「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
「これだ、このカーブだ、これを曲がりきって、俺は伝説になる!!」
「や、やめるんだ、ちょ」
「わんわんわんわんわん!!」
大鉱山にある巨大地下坑道。I=Dと大型重機、そして、人の手によって広げ、固め、補強されたその道はトロッコの通り道である。
私こと癖毛爆男と王犬である犬兵衛、鉱山に赴任している若き剣士と案内役の鉱山の人夫。
この巨大な地下坑道に今、私から見える範囲にいるのはこの二人と一匹であり、先ほどの声も我々が発したものだ。
発端は希望山に巨大地下鉱脈が見つかったことからだ。
その瞬間、希望山は巨大なカルデラを持つ休火山であり、温泉を出すよき山であり、緑をはぐくむ父なる山であり、この国のシンボルであり。
そして、重要な資源を排出する大鉱山として、もはや何の冗談もなくこの国に必要不可欠な山となった。
元から露天掘りのほうも担当していた工夫の何割かがこちらの作業に従事するようになり、更に人員増強が図られた。
鉱山ガス、有毒物質、地盤沈下。様々な問題を最新・伝統的手法の様々なものを使い、現在では何とかこの巨大な地下坑道を基軸とした採掘が可能となっている。
それを取材しようと思ったのは、別に不思議なことでもなんでもない。
なぜなら私はジャーナル。ジャーナリストなのだから。
まず、やってきて最初に渡されたのは特殊な防護服だった。
地熱が高く、また、まだまだ工事が完成というには程遠い現在は通気性・動きやすさ・そして、全身を覆い、保護する服が必要らしい。
それを来て、何故か一緒にきていて、更に何故か用意されていた自分用の防護服を着た犬兵衛を連れて、ここに赴任したばかりだという剣士と一緒に凶の案内人を務める人夫の元に行くと。
「お、あんたが癖毛さんか。今日は俺たちのこと、しっかり取材してくれよ」
と、朗らかに笑って、肩を叩かれた。
私はそれに笑顔で答え、そして、この取材はうまくいく、と信じきっていた。
「わんわんわんわん!」
何故かその赤毛の人夫をみたとき、急に犬兵衛が吠え出したりとか。
「大丈夫、死にはしない。大丈夫、でも、帰りたい」
小声でぼそぼそ呟く剣士の言葉に耳を貸すべきだったのだと気づいたのは、彼が案内のためにこれに乗れ、と私たちにトロッコを勧め、更に乗って、彼が運転し始めてすぐのことだった。
*
横に幾つかの横道があり、そちらも恐らく鉱石などが取れるために空けられた穴なのだろう。
何故、憶測なのかというと、私たちには当然、そんなことを聞く余裕が全くなかったからだ。
薄暗い坑道の中をトロッコは恐ろしいスピードで大爆走する。
坑道という狭い空間の中なので、体感速度が半端じゃない。
びゅんびゅんと上の電球、横の坑道が後ろの方へ流れていく。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
私はといえば、もはや笑いが止まらない。何が面白いのか自分でもわからないが、とにかく笑いが止まらない。
「これだ、このカーブだ、これを曲がりきって、俺は伝説になる!!」
赤毛の人夫は目が血走った状態でトロッコを操作している。どう見ても危険人物であり、更に言えば、お前、薬やってねぇか? というほど興奮している。
「や、やめるんだ、ちょ」
ちょの後に何か中国の古代武将の名前を言いそうになってる剣士はといえば、涙目で止めようとしているが、腰が抜けたのか、トロッコの中であひる座りである。
ちなみに、彼は当然男であり、かなり筋肉質なので、不気味である。
「わんわんわんわんわん!!」
犬兵衛にいたっては、もはやずっとほえまくっている。何がいってるのかは判らないが、何を言いたいのかはわかる。何しろ、この犬兵衛が、あの犬兵衛が、粗相もせずに必死にほえてるだけなのだ!
「うぉー、見てろ、俺はここを、このカーブを必ず、制してみせるぅぅぅっ!」
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃと何ともいえない不安に鳴る音を出しながら、トロッコが傾く。
「全員、トロッコを抑えるように移動しろ!」
人夫の言葉が坑道に響くが、当然、私たちにそんな余裕はない。
トロッコは進み、傾き、そして・・・
(あ・・・死んだかな、こりゃ・・・)
気がついたときは、私たちは空を飛んでいた・・・
*
くさい・・・なんだこれは・・・硫黄や火山ガスではない・・・これは・・・
ガバ、と身体を起こすと、私の顔の横で犬兵衛がぷりぷりといつものようにかましていた。
どうやら、下半身の緩いこの王犬はこんな状況でも私に喧嘩を売っているようだ。
「ん、あぁ、おきたか?」
「・・・私たち・・・よく生きてましたよね・・・」
人夫の声と剣士の独り言が聞こえた。
「あぁ・・・何とか・・・しかしここは・・・」
「あぁ・・・ほら、見てみ」
人夫が手に持ったライトでそこら辺の壁を照らした。すると壁は全面が金属である様にキラ、と光る
「これは・・・」
「まだ、手のつけてない見つかった中では最高の採掘場さ。綺麗だろう?」
男の手で動かされるライトの光で、壁は様々な光を見せ付けてくる。
「すごい・・・」
「まぁ、やっぱりよ。俺らもここ掘れば儲かるってことは重々承知してるんだが・・・これは取っておきたいよなぁ、できれば」
「・・・・・・・ですね」
圧巻の光景である。私はその場で立ち尽くす。
足元で犬兵衛が「何か」やっていたようだが、私はそれを会えて無視した。
*
ちなみに、人夫や剣士にこの坑道に関する取材を終わった後。
「さて、それじゃ帰るか?」
人夫がとっても素敵な笑顔でトロッコを指差した瞬間。
「いやです」
「勘弁してください」
「わんわん!」
と、二人と一匹の声が綺麗に否定でかぶったことだけを記す。
(5/30 癖毛爆男
最終更新:2007年06月01日 09:26