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573 : 歪みの国のアリス 第二章 : 2007/02/15(木) 02:14:19 ID:jWyrGFa8 [3回発言]
   仕立て屋で得た情報を元に、ホテル『ブラン・リエーヴル』へと向かったアリスとチェシャ猫。
   道中の街並みからは、何故か人の存在が消えていた。


   漸く辿り着いたホテルのフロントにも誰もいなかったが、
   突然響いた物音に二人はレストラン『イナバ』へと向かう。
   そこには、見るも無残な光景が広がっていた。
   料理を皿ごと食べ続ける巨大な『公爵夫人』、夫人に料理を運び続け疲れ果てた給仕の『カエル』、
   そして妻の食欲に付いていけず倒れていた『公爵』の内、まずカエルに話を聞こうとするアリス。
   カエル達はアリスに会えた事を喜びはしたものの、何故かシロウサギを探す事を止めようとする。
   しかし、傍にいたチェシャ猫の無言の圧力に屈し、公爵がシロウサギの行方を知っていると話した。
   そこで次に、公爵を起こしシロウサギの情報を得ようとする二人。
   だが、結婚以来12年間食べ続けている夫人を止めなければ情報は教えられないと言われ、
   仕方なく公爵に協力することになる。
   あれこれと試案したものの良い考えが浮かばない三人であったが、
   ふとアリスが自分を小さくしたパンで夫人を縮ませるという方法を思いつく。
   こうしてアリスとチェシャ猫は、公爵の話を元にホテルの地下にあるというパン屋へと向かった。


   地下のショッピングモールには二軒のパン屋があり、
   そこでは人型のあんぱん達が『つぶあん』と『こしあん』に分かれて抗争を繰り広げていた。
   両者は「アリスの言葉は天の言葉」だと唱え、どちらが正当なあんぱんか決めるようにとアリスに迫る。
   アリスはどうにか両者を鎮めようとするも失敗したが、どうにか抗争が激化したその場を逃れて、
   ストロベリージャムパンの匂いがするという片方のパン屋に向かった。

574 : 歪みの国のアリス 第二章 : 2007/02/15(木) 02:15:01 ID:jWyrGFa8 [3回発言]
   パン屋の厨房の奥へと進むと檻があり、その中にはストロベリージャムパン達が何人も入っていた。
   「食べられる」ことに強い執着を持つパン達の中から一人だけを選びかねていたアリスだったが、
   ふと部屋の隅に置いてある大きな箱を目に留める。
   箱を開けると、中にはカビだらけになったストロベリージャムパンが入っていた。
   そのパンは突然アリスに凶器を突きつけ自分を食べないと殺すと脅したが、どうにかなだめ話をすることに。
   聞けばそのパン『廃棄くん』は、もう少しで買い手がつきそうだったところで傷物になってしまい、
   廃棄を宣告されてしまったらしい。

   -不可抗力の事故は気まぐれに誰かの運命を変え、大切なものをさらっていく。私の大事なものを-

   廃棄くんはその後も廃棄されることを拒み、自分を食べてくれる人を待ち続けたがとうとう現れず、
   カビだらけになってしまったのだと話した。

   -叶わない夢だと分かっていても振り切れない、かすかな希望。いつか必ず、あなたは私を…-

   いつの間にか、アリスはその話に自分自身を重ね涙を流していた。
   何かが決壊したようにあふれてくる涙。
   しかし、アリスはなぜ自分が泣いているのかは分からなかった。
   そんなアリスをたしなめるチェシャ猫の言葉で彼女がアリスであることを知った廃棄くんは、
   自分のために泣いたら意味が無いと言ってアリスを慰める。
   漸くアリスが落ち着くと廃棄くんは笑って、明日廃棄される決意をしたと話した。
   アリスが自分の代わりに泣いてくれたからもういい、自分はあきらめるきっかけがほしかったのだと。
   しかしアリスは、それを引き止めた。

   -いつか かならず あなたは わたしを-

   振り切れない願いが叶うことだってあったっていい。
   アリスは、公爵夫人に食べさせるパンを廃棄くんに決めた。


   漸く戻ったレストランは相変わらずだった。
   夫人に食べられることを喜ぶ廃棄くんとは対照的にアリスは暗かったが、
   そんなアリスを廃棄くんは明るく笑って慰める。
   その時、チェシャ猫が地下で拾った一本のあんぱんの指をアリスに差し出した。
   あんぱんを食べれば大きくなれる、つまり元の大きさに戻れるらしい。
   アリスは廃棄くんに促され、しぶしぶそれを受け取って食べた。
   元の大きさに戻ったアリスに別れを告げた廃棄くんを、アリスは泣きながら抱きしめる。
   そんなアリスを慰めお礼を言った後、廃棄くんはテーブルに飛び乗った。
   そして、心配そうにそれを見ていたアリスに軽くウインクすると、
   ほんの少しの迷いもなく公爵夫人の口の中に飛び込んだ。

   夫人がどうにかそれを飲み込んだことに安堵し、涙をぬぐったアリス。
   年季の入った廃棄くんで夫人が縮むかどうか不安だったものの、
   無事夫人を手乗りサイズまで縮ませることに成功した。
   始めは料理が大きくなったと喜んでいた夫人だったが、廃棄くんのカビによる食中毒でお腹を壊し、
   公爵に連れられてトイレへと駆け込むこととなる。
   こうして夫人の食事を止めたアリスは、公爵からシロウサギの行方を聞くことができた。

575 : 歪みの国のアリス 第二章 : 2007/02/15(木) 02:15:35 ID:jWyrGFa8 [3回発言]
   シロウサギが抜けていったという扉を開けると、そこには暗い通路が伸びていた。
   しかしアリスが扉をくぐると突然それは閉まり、跡形もなく消えてしまう。
   アリスは思いがけずチェシャ猫と離れ、明かりの少ない通路を一人で進むことになった。

   暗い通路を息を潜め歩いていたアリスは、ふと自分以外の足音が聞こえることに気付いた。
   近づく足音に立ちすくむと、前方から歩いてきたのは女だった。
   ほっとしたのも束の間、電球に浮かび上がった女の姿にアリスは恐怖する。
   女の顔には、目も鼻もびっちりと包帯が巻きつけられていたのだ。
   アリスは後ずさったが、床にあった何かにつまずきしりもちをついてしまう。
   床には、黒く焼け焦げた機械仕掛けで動く子犬のぬいぐるみがあり、アリスに向かって吠えていた。

   「おまえの…せい…」

   右のわき腹を血でぐっしょりと濡らした女はそう呟き、アリスに近づいてくる。
   だらりと下げられた右腕も、そこに持った包丁も血に染まっていた。

   「アリ…おまえのせい…」

   アリスは振り上げられた包丁にも動くことができず、目をつぶって訳も分からず女に謝った。

   「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

   しかしいつまで経っても襲ってこない痛みにおそるおそる目を開けると、
   そこには何事もなかったかのように暗い通路が伸びていた。
   一瞬の間の後、アリスは前へと駆け出した。
   恐怖に吐き気がし、誰かが脳みそに手をつっこんでかき回している錯覚に陥る。

   -ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい-

   何を、誰に謝っているのかも分からずに、アリスの頭の中にはそれだけが繰り返されていた。

   通路の終わりは突然やってきて、突き当たりに扉が見えた。
   アリスは躊躇せず、外へと飛び出した。


   第三章「見慣れた街の見慣れぬヒトたち」に続く 

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最終更新:2011年05月15日 09:21