傷フェチ
作者: SS 本スレ 1-091様
525 名前:オリキャラと名無しさん 投稿日: 2014/10/11(土) 05:21:33
1-091 から、透さんの若い頃のお話とイラストのセットです
・1-091の透さんの若い頃と傷フェチの美容師さん彼氏(以下、七生さん。既婚おっさん攻め)
・Sっ気もMっ気もなく赤毛でもない初々しいまったくの別人みたいですが透さんなんです
・初々しすぎて誰かわからないレベルですが、透さんです。どうしてああなった
・そんな描写は一切ありませんが、美容師さん×刑事さんです
・お相手は既婚者なので不倫注意
・美容師さん視点、エロあり
・お相手は傷フェチさんですが、主がそうでないのですごい適当です
・終わりがすっきりしないけどキニシナイ!
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傷フェチ
「これ、邪魔だったら言ってください」
「え?」
「気にしているようだから」
彼は最近来店するようになった。今日で3度目だろうか。
その顔の右半分はいつも大きな絆創膏で覆われていた。それを隠すように長く垂れた前髪。
気にしないようにしていたが、無自覚に触れていたのかもしれない。
「ああ、ごめん。邪魔じゃないけど……けど……」
「けど?」
「見てみたいかな」
思わず本音が漏れた。
いくら男性と言えども顔の怪我など軽く暢気なものでは無いだろう。隠しているのなら尚更に。
そう思い自粛していたはずだった。
が、残された彼の左半分が意外と端麗だったのが興味を勝たせた。
白い粘着テープの下にあるだろう醜く凄惨な傷跡との対比を何度か想像しては自慰をした。
「なんていうか……傷跡とか火傷の痕とか……好きなんだ」
不意に、普段は細められている目が見開いた。瞬きもせず真っ直ぐに、こちらを見上げてくる。
「……ごめん。引いた?」
「いや、いいけど……割とグロいし、あまり他の人には見られたくない、かな」
「ああああ、ごめん、無理にとは言わないよ。無神経だった、ごめん。でも、えげつないのは大歓迎」
もともと期待などしてはいなかった。が、彼の返事は意外にも。
「じゃあ、ここじゃないどこかで」
それならばと、個室のある飲み屋で夕飯の約束をした。彼の気が変わらないうちに、今夜。
その後の仕事は自分でも呆れるくらいにノっていた。
残業しないどころではない。終業時間を待たずに仕事を終えた。
おかげで約束の時間よりもだいぶ早く店に着いた。
デート前の気分に近いが、断じてこれは浮気ではない。
相手は男性で、自分には妻がいる。更に、妻の腹には子供もいる。
言い聞かせるように、薬指にはまった指輪を撫でた。
「すみません、遅れた?」
約束の時間より5分前。彼が到着した。
「いや、俺が早すぎただけ」
適当に注文しメニューが出揃うまで、他愛のない会話をした。
彼は話すことも聞くことも上手だったが、正直言うと内容は自分の中にまるで入ってこなかった。
早くその前髪をかき上げることだけを待っていた。
その焦燥は彼に伝わっていたようで、
「焦らなくても、俺は逃げたりしないよ、七生さん」
そう笑って彼は前髪を掴み上げた。そこに邪魔な絆創膏は無かった。
かわりに、赤く盛り上がった無数の傷跡が引き攣り、重なり合い、瞼も眉も絡め取られていた。
「触ってもいいよ」
「……まじで?」
まさか触れさせてくれるとは思っていなかった。見るだけで十分だった。本当に。
まあ、あわよくば写真に収められれば……とは考えた。
しかしせっかく本人からの許しを得たのだ。両手で存分に撫で回した。
「痛くない?」
「いや……感覚はもうほとんど、無い……かな」
「そうなんだ」
