大きな大きな○○(癖毛爆男の手記
「癖毛さん! 早く来てくださいーい!」
「はぁ、はぁ・・・ま、待ってくれぇぇぇぇ・・・・」
ここは首都の外、幻想河付近にある開拓前線村の一つだ。以前、
農業体験会で紹介した村でもある。
今、私は全力疾走で前の女性を追いかけながら、ある場所を目指していた。
もうすぐ、昼になる。急がなければ、終わってしまう。
この変わった出来事の発端は朝方、私の元に一つのタレコミがあった事から始まる。
*
『癖毛サン、癖毛サン』
「んぁ・・・あぁ・・・おはよう・・・」
電話の音で目が覚めた私。出て見るとなんともおかしなイントネーションで私を呼ぶ声。
すぐに判った。コイツは私の情報網の一つであるフンババ・ウンベルト・ラル・コンゴ。
通称、フンバの声である。
『スゴイノ、スゴイネ、ワタシ、スゴイモノ、ミツケタヨ』
「相変わらず要点をえない言い方だな・・・何があった、フンバ?」
『アノネ、ワタシノハタケ、オッキクナッタヨ」
「・・・それは・・・おめでとう?」
朝っぱらの電話の正体はそれかよ、とか思ったが、まぁ、友人の畑が大きくなったのだ。祝ってやろうと思う。
『ソレデネ、コマッテルノヨ』
「はぁ・・・大きすぎて一人じゃ無理なのか?」
『ソウ! マァサニソレ! 癖毛サン、アナタ、エスパーカ?』
「いや、違うが・・・それで、俺にどうしろってんだよ」
『タベニキテ。イマスグ。ヒトリジャ、ムリダカラ』
「・・・? は、おい、フンバ?」
『ソレジャ、マッテルヨ。バショハワカル? オーライ。アトデネ』
がちゃ、と電話が切れた。
前々からかなり意味不明な男ではあったが、今日はいつにもまして意味不明である。
「ていうか・・・いい加減、言葉を覚えて欲しいものだ」
はぁ、とため息をつくと、私は服を着替え、家をでた。
向かうは・・・開拓最前線村だ。
*
着いてみると、そこは異様な熱気になっていた。
祭りというか、戦いというか、一種高揚した雰囲気を村が包んでいる。
「?」
よく判らずに私が中に入る。中は農民・剣士などを問わず、慌しく動いている。
訳がわからないので、とりあえず適当な女性に声をかけた。
「あの・・・ちょっと」
「はい、なんで・・・あ、癖毛さんでしたっけ?」
そこにいたのは前に農業体験会で説明・ガイドをしていた女性である。
「あぁ、どうも、こんにちは。お久しぶりです」
「はい、お久しぶりですね。今日はどういった用件で? 体験会は今日はありませんよ?」
「いや・・・フンバを知ってますか?」
私は朝のフンバとのやり取りを簡単に説明した。
「・・・ということなんですよ」
「なるほど・・・フンバさん、まだちょっとこの国の言葉、苦手みたいですね」
「ですね。と・・・それで、この大騒ぎは?」
周囲を見れば、話していた間も周囲はひっきりなしに人が動いていた。
「あのですね、フンバさんの畑で・・・こーんなおっきな大根が見つかったんです!」
女性がうーん、と両手を思いっきり広げた。
それでも、せいぜい一メートル半くらいである。
「はぁ・・・でも、ソレくらい大きいなら、珍しいですけど、それほどでも・・・」
「全長5メートルは超えてるんですよ!?」
「ぶっ!」
吹いた。いや、だって考えてみてくれ。
大根が大きくなった、だから、コレくらい、と女性が手を伸ばす。
普通なら、ソレがサイズだと思うだろう?
