(投稿者:クラリス・アクナ)
■ WILD WORLD WORK:01 ■
「これが“大佐”の思惑だったか」
《よくやるよ本当に。僕達と変わらないねこれは》
黒煙を上げ、人々が生活していたと思わしき住居群が灰となる場所で満身創痍となった2体の機動兵器が今を見る。
大佐のクーデターが成功し、残った政府軍の部隊は乱れきった指揮系統をそのまま引きずって敗走を始めようとしていた。
この戦闘は二大勢力の大義名分を掲げた、いわば戦争のようなものであった。
クーデターの発生。
それなりに平和を維持してた政府に突如襲い掛かった内部の謀反。
話し合いではなく、力を持ったものだけが許される統治を行うという大佐の主張がそのままの形となって出たものがこれ。
政府軍は徹底した抗戦をしたが無駄だったらしい。
《あの“軍人崩れ”は“顧客”になりそうかい。父さん》
「金を払わない客は客ではない。間接的にも直接的にも客になることはない。」
《やることは同じなのにね》
「リリオル。これは奴にとってただの遊びでしか無い。いくら質の良い服を着ようと中身は変わらん。何より、陥落までの時間の遅さが証拠だ」
“首都”陥落に至る道程は相当険しいものであり、最初の戦闘が発生して91時間かかるという遅いものだった。
もちろん政府軍もバカではないため、大佐の拘束または殺害に費やした時間はそれ以上に上っている。
もし、大佐にそれ相応のカリスマ性があればここまで大規模な戦闘にならず決着が付いたはずだ。まだテロリストの方が上手く出来る。
《僕としてはありがたいけどね……》
「お前も私に似ているが、そこまで真似る必要はない。忘れろ」
《……そうやって母さんを見殺しに出来るのかい?》
「物事には順序があると言っている。お前はそれでミスをしたのだ。社領の自治を“前もって”認めさせるためという建前で侵攻までやっというのに激情に身を任せた行動でこうなったのだぞ」
《作戦自体は成功している》
「あぁ、効果的にな。だがこのザマだ。私が昔やったこととは状況も理由も違う」
《“妹”で我慢しろ と?》
「意味が違う! 周りを見ろ。お前のミスは見つけることができなかった事だ! この状態で屋敷まで行って帰ってこれるものか」
第9領域最大の規模を誇る都市イル・シャロムの火が勢いを増す。
所狭しと積み上げられた兵器の残骸と、もはや首都のビル群を目視することすらできない視界。暗闇に炎の光が照り返し、稀に流れ弾が飛んでくる。
搭乗している機動兵器に遠方から放たれたと思わしき銃弾が当たる。完全に失速状態だったため無傷だ。しかし、ここに長居もできないだろう。最早撤退するだけの戦闘力しか残っていない。
「私はノルンに“リリオルも死んだ”と言わなければならんのか! クラリスの時私がどれだけ」
《ごめんよ父さん。だけど“手に入れるべきものは自分で手に入れろ”と言ったのは父さんだよ》
「死まで手に入れろとは言ってないぞ! 待て!!」
機動兵器の一機がブースタを起動させて瓦礫の陰から飛び出した。動作の安定してない損傷したブースタからは黒煙が漏れていた。しかし、出力には問題がないのか軽快な動きで崩れたビルの破片を避けていく。
「待たんか!! ―――ッ!?」
父親が乗る機動兵器が息子を止めようと瓦礫から出た時強い衝撃がコクピットを揺らす。攻撃を受けたわけではないらしいが、コンソールの一部が赤に点滅している。
STAGGER
機体にエラーが発生している時に点滅するもので、一番見たくないものであった。
「スタッガー!? バランサーか……ッ」
明らかにレッグの動作がおかしく、膝が笑ったようにガクついていた。おそらく立っているのが精一杯なのだろう。エラーを修正するために機体が重心を整えようとするが立ち直らない。
その間に息子の機体が見えなくなっていた。
「リリオルッ! ラスティル座標P1-550だ、たっぷり言い訳を考えておくんだな!!」
聞こえているかどうかすら分からないが、よろける機体を立て直しつつ自分が作り上げた“お店”へ帰る事になった。
辛うじて言うことを聞いた機体が最後に見たのは、はるか遠くで起こった新しい戦闘の爆炎だった。
あれから六年。
息子リリオルは帰ってきていない。
関連項目
最終更新:2012年05月21日 17:50