「あ~~~~~~~私のトラックが!!!!!????」



 大地震の直後だった。
 長距離トラックでの移動の最中、休憩のためにこの山折村に偶々寄ったわけだが。
 仮眠をして、起きた直後に彼女が小道でお花を摘んでいたら、大地震が起きた。
 彼女――佐川クローネの目の前では大変なことが起こっていた。



 乗っていたトラックが横転していた。


 乗っていたトラックが横転していたのだ。



 「いや、そうはならんやろ……」と思い、一度目を瞑り、深刻級をする。
 そして、彼女が目を開けると「なっとるやるがい」と言わんばかりに彼女のトラックが横転していた。

 これでは今後仕事にならない…………からではない。
 彼女が転売用に取っておいたP〇5が全部おじゃんになったからだ。
 まあ世間一般的に一言で言えば『カス』。そんな感じの理由であった。

「どうすんだよ、こんなクソ田舎で……」

 なんだが知らないが、先ほどからスマホが繋がらない。
 これではレッカー車どころか同業者すら呼べない。
 一先ず、バス停が近くにある。
 バスを待とうかと考えた……が、来るはずないだろう。
 だって、バスの時刻表ではもうバスの時間は明日の朝までない。

 そんな時であった。
 彼女の耳にも放送が届いたのは。


 ◆  ◆  ◆


「バイオハザード…………48時間以内の女王感染者を殺さなければならない……なんだそりゃ。
 特殊部隊が殲滅しにくる……ははは……冗談が過ぎるっての……ああ、最悪だ」

 どこか他人ごとのように呟き、しょぼくれる。
 だが、横転した自身のトラックを見て、我に返ろうとするがもう駄目だという気持ちの方が大きい。
 最悪を通り越している程度には最悪だ、

 時刻は0時をとっくに過ぎた。
 やがて、自分もそのゾンビとやらになるんだろうな。
 傍目から見る感じは正気を保てている。
 しかし、そんなことは今の彼女にはどうだっていい。
 一刻も早く、この村からでなければならない。
 ならばすぐに南下するべきなんだろうが、出来ない。
 何事もやる気がなければどうにもならない。
 人間が生きていく上で『やる気』というものは重要である。

 常に一定のモチベーションなければ作業のクオリティは下がる一方になる。
 育成ゲームでもやる気を最大までするところから始めるっであろう(個人差アリ)。

(こんな場所の土地勘もないし……どうしたら……そうだ!)

 横転したトラックの荷台の扉を開ける。
 そして、クローネは内から扉を閉じる。

 籠城というにはあまりにも考えがない。
 これはただの現実逃避である。


(お願いだから、誰も来るなよ……せめて、ここに私が籠っている間は!)


 ここにいる誰しもが皆強い者じゃない。
 ここにいる誰だって弱さを持っている。
 少しのタイミングや間のズレで誰しもが彼女のような行動を起こすのだ。

 ただただ、今は自分の運の無さを呪うだけであった。


【G-5/バス停近く/1日目・深夜】

【佐川クローネ】
[状態]:精神不安
[道具]:なし
[方針]
基本.VHが終わるまでトラックの荷台に籠る
1.何も考えたくない
2.死にたくない
3.P〇5を転売したかった……
※まだ自分の異能に目覚めたことに気付いていません。

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SURVIVE START 佐川 クローネ そして訪れる最悪

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最終更新:2022年12月25日 17:20