「身体にもあるんだけど、見る?」
場所を変えようと提案する冷静さは辛うじて残っていたようだった。だがそれにすべてを費やした。
ホテルの一室へ乱暴に押し込み、ベッドの上に放り投げて覆いかぶさった。
シャツのボタンを外すのがもどかしい。破り捨ててしまいたい。
「七生さん、落ち着いて!ほんと、逃げないから!待って、自分で脱ぐ!脱ぐから待って!」
彼の身体は一見細く華奢に見えた。図体だけなら私の方が立派だった。
しかし両襟に掛けた腕はあっさりと制され、簡単にすり抜けていった。
そうか。私が彼を力ずくでどうにかできるわけではないということを心得ているのか。
でなければ、男同士と言えどもさすがに警戒するだろう。こんなラブホテルに連れ込まれては。
いや、どうにかしようというつもりは一切無いが。決して。
ボタンが一つ一つ外され、シャツの下の肌が徐々に露になっていく。
無駄な肉など一切ついていない引き締まった身体だった。
その身体の上に、袈裟懸けに斬られたような傷跡が走っていた。それは上半身だけに留まらなかった。
シャツを綺麗に脱ぎ去った後、彼の腕は下衣に掛かり、そのままベルトを外し一気にずり下ろす。
「これで、全部」
そう言うと、彼はベッドの上に腰を下ろした。
私はまじまじとその身体を見つめた。
右肩から左腿へ、まるで植物が地中深くに根を張り巡らすかのように、長く深く分岐しながら伸びていた。
皮膚の下にヤスデでもいて、今にも動き出しそうな。
蜘蛛の巣のように広がる顔の傷とは、恐らく組成の由来が異なるだろう。
一体いつ、どうやって刻まれたのか、もちろん興味が無いわけではない。
ただ、それを訊くほど無神経にはなりきれなかった。今はただ愛でるだけで十分だ。
彼の肌は思っていた以上に滑らかで、手触りのいいものだった。
それが一層、傷跡の酷さを際立たせていた。
彼が無抵抗なのをいいことに、仰向けに寝かせた彼の上に跨り、見下ろす景色を楽しんだ。
お互い、一言も言葉を発しない。少なくとも自分には、そんな余裕などない。
規則的に上下する胸に誘われるように顔を埋めた。息を深く吸い込むと、清潔な体臭が入ってくる。
例えばこの身体がとても柔らかで、両手に余るくらいの乳房が付いていたとして。
果たしてそれらに価値を見出せるだろうか。ともすれば景観を損ねるだけの障害でしかないかもしれない。
お互いがお互いの魅力を相殺してしまうのではないだろうか。
この傷にはこの身体が理想であり、この身体に最高の装飾はこの傷以外にはあり得ない。
「ああ……勃起した」
わざわざ口に出すまでも無く、気付いているだろう。
窮屈そうに形を変えている下半身は、ずっと彼の脚に押し付けたままなのだから。
「……七生さん、俺、男だよ?」
彼の指先が左手を掠めた。言わんとすることは大体わかっている。
「透君。フェティシズムの前に性別なんて何の意味も持たなかったよ。
だけど、断言する。失礼なことを言ったら申し訳ない。先に謝っとく。
俺は君自身に対して恋愛感情なんか全くない。ゲイじゃないし。何度か君をおかずに抜きはしたけど。
嫁のことをちゃんと愛しているし。オナニーのネタは君だったけど。性欲は愛情じゃないんだ」
勢いに任せて喋った私の膝を軽く叩いて、彼は上半身を僅かに起こし俯きがちに唇を噛んだ。
綺麗な眉が上下に動き、不思議な表情で私を見上げる。気を悪くしただろうか。
「……怒ってる?」
「ああ、ごめん、怒ってないよ。そう見えたのならごめんなさい。
ただ、言ってることは滅茶苦茶なのに、なんか妙な説得力があって驚いてるところ」
唇の端だけで笑い、再びベッドに身を沈めた。
「滅茶苦茶なんかじゃないよ、透君。君も男ならわかるだろう、下半身は別の生き物なんだよ」
