犯者、又はそれ以外の者によるトベーロの猟奇的殺害、それについての捜査の継続
  • トリンア森での死体発見と不気味な大木の処分
という形で収束へと向かうかに思われたが、不気味な大木と関わった者に奇怪な現象が起った事によってこの事件はもう一波乱を呼ぶ事となる。

事件が起きてから半年の間に調査団のうち5人が変死、2人が突然死、10人が精神、身体に何らかの異常をきたす事になった。

変死を遂げた5人は大木を伐倒・火を放った等、直接に木に関与した者だった。
いずれも自殺であり、3人は刃物による自殺、2人が焼身自殺だった。
1人は遺書を残していたが、支離滅裂で読めるものでは無かったとの事。
燃え尽きた後に直接大木を砕いた者は多数存在したが、上記の5人以外の者に異常は現れなかった。

突然死した2人はトベーロを逮捕した憲兵と彼に尋問を行なった憲兵であった。
死因は不明。外傷はなく病死として扱われた。

精神、身体に何らかの異常をきたした10人は直接的に関与した者以外で現地で大木の処分に関わった者だった。
6人が視力低下、胸の痛みなどを訴えた。
精神に起った異常では恐怖感、不安感などだった。
4人が『常に何かに見られている』『誰かが自分を殺そうとしている』『悪夢を見る』などの精神的な苦痛を訴えたようだ。
しかしこの10人以外で大木の処分に関わった者には異常は現れなかった。

一連の奇妙な連続死事件以降、奇怪な現象は起らなくなった。
精神や身体に異常をきたした10人も回復の兆しが見えているとの事。

しかし事件に対する関与が深い者、大木の処分に直接的に関わった者が死に、間接的に関わった者も異常をきたしたこの出来事は奇妙な事件として取り上げられた。
今でも同国ではこの事件が語り継がれている。

ちなみに、数十年が経った現在トリンア森に入る事は出来るが、事件後は誰も近寄らなくなった。
このような過去があるので赴かれる者は注意を。


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最終更新:2025年07月11日 10:40