「ご、5メートルって・・・また、すごいですね」
「えぇ・・・癖毛さんの唾液もよく飛びますね」
「ぁ・・・」
にっこりコメカミに怒りマークをつけながら、私が吹いた時についた唾液を女性はハンカチで拭いていた。
*
「ほら、もうすぐ、始まりますよー!」
「っぅ・・・はぁ、ふぅ・・・はぁ・・・」
その後、謝ったり話を聞いたりして、現場に急いでいる。
どうにも、その巨大成長。稀にあることらしい。
アウトウェイの野菜類などは育ちやすく、丈夫になるように品種改良を施されている。
元々、野生の野菜に近い物だったが、ソレを更に丈夫に、育ちやすくするために行われた品種改良で、ある奇跡というか、凶器というか、まぁ、そんなものがおきた。
極低確率で、その野菜が巨大化するのだ。
遺伝的に消すと丈夫なメリットなどが消えるらしく、また必ずそうなるわけではないので、放置されていたらしい。
「ほら、見てください!」
「ふぅ・・・はぁ・・・お、おおおおお!?」
畑について、人ごみを掻き分け、そこを見てみると。
「オトーサンノタメダヨ、エンヤコーラ」
フンバが重機を操作して、その巨大大根を引っこ抜こうとしていた。
見ればわかる・・・アレは・・・異常だ。
大根を思い浮かべて欲しい。
まず、青菜がある。その下に白い、いわゆる実の部分があるわけだ。
畑にある大根はその白い部分が殆ど埋まり、育ったものを収穫する際は青菜の部分を掴んで、収穫するのだが。
まぁ、なんというか・・・その青菜の部分が、小さな子供くらいある。
よく折れないものだ、と変な関心までしてしまった。
「マズハー、ツチヲー、トリノゾキマース」
フンバが上機嫌で作業をしている。周囲にあったであろう大根は既に収穫されていたのか、もうその巨大大根の周囲には何もなく、とりあえず、土を取り除いて、少しでも埋まった部分を減らそうとしているらしい。
「ツギニー、ツカミマース」
ムニュ、と変な音がした。重機が大根を掴んだだけのはずなのだが・・・
『おおー』
「コイツァ、でかいねぇ・・・」
「あぁ、ここ最近で一番かもな」
「フンバ、ガンバレー」
村人の声にフンバが笑顔で微笑んで手を振る。そして・・・
「ソレデハー・・・ヒッコヌキマーーーーースッ!」
*
「ん・・・やっぱり、少しだけ大味だな」
「いやー、でもよぉ。アレだけのサイズになってこの味なら、文句はねえべ」
「だよなぁ・・・あぁ、うちの畑にもできねえかなぁ・・・」
時刻は昼を少し回ったあたり。
あの後、フンバの『見事』な引き抜きで大量の土が空から降り注いだ。
住民も私も大人も子供もおねーさんも、みんな土塗れな中、一人、重機の中にいた為汚れなかったフンバは。
「オーウ、ミナサーン、キタナイヨー。オフロ、ハイルカ?」
とかのたまいやがった。
その後は、その取れた大根による収穫祭がその場で始まった。
どうも、コレが取れたときに収穫祭が行われるらしい。
「それにしても、今年はちと遅かったから、心配してたよなぁ」
「あぁ、でも、これで大丈夫だ。今年も大地の神様は俺たちのこと見てくだすってるのは判ったしな」
「んだんだ、今日はユックリ、食って飲んで踊るべ」
真相を言えば、先ほども書いたとおり、これは強引な品種改良のせいである。
だが、この巨大な野菜を大地の神・豊作の神の贈り物として考えているものも少なくないようだ。
「ほら、癖毛さん、もっと食べてください」
「ワタシノハタケノダイコン、ウマイカ?」
案内役だった女性と、フンバが私に煮た大根、焼いた大根、刺身・・・まぁ、簡単にいえば、サラダにした大根を取ってくれた。
私はそれを笑顔で受け取り、口に入れる。
シャキ、とした歯ごたえ、旨みを吸った煮物、ほくほくと溶ける焼き物。
村人たちはコレを大味だとか言っていたが、それでも、こうして屋外でみんなで食べる、新鮮な大根料理はとてもおいしかった。
「ツギモ、ワタシノハタケカラ、デテホシイナ」
「おめーの畑ばっかじゃなくてうちにも回せー」
「んだんだ、独り占めはよくねえぞ、フンバ」
「オーウ、チガウヨ? チガウチガウ。フンバ、ツギモキテクレルヨウニ、イノルダケ」
フンバと農民のやり取りがおかしくて、思わず頬が緩む。
「次に取れたら、多分ソレは国のお祭りで使うから、また食べれますよ」
案内役だった女性が私にそういった。今度その時は、藩王やみんなも一緒に食べれるといいな、と何となく、らしくないことを思ったのは秘密だ。
(5/31 癖毛爆男
最終更新:2007年06月01日 07:06