「……んーわかるようなわからないようなわかるような……?やっぱりわからないかな。
俺、そういうの経験する前に下半身死んじゃってさ。ほら……」
そう微笑みながら、彼は自分の中心で萎えたままの性器を片手で弄った。
上下に擦り揉みしだいても、その形は変わることがなく。
「笑う?俺まだ童貞なんだ」
彼の下腹部には特に傷跡が密集している。陰毛は僅かしか残っておらず、陰茎と陰嚢が一部癒着していた。
だが、こんな外傷のみで性的不能に陥るだろうか。彼くらいの年齢なら遊びたい盛りだろう。
「……これが出来たのは、いつ?」
私は内腿の傷を弄った。くすぐったいのか、彼の足先がシーツを波立たせている。
「……18」
「それまで、彼女とか付き合った子とか、いなかったの?」
「ひとりふたり無いこともなかったけど……すぐに別れて」
「……原因は?」
「最優先させるほど、好きになれなかった。後回しにしてたら、振られちゃった」
「……ああ、わかる。女の子は、自分が誰かの特別な存在になりたがるからね。
今は?誰かいないの?」
「残念ながら……。七生さんは、特別な人を見つけられたわけだ」
再び、彼の指先が私の左手に触れる。そのまま指を絡め合い、口元へ運ぶ。
「君も、いつか見つけることができるよ」
「……できるかな」
「それは、君の努力次第、かな?」
「……誰かを好きになるのに、努力が必要?」
「君の場合、一歩踏み出す努力かな。でもまあ、急ぐ必要も無いんじゃない?透君まだ若いでしょ。
……いろいろ詮索してごめんね」
彼は首を横に振って応えた。
「……ありがとう」
普通なら異常者か変質者と罵られてもおかしくない状況だ。
同性の身体に刻まれた傷跡に興奮して一物を勃起させているおっさんとまともに会話をしてくれるなんて。
礼を言いたいのは私の方だ。
急ぐ必要はないと、口では言ったが。何事も早いに越したことはない。
18歳の頃からずっと、恐らくこの身体が原因で、恋人を作るのを躊躇していたのだろう。
肌を合わせる心地よさも喜びも知らないままで。
それならばと、枕元に置いてあるコンドームの小袋とジェルを手に取った。それを彼の視線が追ってくる。
「ねえ、透君。気持ちよくなれるのは、何もここだけじゃないんだ」
彼の両脚を割り開き、ジェルの蓋を開けた。
粘度の高い液体ががゆっくりと落下し、足の付け根を流れ落ちていく。
腹筋がぴくりと反応し、傷跡が波打つ。
やはり、眺めのいい身体だ。もっと、興奮に身を捩ればいい。
「冷たいのはわかる?」
「……うん」
「すぐに温かくなるよ。膝、立てて」
不安げにこちらを見上げながらも、彼はおとなしく従ってくれる。
私は指先にゴムを嵌め、ジェルを掬い取りながらそのまま尻へ滑らせ、穴の周辺を軽く擦った。
でき得る限りの優しさで解し、指先を押し入れる。
この異物の挿入に対し彼の内部は反射的に締め付けてくる。
「緊張しないで。力抜いて、緩めて」
無理やりに開いて傷つけてしまっては本末転倒だ。私が彼に与えたいのは快感であって、痛苦ではない。
「そんなに噛み締めて、痛くない?」
私は空いている方の指で、彼の頬を撫でた。きつく閉じられた唇が開き、荒い呼吸音が聞こえる。
彼は感じ始めていた。指は根元まで収まっていく。
目つきが蕩け出し、艶やかな声が漏れ、シーツが畝ねるほどに彼は身体を波立たせた。
そのたび髪が乱れ、顔の傷が露出していく。
私は堪らなくなり覆い被さった。
かつて目があった場所に口付けた。舌を這わせ、歯を立て夢中で吸い付いた。
そこで私は気付いてしまった。
この傷は、噛み痕だ。食いちぎられた痕だ。
なぜ顔を噛まれなければならなかったのか。そしてどれだけの恐怖を覚えたのか。
私は今、その時を再現してしまっている。
