『アルディナ溶岩大瀑布について』

アルディナ灼銀連峰は景勝地としても名高いが、中でもこの滝は見所として三指に入る事必至であろう。

峨々たるたる大連峰の頂を望むこの地は成る程画になる事この上無い。
日中の姿も趣深いが、夜闇の中で赫々と輝く様は思わず唸らざるを得ない。
この滝を目にする為だけにこの地へ赴く価値は十分にある事を保証しよう。
問題は私がこれからこの横を何とか無事に通り過ぎねばならないという事である。

言うまでも無い事ではあるが装備は万全を期しておきたい。
雪山と火山という相反する性質を併せ持つこの地では準備不足は死に直結しよう。
白熱する溶岩に炙られた気温の高さは筆舌に尽くし難く、それなりに離れた場所に居た私の水筒が沸き立って内側から破裂してしまった程である。
また火花の様に飛び散る溶岩の飛沫も十分に注意を払わなければならない。
ちなみに滝壺に落ちた場合であるが___先頃大型の魔物が焼かれるより先に溶岩に潰されていた。
成る程、水の滝であってもその圧力は相当の物。
それが溶けた岩石や金属であるのならばその重さたるや尋常ではあるまい。
何より紙は自然発火し墨は煮え立つでとてもではないが文章を書き留めておけた物ではない。

雪山に在っては火山の熱気が恋しく、火山に在っては雪山の冷たさに焦がれる。
まこと人の世に似てままならぬ地である。

ロクシア見聞録より抜粋


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最終更新:2025年10月29日 12:35