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「こんにちは」
「今日はよろしくお願いします」

 相葉と癖毛はこの日、アイドレス工場の取材に来ていた。相葉のほうは現在癖毛に時々ついていって勉強しているようである。

「それにしても結構大きいですね」
「それに、なぜこのように工場が多いんですか?普通に作るなら一まとめのほうがよろしいかと…」

 二人の質問に案内人であるアイドレス工場の主任が答える。

「ここでは火災時の対策や必要な部品のみをすぐに輸送できるよう細分化しているんです。そのため、完成品はあの大きい工場で管理しているんだ」
「「なるほど」」

 二人して納得する。確かに港に作るとしても中には火災がおきやすい武器・ブースター製造はひとまとめにするには危険である。このようにちょっとした製造の際の注意を心がけるだけでも効率は変わってくる。

「では、早速ご案内しましょう」


 二人がまず工場に入るなり作業服が手渡される。確かにアイドレスの製造とかは国家機密もあるためと、作業時の事故防止に必要である。それ以前にここに見学者が訪れるとすれば各国の反応やシロ総裁の使いのものといった重役の人間が視察に来るくらいだろう。
二人は作業服に身を包み、一つ目の工場に入る。そこではちょうどアイドレスの骨格ともいうべきフレームが作られていた。

「それはダンボールのだ!ケントのはD-18のラインだ!」
「このアームはシリンダーに損傷があるぞ!もう一度再チェックだ!」

二人が入るなり怒号が飛び交う。フレームはアイドレスにとって重要な生命線の一つである。これに損傷があったり、違うパーツが組み込まれていると故障は不具合を起こす原因となる。それだけに常に作業機械のやかましい音に負けないよう工場の人たちは常に大声で会話している。

「ほとんどの工場がこんな感じ何ですか?」
「そうですね、このフレームライン以外では武器・ブースターを造る工場ですかね。この工場だけはいつも細心の注意を払う為、いつもこういうやり取りが行われます。誰だって事故で死ぬのは嫌ですしね」

 そう工場主任は周りのうるささに負けない声で癖毛の問いに答えた。周りを見れば組み立てられたフレームの細部をチェックしたり、書くアイドレス用パーツをクレーンで仕分けしたり休む間もない忙しさである。

 次に案内された工場ではセンサー関係の精密部品を作っていた。ここでは廊下と作業場が分厚いガラスでさえぎられている。

「ほこり対策ですか、これ?」

 相葉がちょっと弱めにガラスをノックするように叩く。

「ええ。機体に取り付ける部品が多い為中はほとんど無風です。」

 そう答えている工場主任の言葉に耳を傾けながら二人は作業風景を見る。ここでは回路のはんだ付けは機械で行われているが、最終的なチェックは人の手で行われている。特殊な顕微グラスで回路の部品に損傷がないか調べ、そして通電試験が行われる。これにより以上がなければそのまま各取り付け部分に手作業で取り付けている。

「これはなかなか根気の要る作業ですね」
「ええ。ダンボールはこの国の採掘にも使用していますから手作業でなるべく仕上げるようにしています」

 次に案内されたのはコックピット周りの部品を造る工場である。ここだけは先ほどの精密備品工場と繋がっており、コックピット周り用の精密回路が運ばれてくる。ここではわんわん帝国基準のサイズに合わせた各コックピットブロックが作られる。シートに各計器、操縦桿、各センサーとをつなぐコードがむき出しのまま組み立てられる。ここで相葉ああるものを見つけた

「あの、あれは何しているんですか?」

 相葉の指差すほうを見ると、何人かが出来上がったコックピットブロックに群がっている。

「ああ、あれは機体に取り付ける前の最終チェックですね。ここで通電試験をしながら不具合や異常がないか調べているんですよ。良かったら近くで見てみますか?」

 そう言われ、二人はコックピットブロックのテストをしているらしい場所を除いてみる。

「いけ、そこだ!」
「オイオイ、左が空いてるぞ」
「あーうるさいうるさいうるさい!…あ」
「なんだよだらしないなぁ」

 どう見ても遊んでいるようにしか見えなかった。

「これ、本当に調べているんですか?」
「ええ。まあ男なら誰だってこういうものに憧れるものですよ。だから私はあまり咎めたりしませんけどね」

 それって職場放棄か?と、二人は思ったがあえて突っ込まなかった。

「調子はどうです?」

 工場主任が問いかけるとその場にいた人たちが一斉に振り返る。

「パイロットじゃないから分からんが、アクセルがちょっと弱いな」
「あとこのモニターに時折ノイズが走るな」

 先程まで遊んでいたようにしか見えない人たちは次々に実験の結果を報告してくる。どうやら本当に不具合チェックをしていたようである。

「こんなんでいいのかな?」
「さあ…」

相葉と癖毛はこの一角だけの異常な光景になんと返していいのか分からなかった。

 次に案内された各部装甲の製造工場とブースター・武器製造工場は最初に見たフレーム工場同様、怒号が飛び交っていた。確かに装甲はパイロットの安全を守るものであると同時に機体を安定させ、各センサー系統のダメージを下げるものでもある。そしてブースターはバランス制御のものでもあり、武器は暴発が起こればそれで機体が使い物にならない可能性もあるだけにフレーム工場異常に神経が張り詰めているのが分かった。

「……」
「どうした、相葉?」

 各製造工場を見終わったあと、黙り込んでいる相葉に癖毛がたずねる。

「なんか、一気に4日分の疲れが出た感じがする…」

 どうやらこの男、あまりのぴりぴりした空気に耐えていたようで限界寸前だったらし。そのため顔色が若干悪い。

「ははは、まあ私もあの状態だけは慣れませんよ」

 けろりとして笑う工場主任を見て何か突っ込もうと思ったが、相葉はそんな気力なかった。

 最後に一番大きな工場に二人は案内された。ここでは各工場の完成品がまとまり、アイドレスとしての姿になる。まず、フレーム上部に簡易固定されたフレームが外される。まず、コックピットブロックが取り付けられ、次に各センサーを取り付ける。次に外したフレームを取り付け、完全に固定せず、簡易固定のまま動作チェックを行う。そこで問題がなければフレームは完全に固定され次のラインへ進む。そこでブースターと各部装甲が取り付けられ、全体的なバランスに異常がないかチェックされる。これで問題がなければシールが施され、保管庫に運ばれる。

「結構手間がかかってますね」

 一通り見終わったあと、相葉がそうつぶやいた。

「そうですね。この帝国の主力である以上注意を払うのは当然です。本来なら全て機械任せでわれわれがそれを管理するほうが良いでしょうが、それだと故障率が多いと藩王がおっしゃっていますから」

 なるほど、と二人は納得した。ダンボールを採掘資源地に使おうとする藩王のことである、少しでも不具合がなくなればその分パイロットや整備員の苦労は減る。それを見越した上での工場分割だったのだろう。

「今日は色々ありがとうございました」
「いえいえ。あ、でもこのことは…」
「分かってます。機密だからさすがにこれで記事書いたら追放ものですよ」

 工場主任の言葉にそう癖毛は答えた。とりあえず、今回の取材は記事になるのは当面ないが、相葉にとっていい経験だったのかもしれない。


(文:相葉 翔)

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最終更新:2007年06月01日 12:38