「……透君……」
恐る恐る彼の顔を覗き込んだ。見開いたまま瞬きを忘れた左目は、私を見てはいない。
「透君……!」
私は慌てて肩を揺すった。頬を叩き、何度も名前を呼んだ。
しゃくり上げるように息を飲み込み、ようやく彼は我にかえった。
微かに視線が揺らいだ後、私に焦点が合う。
「……なんとなく……触れちゃいけない気がして、訊かないようにしてたけど……。
間違いだった。知っておくべきだったんだ、理由を。なぜ、こんな傷を負うことになったのか」
謝罪することも、許しを請うこともできなかった。さらに悪い方に傷を抉ってしまう気がして。
「……3年も前の話だから……もう平気なつもりで、いたんだ。
せっかく、途中まで……してくれてたのに……ごめん」
それから彼は静かに話し出した。
親友二人に犯されたこと。自分自身で身体を切りつけたこと。
同じ日、父親が見ず知らずの東洋人の男に殺されたこと。その時その男に犯され顔を食われたこと。
たった一日で地獄を味わった、と続いた。
「……七生さんに見たい、って言われたとき、試したいと思ったんだ。
顔も、尻も、触られたときは全然平気で。まあ、まさかケツ穴穿られるとは思ってなかったけど。
七生さん、結婚してるし、安牌だろう、って思えたし、正直ちょっと……気持ちよかったし。
でも、下に敷かれて、顔近付いてきたらもう駄目だった……怖くて……」
必死に笑おうとしているが、唇は震えたままだ。
憐憫の情が湧かないわけではない。慰めたいなら、肩を優しく抱きしめてやればいい。
しかし彼は私にそんなことは求めないだろう。私は常に彼の支えとなってはやれないのだから。
彼はそれを知っている。
「ねえ、殴っていいよ。俺のこと」
「なんで」
「意趣返しだよ。憎らしい相手に仕返ししてやったぜ、くらいのノリでさ」
「暴力的な解決はいかがなものかと……」
「じゃあ、セックスしようか」
「……なんで!」
「さっきよりももっと、気持ちよくしてあげるよ。そうやって、記憶を上書きするんだ」
「……無茶苦茶だ」
「はっきり言うと、俺もやりたいんだよね」
素直な気持ちを告げた。彼は顔を真っ赤にしながら少し逡巡した後、観念したように一度、頷いた。
私も服をすべて脱ぎ捨て、彼と体勢を入れ替えた。正常位や後背位はまだ早い。私を見下ろす形でいい。
屹立にゴムを装着し、ジェルで入念に潤した。彼の肛門にも溢れんばかりに塗りこめた。
リラックスさせるため、脇腹や胸も愛撫した。
「ゆっくりでいい。透君のタイミングで、おいで。痛かったり苦しかったら、すぐにやめていい。
お互いが気持ちよくないと、楽しい行為じゃないから。無理は絶対しちゃだめだ」
何度も首を縦に振り、やがてゆっくりと腰を沈めてきた。
亀頭がめり込んでゆくと彼の眉が僅かに歪んだ。
「息吐いて。声は出したほうが楽だよ」
彼は素直に従ってくれた。熱っぽく甘い声が切なげに漏れている。いい声だ。
「そこ入れば、多分もう大丈夫だから。体重に任せて、身体沈めて」
根元まで埋め込むと、彼は自然に身体を揺らせた。感じる場所を探るように。もっと求めていい。
性器での刺激が得られない分は、それ以外のところで敏感になればいい。
「どう?気持ちいい?」
答えを待つまでもない。潤んだ瞳、だらしなく開いた口、彼の表情は快感を告げていた。
とろとろになった彼は、両手で支えきれなくなった身体を私に預けてきた。
そして、私の耳ともで、動いてくれと嘆願した。
私はその言葉に甘え、動きたいように好きに動かした。
もともと昂っていたせいなのか、彼の内部の具合がいいせいなのか、すぐに達した。
だが、もう少し、余韻に浸っていたい。
【終わり】
最終更新:2014年10月13日 13:37