「ポイントBに到着。クローザー、配置についた」
「こちらレーヨン。同じく到着」
「よろしい。そのまま待機せよ」という上官殿の言葉と共に、周辺エリアのスキャンを実行する。
現在俺と中尉は砂漠にいる。新人の補佐について初日からいきなり任務である。病院復帰から即任務とはつくづく容赦のない事である。
まぁ俺にはちょうどいいのだが。
「おい、中尉。怪我の方は大丈夫なのか?」
「心配してくれるのですね、大尉様」
「その“様”をやめろ。わざとやってるだろお前」
「当たり前じゃないですか。私が敬って差し上げているのですから、もっと喜びやがれってんですよ」
とんだ女である。なんでこいつ兵隊なんかやってんだ? と何度も繰り返しては答えの出ない議論が脳内で繰り返された。頭が痛くなりそうだ。
そんなくだらない思考をする余裕があるほど、砂漠地帯に変化は見られない。
と言うより、周辺索敵はむしろ中尉のレーヨンの方が向いている為、実の所俺にはやる事がない。俺の仕事は警戒が終わるときだけだ。
「周辺エリア、依然感なし。しかし
ノマド相手とはいえ聊か警戒しすぎな気もしますけど。連中相手に襲撃かけても実入りがないでしょう」
「どうせ牽制か釘付けにしたいだけだろう。あるいは単に上官殿が弱い者虐めをしたいだけか」
「……あの上官はどんだけ権力があるんです」
あのねちっこい眼とでっぷりとした腹の上官の顔を思い出して、げんなりしたように中尉が言う。
「委員会にコネがあるらしい以外は知らん。とりあえずお前は前見てろ」
「あぁ、あるんですね、そういうの。―――感あり。数は一……輸送ヘリですね。どこの所属でしょう」
「未確認の輸送ヘリとだけ伝えとけ。後は他の連中がやる」
「了解。レーヨンよりコマンダーへ。未確認の輸送ヘリを捕捉。3時の方向へ移動中」
「コマンダーからも確認した。こちらのヘリではない。ロングボウ、撃ち落とせ」
しばらくして、後方から轟音と共に輸送ヘリへ向けて光線のようなスナイパーキャノンの砲弾が輸送ヘリを射抜いていった。
砂漠のど真ん中に落着した輸送ヘリを捕捉しながら、周囲を見回す。
「中尉。ハイエナはいるか?」
「―――確認。12時の方向から高速でヘリに接近する機あり。高速型と推定。ノマドかどうかはわかりません」
「クローザーよりコマンダーへ。指示は?」
「何処のハイエナにせよ、わざわざヘリの積荷をくれてやる必要はない。積荷は我々で没収する、以上」
「了解。始末するぞ。さっさと帰ってクーラーの効いた部屋で酒でも飲みたい」
「同感です。アップルジュースを奢ってください。オレンジでも構いません。とびきり甘い飲み物であれば何でも」
「……余計喉が渇くぞ、それ」
中尉にそう突っ込みながら、寄ってくるハイエナの掃除を開始した。
結局、輸送ヘリはノマドとは関係ないミグラントの物で、ハイエナも周辺の輸送機を狙ったミグラントの物であった。
今回の件が上官殿の弱い物虐めであることは明白だが、一体どこから情報を仕入れてくるのか。
大尉はそんな疑問をビールと共に飲みほした。
中尉には胸やけを起こすほど砂糖をぶち込んだオレンジジュースとは名ばかりのジュースを奢ってやった。
嬉々として飲み干す様に、こっちが胸やけを起こしそうになった。
初共働の中尉に対する評価は、分析能力に関しては十分という点だ。戦闘に関してはまだはっきりとは言えない。
ACとの直接戦闘でもない限り、確実な評価はし難い。ハイエナ掃除を見る限りでは特に心配はしなくてもよさそうではあるが。
ただ一つ難があるとすれば、コックピット内でからからからからと何かを弄っている事か。
実に耳障りでたまらないので、あとで聞きに行くことにしよう。本日の報告は終わり。
最終更新:2012年07月05日 01:28